カウンセリングコースでの2年間

山田 美紀さん  第25期生 修士(カウンセリング)

 小学校の養護教諭として毎日の執務に追われ,複数の学校の保健室経営を行い,あっという間に10年以上もの時間が経過しました。その中で,保健室や養護教諭へのニーズや役割は社会の変化に伴い,執務内容が複雑かつ多岐に渡ってきたと感じています。保健室登校や問題行動の背景にある生育歴や家庭環境を鑑みた支援を行い,他機関と連携しチームで解決を図る,いわば養護教諭は学校における教育相談のファシリテーター的役割が重要な執務の一つといっても過言ではないという状況になってきました。そのような影響もあり,相談業務やカウンセリングに少しずつ興味関心を持ち始め,日頃の執務で感じる疑問を「研究」という視点から見つめることで,保健室経営や校内の支援システムを円滑に運営できるようになるのではないかと思い,大学院受験を決断しました。

 現職の教諭にとっての大学院の学びは,専門的な研究や分析に基づいて,理論的かつ体系的にアセスメントや整理する力を培ったり,最先端の知識や考え方などを知ったりできることだと思います。しかし,それ以上に私にとって重要だったのが,「多職種との人とのつながり」でした。実際に本大学院で知り合った同期は,各方面で活躍されている方々であり,共に学べたことは何物にも代えがたい財産になりました。修士課程1年目には,各授業で自分のフィールドから組織心理や学校心理などを考え,みんなの前で発表する機会が多くありました。そのたびに,自分の見識の狭さを痛感するとともに,大学院に来てこのような講義を受けることができる喜びを感じていました。レポート作成は大変なこともありましたが,学べる楽しさ,喜びがその何倍も上回っていました。

 さらに,修士論文を作成する過程での学びこそ,大きな財産になりました。全く何もわからない心理学の研究を始めた私にとって,研究テーマの絞り込み方,先行研究などの文献検索,どの尺度を使用し何を調べるのか,得られた結果をどのように考察するのか,構想発表会や口述試験におけるパワーポイント資料作成やプレゼンテーション方法・・・1つ1つの経験が,日常にある疑問や課題を研究として捉えなおす学びへとつながりました。特に,量的研究をすすめるうえで不可欠な理論や分析の方法については,修士課程1年目のABモジュールからおおよそ1年間をかけてじっくりと学べるシステムが構築されています。また,年3回ある構想発表会でも,「この研究のオリジナリティは何か」「得られた知見が次にどのように還元できるのか」という視点で,先生方から優しくも厳しいご指導をいただけたことも,自分の研究をすすめていくうえで大変有効でした。

 ゼミにおいても,仲間同士の活発な意見交換があったり,先輩方のアドバイスもいただけたりして,研究をバックアップする体制があるのが魅力的でした。ただ,自分が思い描く研究のストーリーラインが思い浮かばないこともたびたびあり,このままで本当に修士論文が書けるだろうかと何度思ったか知れません。そのたびに指導教員から,「研究は本当に山あり谷あり。のぼりきったら大きな達成感がありますから,頑張りましょう」と励ましていただきました。しかしこの当時の私は,やっと一つの山を登ったら次はもっと大きな山が出てくる,やってもやっても先が見えないというのが正直なところでした。なんでこんなに必死で修論書いているんだろう・・・と思わず手が止まってしまうこともありました。

 『社会人になって修士論文を書く』ということは,自分自身の覚悟を見つめることでもありました。朝早く仕事に行き夜遅くまで修士論文を書く・・・自分が想像していた以上の体力と精神力が必要でした。特に,修士課程2年目になってからは,修士論文のことを考えない日はありませんでした。自分ではまだまだ大丈夫と思っていた11月初旬,原因不明の湿疹が全身に出ました。体は悲鳴をあげていたのです。担当医からも休養するように告げられましたが,どうしても自分が心から納得する論文が書きたくて,ラストスパートを迎える12月からは睡眠時間2~3時間の日々をすごしました。何があっても,自分が納得する論文を書くんだという思いが私の原動力でした。今になって振り返ると,われながらよくやったと,あのパワーはどこから出てきたんだろうと思います。

 その原動力を支えたのが同期の存在でした。データ解析室で互いのデータを見あったり,解析の方法について教えあったり,または意見を言いあったり,無言でただパソコン入力の音だけがする空間があったり,その一つ一つが頑張らなくてはと自分を鼓舞する瞬間でした。同期の研究に対する真摯な姿勢と熱意に刺激され取り組むことが出来たからこそ,最後までモチベーションを保って研究に打ち込むことができたのだと思います。

 また,この土台を支えているのが,周囲の理解です。特に職場や同僚の多大な協力を得なければ,修士論文を書き上げることはできませんでした。その,ほんの少しの恩返しが,目の前で向き合う子どもたちに還元することだと思い,筑波大学大学院で勉強してよかったと感じられる仕事をしていくことだと思っています。

 ここで得られた学びは,現在,日常の執務にある課題や疑問を,他者の立場に立って考えてみるとき,そして自分の実践を評価し次の実践につなげていくPDCAサイクルの意識づけをするときに役立っています。
 恵まれた環境で学ぶことができ,筑波大学大学院で充実した2年間を過ごすことができました。
 ご指導いただいた先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。
 皆様に心から感謝いたします。