終わりなき旅

田伏みどりさん 第28期生 修士(カウンセリング)

混迷の中から

日々、ただただ突っ走っている。仕事、生活、あるいは個人の活動の中でふと疑問に思うことをやり過ごし、高速道路で一瞬見て忘れてしまう建物のように、抱いた疑問はいつの間にか当たり前のこととして消化され、モヤモヤとしたやるせなさだけが残る ―― 今思うと入学前の私はそんな毎日を送っていたような気がします。胸に抱え込んだ迷いがプラスの力に変わるように、働く人のwell-beingを向上させる研究をしたいと思ってはいたものの、いつか時が来たら・・・と先送り。ところが、説明会での先生のお言葉が私を動かしました。「受けなければ受かりません。私は二度目で入りました。」カウンセリングコースにはそんな自己開示をしてくださる先生がいらっしゃるのです。

点と点が線でつながる

職場での個人の気づき、疑問は実は誰しもが思っていることかもしれません。清少納言だったらそこはウィットを利かせてさらっと書き上げてしまうのでしょうが、権限のない社員が何の実証もなく言ってみたところで、何も起こりません。私が書き上げた論文だって何の影響力もないでしょう。それでも、もしかしたら誰かが私の拙い論文を見てくださり、少しでもお役に立てるかもしれない。そう思ったら、カウンセリングコースに入学できたことはとても大切なカードをもらったような気がして、俄然やる気が湧いてきました。ところが、研究は壁にぶち当たってばかりです。現場で起こっていることを正しく把握できているのか、関連する先行文献は全て検索出来ているのか、オリジナリティはどこにあるのか、サンプルは取れるのか・・・途方に暮れ、何度もくじけそうになりました。ここで生きてくるのが一つ一つの授業で得た知見や先生の経験談です。各分野の知見をつなぎ合わせることでストーリーラインが浮かび上がり、先生方のご経験談がヒントとなって活路が見出せたことが何度もありました。点と点が線でつながった瞬間です。「あなたたちは論文を書けるはずです。そうでなければ、私たちの目が曇っていたことになります。」厳しくも温かいお言葉で励ましてくださる先生がいらっしゃいます。

研究の成果物は・・・

私の研究テーマは、長年外資系企業に勤務し、異文化の難しさと面白さを経験してきた自身のバックグラウンドによるものであり、同時にこれから広い世界へ出ていく息子のためにという、個人的ですが、強い動機から始まったものでした。調査では、海外で働いている方々、国内グローバル企業で働く方々、在留邦人をサポートする団体、異文化適応能力を研究する海外の先生方との交流があり、地理的にも文化的にも世界が一気に広がりました。とりわけ海外で働いている方々からは高い関心と応援、そして時には率直なご意見を頂戴し、異文化環境下で働くことの厳しさや文化差だけでは片づけられない状況があることも知りました。メールのやり取りは深夜、未明まで続きましたが(もっとも時差がありますので)、とても有意義で楽しい時間でした。研究の山場でしたが、力を貸してくださる先輩、苦労を分かち合う同輩、応援してくださる後輩に支えられました。ご協力者のご恩に報いるためにもまだ頑張らなくては・・・。カウンセリングコースは終わりなき旅の入口でした。「研究の成果物は皆の為にならなければもったいない!」そう言って発破をかけてくださる先生がいらっしゃいます。