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ごあいさつ

筑波大学特別支援教育研究センター長 岡 典子



 

 本年4月より、特別支援教育研究センター長を務めさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 今年度からいよいよ第3期中期目標・中期計画の期間が始まり、大学でも附属学校でも、これまで以上の成果が明確に求められる時期に突入しました。とくに、研究センターとして位置づけられている本センターには、従来以上に学際的で横断的な研究の推進が求められています。また各附属学校に対しても、全国の大学・附属学校とのコンソーシアムの構築や、グローバルな素養を育てるカリキュラムの開発・提案、「筑波型インクルーシブ教育システムを目指したプログラム」の開発など、よりダイナミックな実践と研究の成果が期待されています。こうした成果を出していくためには、本センターと附属学校はもちろんのこと、障害科学域をはじめとする大学・人間系の先生方や学内外の組織等、より多くの方との協力関係が欠かせません。厳しい時代を乗り切り、日本の特別支援教育の到達点を世界に発信し、さらに次代の日本へと引き継いでいくためにも、どうか今まで以上のご協力を賜りますようお願いいたします。
 さて、すでにご承知のように、日本では今、インクルーシブ教育システムの構築に向けてさまざまな取り組みが行われている最中です。本学が第3期の中期計画に掲げている前述の「筑波型インクルーシブ教育システムを目指したプログラム」開発もまさに、本学と附属学校の協働による日本のインクルーシブ教育システムの先導的モデルであり、日本のインクルーシブ教育システムを牽引していく手段として期待されています。けれども、そもそも障害のある子どもと障害のない子どもがともに学ぶというインクルーシブ教育の思想自体は、いつごろ生まれたものなのでしょうか?
 ヘレン・ケラーの師サリバンが学んだ学校としても知られるアメリカのパーキンス盲学校で初代校長を務めたS.G.ハウは、今から160年以上前、すでに、視覚障害のある子どもにとって最善の教育は、障害のない子どもとともに学ぶことだと考えていました。彼の先見性は、単に、「一緒に学ぶ」ことだけを重視したのではなく、障害に即した専門性を担保しつつ共に学ぶ方法論を構想していたことや、障害のある子どもと障害のない子どもが一緒に学ぶことの最大の意義を、社会の変革に見出していた点にあります。これらはいずれも、現代のインクルーシブ教育にもそのままあてはまる考え方です。
 「古きを温めて新しきを知る」とは孔子の言葉ですが、特別支援教育の分野で私たちの先達が残してくれた思想や方法論には、じつは私たちがイメージしている以上に先進的で、決して「古く」などなっていないものがたくさんあります。時に、こうした歴史上の大先輩たちにも「助言」を求めつつ、やがて次の世代を担う人々から、私たち自身もまた「豊かな歴史」として評価してもらえるよう、日本の、そして世界の特別支援教育を育てていくことが、今を生きる私たちに課せられた役割といえるでしょう。