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聴覚障害


もくじ

T. 聴覚障害とは
U. 先生方・周囲の方へのお願い
V. 聴覚障害教育・研究支援室について
W. 学習支援活動
X. 学生の声

 
T. 聴覚障害とは
 聴覚障害とは、聴覚機構の障害のために聞こえの機能が低下している状況で、伝音性のものと感音性のものの2つのタイプに分けることができます。聴覚障害の程度は聞き取れる音の大きさの程度であらわされることが多くなっていますが、外見からは障害の有無や障害の程度が判別できないため、周りの人々の理解を得にくく、二次的な障害がおこりやすいなどの特徴があります。
 聴力のレベルもさまざまで、1万人に1〜2人がまったく聞こえない人であり、千人に1〜2人が会話が聞き取れない、百人に1〜2人が会話を聞き間違えるレベルであるといわれています。

<参考文献>
●『理解と支援の障害児教育』中村満紀男・前川久男・四日市章(編著) 2003,コレール社.
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U. 先生方・周囲の方へのお願い
 聴覚障害学生と話すときは、顔が見える位置で、ゆっくりと、はっきり、話すようにしてください。また、通訳者がついている場合は、なるべく指示語を使わない、複数の人が同時にしゃべらないなどに注意すると、通訳がしやすくなります。本人にどのような配慮が必要か尋ねることも大切です。
 聴覚障害学生が受講する授業を担当している先生方への、支援依頼パンフレット(作成中) が用意されていますので、ご覧ください。
<参考>
「障害のある方への接遇マニュアル」東京都心身障害者福祉センター
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/tosho/tosho/
sm_hyosi/sm_mokuji/sm_2/index.html
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V. 聴覚障害教育・研究支援室について
 聴覚障害学生の情報支援に関する作業を行うための部屋です。平成15年度より設置されました。講義の情報支援に必要なパソコンや文具、通訳者養成のための機材の保管や、話し合いの場として使用しています。この部屋が設置されたことにより、障害のある学生や支援学生が集まる場ができ、交流が深まりました。お互いの意見や悩みを話せるようになった、など学生にとってなくてはならない場所となっています。
 なお、室内にいる聴覚障害学生にはノックの音が聞こえないことがあります。そのような場合は、ドアに備え付けてあるボタンを押してください。
学生同士の交流
聴覚障害学生・支援学生の交流。
写真:ホワイトボード
支援室のホワイトボード。連絡事項や伝言を書き込みます。
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W. 学習支援活動
@ はじめに
 聴覚障害学生にとって、音声によって伝えられる内容を聞くことは困難です。1対1のコミュニケーションでは、ある程度唇の動きを読むことで内容が理解できても、大学での講義や式典などで長時間に及ぶ場合、内容の理解はほとんど不可能です。

    聴覚障害学生への支援 → 情報保障(通訳)
    本人が本当の意味で講義や式典に「参加」するための情報保障

   そこで、講義や式典の内容だけでなく、チャイムの音や大きな騒音、周りの会話など、その場の音を目に見える文字に変換し、聴覚障害学生に伝えます。みんなと同じ気持ちでその場に参加することを保障することが、聴覚障害学生に対する情報保障です。このうち特に、講義における情報保障のことを、講義保障といいます。
 現在筑波大学では、式典などの大学行事の際に、学生の支援者によるPC要約筆記を大学の責任で実施しています。
 また日常的な講義については、学生(ピア・チューター)が情報支援を行っています。情報支援活動を行うために必要なスケジュール調整は、聴覚障害学生支援チームのコーディネーターを務める学生スタッフが行っています。

A組織図
組織図

B聴覚障害学生支援チーム
 このチームは、筑波大学障害学生支援室の下で活動している公的な支援団体です。主な活動として、聴覚障害学生が受講する講義に通訳者を派遣し、通訳活動を行っています。また、通訳者は筑波大学の学生なので、通訳者の募集・養成も重要な仕事です。その他、ビデオに字幕をつける「文字起こし」など、さまざまな支援を行っています。

<運営>
学生主体
  • 聴覚障害学生:25名(学群18名、大学院7名)
  • ピア・チューター(通訳者): 学生約110名(2010年度9月現在)
<運営委員会>
  • リーダー
  • 通常コーディネーター:通訳者の派遣
  • 集中コーディネーター:通訳者の派遣
  • 養成部:通訳者(ノートテイク・パソコン要約筆記・手話通訳)の養成講座補助
  • 企画部:勉強会(初心者対象・経験者対象)・懇親会の企画
  • 物品メンテナンス部:物品の申請・PCのメンテナンス
C情報支援の種類
<概要>
 筑波大学では現在、ノートテイク、パソコン要約筆記、手話通訳による情報支援を行っています。聴覚障害学生のニーズや講義の形式に合わせて通訳方法を柔軟に対応しています。また、本学では、学生が自分の授業の空き時間などを利用して通訳を担当しています。原則として2名で通訳を行うようにコーディネーターがシフトを組みますが、現在通訳者の数が足りていないため、場合によっては1名で通訳を行うこともあります。その場合、要約をして通訳を行います。しかし、実際に話される内容に対して、筆記できる文字量は約5分の1、パソコン入力できる文字量は約3分の1です。こうした制限の中で可能な限り情報を保障した通訳を行うには、正確に聞く→話の内容を理解する→要点(言いたいこと)をつかむ→簡潔に文章化する→読みやすく表し、伝える、というプロセスが必要となります。通訳者は、発言者の言葉はもちろん、その場にある聴覚的情報を全て通訳する役目を持っています。例えば、話し手の余談・冗談、通訳者に話しかけられた内容、大きな騒音や周りの会話なども通訳します。

<ノートテイク>
 ノートテイクとは、話し言葉を手書きで文字にする支援方法です。「要約筆記通訳」と呼ばれることもあります。数式を多く扱う理系など、パソコンや手話通訳では対応が難しい講義に用いられます。日本語が書ければ、養成講座を受けてすぐに誰でも通訳に入れます。メインの通訳者は、今何が話されているか、話の内容を話し言葉のまま書き表します。サブの通訳者は、講義の記録などを書き留める要約をしたり、テキストや資料を指し示したりします。通訳を行う位置は、話し手やスライド、ビデオなどと通訳が同時に視野に入るような場所を選びます。

<パソコン要約筆記>
 話しことばをパソコンに入力し、画面やスクリーンに表示する支援方法です。話し言葉の30〜70%の情報を伝達することが出来ます。また、熟練した入力者が連携入力を行った場合、約80%の情報を伝達することが出来ます。文字の色・大きさなどは、聴覚障害学生にとって見やすい表示を選択しています。式典などの行事では、複数の聴覚障害学生に文字情報を伝えるために、パソコンで入力した文字をスクリーンに表示して通訳を行うこともあります。また、式典や行事の挨拶は、あらかじめ原稿を入手し、入力しておくことで、ほぼ100%に近い通訳を行うことが可能です。

<手話通訳>
 手話通訳とは、音声による話しことばを手話に変換して聴覚障害学生に通訳すること(聞き取り通訳)、手話を音声に変換して聴こえる人に通訳すること(読みとり通訳)の2つを含みます。大学での情報支援においては、講義で話される内容を手話に変換して聴覚障害学生に伝える「聞き取り通訳」が中心になっています。通訳者の技術や通訳環境によっても異なりますが、80〜95%の情報を伝えることが出来ます。通訳を行う位置は、話し手と手話通訳が同時に視野に入り、かつ通訳者にとって声の聞こえやすい場所を選びます。 現在、筑波大学では手話通訳者が少数であるため、通訳も1名で行うことが多いのが現状です。
手話通訳
聴覚障害学生(左)が、手話通訳(中央)でみんなの発言を理解しながらゼミに参加しています。

<参考文献>
●『聴覚障害学生サポートガイドブック ともに学ぶための講義保障支援の進め方』
監修:斎藤佐和著者:白澤麻弓、徳田克己2002年、日本医療企画
●『「聴覚障害学生をサポートする大学ノートテイク入門』
著者:吉川あゆみ、太田晴康、広田典子、白澤麻弓2001年、人間社

D入学から講義を受けるまでのサポート
<入学前>
 聴覚障害学生・保護者・担任・学類事務・障害学生支援室員・支援チームなどによる打ち合わせを行います。大学に入って初めて情報支援に触れる学生も多いため、支援チーム(聴覚障害学生・支援学生)からの助言、サポートがあります。

<入学式・入学オリエンテーション>
 入学式では、支援チームによるパソコン要約筆記が行われます。また、聴覚障害学生の希望によって、入学オリエンテーションへ通訳者を派遣することができます。

<教員との相談(授業開始前)>
●障害学生支援室から文書を出す
  • 学類長を通して、学類会議で各教員へ。
  • 教員向けの支援依頼パンフレットを配布(作成中)。
●聴覚障害学生本人が、教員のもとへ連絡
  • 通訳者をつけていることを伝える。
  • 個人的な相談(FMマイク使用のお願い、前の席に座らせてください等)を行う。

<授業後、問題解決への一歩>
●障害学生支援懇談会(全障害合同)
  • 障害学生が在籍する教育組織の教員が集まり、障害学生・支援学生・教員との意見交流を行う。
●学期ごとの反省(支援チーム内)
  • 通訳者、聴覚障害学生それぞれから反省を集計し、配布する。
  • 活動中に困った点や、一人ひとりの解決策などを共有する機会とする。

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X. 学生の声
   「一年間情報保障を受けてきて」
               (社会・国際学群社会学類2年 R.M.)
 私は聴覚障害を有しており、情報保障なしに講義の内容を理解することは困難な状況にあります。しかし、音声情報を何らかの方法で文字・手話に可視化してくださる通訳者の方々のおかげで私は豊かな情報、それは必ずしも難しい話ばかりでなくちょっとした世間話、ジョーク、豆知識などの情報も文字通り「見る」ことができます。そうした情報をもとに「面白い!」「つまらない」などといった様々な講義に関する感想も抱くことができます。
 このように情報保障を通し講義に「参加」することの楽しさを最近改めて実感しているところです。また、学類を異にする多くの通訳者の方々との講義前後にかわす談笑は大学生活の中でも楽しいひとときとなっています。支援チームは、より充実した情報保障を求めて通訳者とともに私たち聴覚障害学生も協力し合うことでお互いに成長していくことのできる場だと思っています。
 これからもお互いに刺激を受けあってお互いを高めていきつつ、感謝の気持ちを忘れずに支援チームに何らかの形で還元できたら、と感じています。

   「支援体験談」
               (情報学群知識情報・図書館学類1年 K.S.)
 私は左耳30db、右耳50dbの難聴です。小中高ずっと健常者が通う普通学校に通ってきました。
 私は初め、講義に通訳をつける気はありませんでした。今まで通訳のない授業を受けてきて、聞き逃したときは周りの友人に尋ねてカバーしてきたし、これからも通訳がなくても大丈夫だろうと思っていました。
 しかし大学の講義は今までと違いました。教科書ではなく資料中心であったり、講義する場所が広かったり、席が決まっていなかったり、友人が必ずいるわけではなかったり・・・。なにか配慮がないと講義についていけないことが分かりました。
 私は今PC通訳をつけて講義に臨んでいます。PC通訳の情報量は60%くらいだと言われていますが、チャイムの音や先生の呟いた声、また早口の先生の言った内容の要点を視覚化してくれるので大変助かっています。
 これからもこのような支援を受けて、講義に参加していきたいと思っています。

   「人の温かさ」
               (人間学群障害科学類3年 Y.M.)
 私は幼稚園の年長の夏に病気が原因で難聴となって以来、高校まで地元の普通校に通ってきました。周りの友人達や家族、先生方は、私が重要な話の内容が分かっていないようであれば言い直したり、筆談や空書をしたりして教えてくれ、また始めからノートをとったり板書したりしながら話してくれました。今思えば、当時の私はかなり受動的な人間だったと思います。
 授業中や普段の日常の中で、突然周りの皆が笑ったり悲しんだりしていても、周囲に合わせて言動を変え同化して過ごす毎日で、それが自分にとって当たり前で、皆もまた同じなのだと信じていました。自分だけが知らない楽しい話などを通して、他の皆が感情を共有し合っていることなど知る由も無かったのです。
 そのような自分に対して疑問が募った結果、障害科学の最先端であり、障害学生支援が盛んである筑波大学を見つけ入学しました。高校までのように教科書や参考書も無く、板書や資料配布が無い、つまり自学自習が厳しい状況で授業を受けるには、先生の口元を見つめ唇の動きを読み取る方法をもってしても、1時限75分の授業の間集中することが難しくなります。そこで聴覚障害学生支援として、ピア・チューターの学生による情報支援(通訳)を受けることになりました。
 大学説明会の際に初めて通訳を受けた時の衝撃は今でも鮮烈に覚えています。先生の話が始まると同時に両脇に座っている先輩学生のピア・チューターの方々が、目にも止まらぬ速さでパソコンを打ち、音声情報をほぼリアルタイムに文字の形に変えてゆく技術に驚いたのは勿論、同じ教室にいる他の人々と、同じ話の内容を吸収できていることにひどく感激し、ピア・チューターの方々に対して感謝の気持ちで胸が押し潰れそうでした。この感激や感謝の気持ちは、大学3年になった今でも変わらず私の中に生きています。
 聴覚障害学生支援の活動は、先生方からの助言をいただきながら学生が主体となって運営しています。私も2年前から、ピア・チューターの養成のための活動に携わっています。この広い筑波大学の中から情報保障に興味を持ち集う多くの学生と、最も初めに関わらせていただけるこの活動は、幸せと責任感とを持ち併せるやり甲斐のある活動です。頼もしいピア・チューターの方々は、良き先輩方であり、良き友人達であり、良き後輩達です。
 大学に入りこれらの情報保障による支援を受けるようになってから、日常での周囲の人々との関わり方が高校までのそれと大きく変わりました。話の内容が曖昧になることを良しとせず、周囲に話の内容を尋ね動くようになりました。また、サークルをはじめとした人間関係の中で、大切な仲間達と話を通して感情を共有できないことを初めて悲しいと思えるようになりました。その悔しさの分だけ、喜怒哀楽を分かち合えた時の嬉しさはこの上なくたまらないです。授業での情報保障だけでなく、人の温かさを改めて知り、聴こうとする姿勢を学んだ支援活動に、ピア・チューターの方々と共に今後も積極的に携わってゆきたいです。


 


 



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