時間的にも体力的にも厳しいけれど、心癒されるサード・プレイス

三好きよみさん 人材育成 第26期生 修士(カウンセリング)

「プランド・ハプンスタンス - クランボルツ」
 今年初めに、AlphaGoが、囲碁ソフトとして史上初めて人間のプロ棋士を破るということがありました。人類が負けるのは10年先と言われていた囲碁の世界で、衝撃的な結果だったようです。それほどITの進化は目覚ましく、そして、ITの利活用は日々進んでいます。長らくIT企業にいて、様々なことをコンピュータで置き換えることで、生活が便利で豊かになっていくことに恩恵を感じながらも、これから先、人にしかできないことって何だろう、私にしかできないことって何だろう、という思いが強くなっていました。また、IT企業ではメンタルヘルスの問題も多く、休職してそのまま退職したりというのを身近でみていると、みんなが明るく楽しく仕事ができたらいいのにとも思っていました。
 そんなときに縁があって転職し、人材育成の仕事に関わるようになりました。そこで出会ったのがキャリアカウンセラーという資格です。そして、資格を取得するために学んだ心理学やキャリア形成、対人援助に関することをもっと深めたいと思っていたときに、カウンセリングコースを見つけました。5月のオープンキャンパスで受験を決めて、8月の入試、10月の合格発表までは慌ただしくも順調で、4月の入学を楽しみにしていました。

「明日死ぬつもりで生きよ、永遠に生きるつもりで学べ - ガンディ」
 ところが、その年12月の健康診断で病気がみつかり、精密検査の結果、年明けから入院し手術を受けることになってしまったのです。その後、2月から少しずつ職場に復帰し、3月にはなんとかフルタイムで出勤できるようになったという状況の中、入学式を迎えました。9to5の仕事だけでも精いっぱいな状態だったので休学も考えたのですが、とりあえず頑張ってみようと、週2日夜、土曜と通い始めました。
 体力的に辛いながらも、様々な領域の同級生との出会いや知的好奇心への充足はそれを上回り、楽しくて刺激的な日々でした。そうはいっても、やはり疲れがでたのか、5月末には21時までの授業を受けて帰宅後、突然の胃痛で動けなくなり、救急車で運ばれるということもありました。その後、11月には突然左腕が上がらなくなり、肩から腕にかけての痛みで寝返りもうてず、夜ぐっすりと眠れないということが年明けまで続きました。接骨院や整体に寄るために、遅刻して授業に出る日もありましたが、同期のみんなに助けられてなんとか頑張ることができました。
 体力的にはだいぶ回復してきた2年目、ゼミも始まりいよいよ修論にとりかかります。20人を目標にインタビュー調査を開始しました。ほとんどの方は快く時間を割いてくださり、また、「自分のキャリアを振り返ることができ、これからどうしていくか考えるきっかけとなりました」などと感謝されることもありました。どの方のお話も興味深く、インタビュー調査は楽しい時間でしたが、そのあとの文字起こしと分析は、思ったように進みませんでした。こんな状態で出来上がるのか、修論としてまとめることができるのか、闇の中の不安な気持ちでゼミを迎えます。ゼミに出ると、先生はもちろん、先輩や同期から的確なアドバイスをいただくことができ一筋の光が見えます。そして、一人で取り組むとまた暗黒の世界に入り込む、という繰り返しでした。夏が過ぎ秋が過ぎ、冬が始まる頃には、からみあっていたインタビューデータがきれいに整理されて、分析モデルが出来上がってきました。
 夏から秋にかけては、本当に苦しい時期でした。仕事もそれまでの人材育成業務に加えて、新卒採用や職務上の資格の取得があり、さらに学会発表(ProMAC2015第14回情報科学技術フォーラム日本産業組織心理学会第31回大会)と、今振り返るとよくやりきったと思います。そして、冬には、修論執筆、提出、口頭試問と休むことなく続きました。この時期、忘年会新年会をはじめとする飲み会にはほとんど欠席と、職場や友人たちにはすっかり不義理をしてしまいました。

「サード・プレイス – オルデンバーグ」
 社会学者オルデンバーグは、ファースト・プレイスをその人の自宅で生活を営む場所、セカンド・プレイスは職場、おそらくその人が最も長く時間を過ごす場所。そして、サード・プレイスはコミュニティライフのアンカーともなるべきところで、より創造的な交流が生まれる場所、と定義し、サード・プレイスが、現代社会において重要であるとしています。自宅や職場とは隔離された、心地のよい第3の居場所。カウンセリングコースは、まさしく私にとってのサード・プレイスでした。授業の情報交換や研究の悩みはもちろんのこと、仕事や家庭の愚痴をきいてもらったり、健康の相談をしたり、心癒される場所でした。
 特に2年になってからは、修士ラウンジが心身休まる場となりました。休日、データ解析室で修論に取り組みいき詰まった時、ラウンジに行くと、お茶を入れてくる仲間がいたり、仕事を終えて駆けつけ、ゼミに出るまでのほんのしばらくの間でも、ラウンジによって一息いれることで、疲れた身体を休めるとともに気持ちの切り替えができました。
 せっかく筑波に入学したのだからと、筑波本校に1泊2日で出かけて集中講義を受けたこともありました。同期がつくってくれた「旅のしおり」もあり、みんなで東京駅に集合しバスに乗って遠足気分を味わいました。広大なキャンパスは大きな木々に囲まれて空気もおいしく、学食にいったり、記念写真を撮ったり、ワイワイ楽しく過ごし、リフレッシュすることができました。戻ってからレポート課題に苦しむということもありましたが...

 最後になりましたが、カウンセリングコースの先生方には、2年間を通して、企業活動とは異なる視点での助言をいただき、理論的に検証することや先行研究を読み解く重要さを教えていただきました。なんとか修論を書き上げることができ、ようやく研究のスタート地点に立つことができました。同期をはじめとするクラスメイトからは、真摯な学びの姿勢に刺激を受けるとともに、多くの励ましをいただきました。ずっとIT業界で社会人生活を送ってきた私にとって、学校や医療といった異なる領域の方々と過ごした2年間は、視野を広げ新たな視点を与えてくれました。そして、授業はもちろん、データ解析室や修士ラウンジで過ごした時間は、一生忘れない思い出であり宝になります。皆様に心から感謝いたします。