藤生英行 カウンセリング心理学 ふじ う ひで ゆき 12 つくばの心理学 2023 研究アラカルト <問題行動の分類> アメリカの児童精神科医Achenbach(1982)は、従来の問題行動(精神疾患を含む)は、内在化(internalizing)問題行動と外在化(externalizing)問題行動とに分類可能だと提起しています。 内在化問題行動は、恐怖、身体的な訴え、不安、社会的引きこもりなど自己の内部に問題を含むものです。それに対して、外在化問題行動は、非応諾性、攻撃、非行、かんしゃく、多動性などであり、環境との葛藤を含むものです。 この研究では、内在化問題行動を「うつ」に限定し、外在化問題行動を「行為障害スペクトラム」に限定して検討していきます。 <予防科学(prevention science)の考え方> さて、このような問題行動への対応は、問題行動が表面化し深刻化して初めて、その問題行動を軽減させ消去させるような介入が試みられることが一般的でした。現在では、問題行動が生じる前にさまざまな理論的見地から予防的な介入を行うこと、つまり予防的介入が試みられてきています。 <リスク要因と保護要因> 1991年には米国精神健康研究センター(NIMH)が後援した米国予防委員会で『予防科学』という用語が造語されました。それは、「機能不全と健康のための潜在的な兆候‐リスク要因(risk factor)と保護要因(protective factor)と呼ばれる‐に関する体系的な研究に主に焦点を当てたものであり、つまり、人間の機能不全に影響するプロセスを阻止し、リスク要因を中和し、保護要因を強化するもの」というものです(Coie et al., 1993, Coie et al., 2000)。 ここでリスク要因とは、その問題行動(精神疾患を含む)の発症、重症度、期間の可能性を増大させる個人、社会、身体的要因を指し、保護要因とは障害の悪化を緩衝し、障害への抵抗を促す個人、社会、身体的要因を指します。 <外在化問題行動への予防科学の展開> 予防科学に関する知見は、ここ20年で大幅に集積されてきています。例えば、外在内在化・外在化問題行動の保護要因を明らかにする
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