サービス・ラーニングとは

HOMEサービス・ラーニングの定義・歴史・役割

「サービス・ラーニング」という言葉を初めて聞く人も多いでしょう。本ページでは,そのような方々に,サービス・ラーニングとは何かを説明したいと思います。具体的には,「サービス・ラーニングの定義」「サービス・ラーニングの歴史」「大学教育におけるサービス・ラーニングの役割」の三つを説明します。このような考え方を日本の大学教育に導入し,日本型サービス・ラーニングを確立することが,われわれのねらいでもあります。

1.サービス・ラーニングの定義

サービス・ラーニングは,教室で学ばれた学問的な知識・技能を,地域社会の諸課題を解決するために組織された社会的活動に生かすことを通して,市民的責任や社会的役割を感じ取ってもらうことを目的とした教育方法,と定義されます。具体的な事例としては,教室でコンピュータ科学の知識・技能を身に付けた高校生・大学生が,小学生や高齢者にコンピュータの使い方を教えるという社会的活動を通して,地域社会で自分にできることを学び,市民としての責任を感じていく,といった教育実践を挙げることができます。

われわれの社会には解決困難な多くの課題が存在します。例えば,駅前の放置自転車や河川の汚染といった環境問題,一人暮らしの高齢者や子育ての悩みを抱える母親に関する福祉・教育問題,そして,都市中心部の商店街の再建などの町づくりに関する問題など,早急な解決が望まれる課題が,地域社会には必ず一つや二つはあるはずです。そのような課題にはすでに行政や市民団体から様々なアプローチが試みられていますが,その活動過程に若者が関与していくことはとても大切なことです。もちろん,若者自らが地域住民の協力を得ながら,課題解決のプロジェクトを計画し,実行していくことも可能でしょう。いずれにせよ,大切にされるべきは,教室で学んだ学問的な知識・技能を社会的活動の中で最大限に生かすこと,活動現場へ足を運ぶことを一度きりで終わりにせず何度も繰り返すこと,活動の中で見たこと・聞いたこと・感じたことをしっかりと振り返ることなどです。サービス・ラーニングは,そのような学習活動を組織する際のヒントを数多く提供してくれます。

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2.サービス・ラーニングの歴史

「サービス・ラーニング」という言葉がアメリカで初めて用いられたのは,1967年だと言われています。もちろん,それ以前から,アメリカでは若者が地域社会・国際社会で社会的活動を展開し,そうすることで自らの社会的役割を自覚するに至るという考え方が一般市民の間に好意的に受け入れられてきました。それは,参加民主主義の伝統を有するアメリカならではの教育観とも言えます。

サービス・ラーニングが今日のようにアメリカ各地で実践されるようになるのは,1990年に「国家及びコミュニティ・サービス法(National and Community Service Act)」が制定されてからです。この法律の制定以後,連邦政府は直ちに「国家及びコミュニティ・サービスのための協会(Corporation for National and Community Service)」を組織しますが,この協会がサービス・ラーニングを全米規模で展開させる原動力としての機能を果たすことになります。

今日アメリカでは様々な形でサービス・ラーニングが実践されています。大学教育関係者もこのような動きには敏感に反応し,例えば,1994年にはサービス・ラーニングを専門的に取り扱った雑誌“Michigan Journal of Community Service Learning”が刊行され,さらには,“Campus Compact”というサービス・ラーニングに関する大規模な大学連合体が組織されました。後者のCampus Compactに関与する大学は,今では1,100を超えると言われています。

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3.大学教育におけるサービス・ラーニングの役割

アメリカでサービス・ラーニングに関心を寄せている大学教員は常に大学教育の役割は何かを意識しながら,自らの研究・実践を進めています。

まず,大学教育にサービス・ラーニングを導入することで,学生に対する教育を充実させることができます。専門教育を通して獲得された専門的な知識・技能は,社会的活動の中で実際に活用されることで,現実社会で実際に活用できる知識・技能へと変化を遂げます。また,社会的活動を通して,学生は将来の職業について考える機会を与えられるでしょう。そして,何よりも,学生は社会的活動を通して自らの社会的役割を意識するようになり,結果的として,市民として必要な資質・能力を高めることができます。

また,サービス・ラーニングの導入は,大学教育におけるパートナーシップのあり方を考えるのに格好の素材を提供してくれます。パートナーシップは,例えば,教員と学生,教員と教員,大学と地域社会,大学と大学などの間に築かれます。従来の大学教育には人や組織の間に様々な壁が存在し,それが結果的に大学教育の機能を弱体化させる原因となってきました。サービス・ラーニングはこの壁を取り除き,大学教育の隅々にまでネットワークを張り巡らせることで,大学教育の本来の機能を取り戻す道具としてその役割が大いに期待されています。

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