力がつくということ―カウンセリングコースで得たもの

榎本 尚子さん  精神保健福祉士 第23期生 修士(カウンセリング)

私が大学院に進学しようと考えた直接のきっかけは、趣味の釣りで一緒に船に乗り合わせた方から話を聞いたことでした。共通の知人を介して同じ船に乗り合わせたその方は、カウンセリングコースの修了生でした。
緊張しながら参加したオープンキャンパスでは、在校生や修了生の皆さんが輝いて見えました。是非この中に入りたいという思いと、自分には敷居が高いという思いが湧いたのを覚えています。ですから、合格発表で自分の受験番号を見つけたときは何かの間違いではないかと思ったものです。

なぜ大学院に進学しようと思ったか。私の場合、大きく分けて理由は2つあります。
第一は、当たり前のことですが、心理学について学びたかったからです。私の職業は精神保健福祉士なので、心理学に触れたことはあります。しかし、職業上の裏付けとなるほど体系的に学んでいるかというと、不十分と言わざるを得ない状態でした。相談援助を行う中で、福祉の知識や援助技術の他に、心理学の裏付けが欲しいと常々思っていました。
第二の理由は、論文の書き方を学びたかったからです。日々の実践の中で、考えさせられることや感じることはたくさんあります。それらのことを、ケース記録以外の形で留め、他の援助者や患者さんに生かしてもらえる形で社会に発信できたら良いなと思っていました。そのためには、論文という方法をとることが最良のように思われました。

カウンセリングコースでの2年間を振り返ると、大変なことが多かったはずなのに、楽しかったことばかりが思い出されます。
慣れない統計に四苦八苦しつつ心底嫌になる一方で、グループワークで仲間たちに癒されました。同級生には産業領域や学校領域など、普段接しない異業種の方が多く、意見を交わすことがとても刺激的でした。授業ではプレゼンテーションを行う課題が出され、他職種の方の知見に触れて視野の広がる思いがしました。周囲の能力の高さに気後れし、自分も研鑽せねばと頑張りました。グループで行った研究では、誤って分析データを消してしまい、深夜まで作業したことも今となっては大切な思い出です。修士論文提出の日には、少し異様なテンションの中で、提出し終わった人がこれから出す仲間の作業を手伝い、まるで皆でチームプレーをしているようでした。一人では乗り越えられないことでも、仲間と一緒だったからこそ乗り越えることができました。同級生は、まさに「同じ釜の飯を食った仲間」であり、カウンセリングコースで得た一番大きな財産です。

筑波大学のカウンセリングコースには素晴らしい先生方がたくさんおられます。先生方から求められる論文のレベルは高く、応えるのは本当に大変なことでした。修士論文執筆のプレッシャーに、何度となく、論文のない専門職大学院に進学すべきであったかと後悔もしました。執筆中は、生意気にも一人前の研究をしている気になっていましたが、振り返ってみると、論文を書く練習をさせていただいたのだなと思います。論文を書くという一連の作業を、丁寧に、時には厳しく教えていただけたことは本当にありがたいことでした。楽な道を選ばなかったからこそ、少しではありますが力がついたのだと思います。心理学の理論と方法を学んだことによって、これまで理解できなかった患者さんの気持ちや行動を、別の角度から捉えられるようにもなりました。

カウンセリングコースで学んだことは、今後の私の職業人生を支える基礎の一つとなるでしょう。私が援助する患者さんやご家族、他の援助職の方々に貢献できるよう、役立てていけたらと思います。