つくばの心理学2023
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はま ぐち よし かず 内的特性から見た青年期の攻撃性 -キレとイジメとジコチューのワルツ- 濱口佳和 児童臨床心理学・発達心理学 14 つくばの心理学 2023 研究アラカルト 少年犯罪の統計を見れば、日本の現代の青年達は50年前に比べればずいぶんおとなしくなりました。しかし今なお、親などの近親者に対する凄惨な殺人事件や陰惨ないじめなど、攻撃性に由来する青少年の様々な事件が絶えません。中には、一見人を傷つけることなどしそうにない青年も散見されます。攻撃行動を行う青年の内面に何があるのか?筆者は「内面的特性」の観点から青年の攻撃性を捉える新しい研究を行ってきました。 攻撃行動の分類 故意に人を傷つける行動は攻撃行動(aggression)と呼ばれます。攻撃行動はこれまで、生じるメカニズムやその行動の働きの観点から、大きく能動的攻撃(proactive aggression)と反応的攻撃(reactive aggression)とに分類されてきました。能動的攻撃は道具的攻撃(instrumental aggression)とも呼ばれ、人を傷つけること以外の目標を果たすために、手段として攻撃行動を用いるもので、怒りの喚起・表出を伴わない攻撃行動です。これには、攻撃的な手段で人を支配し、コントロールすることを目指す人志向的能動的攻撃と、攻撃的な手段で金品、特権、地位などの獲得を目指す物志向的能動的攻撃の2種類があります。これに対して反応的攻撃は敵意的攻撃(hostile aggression)とも呼ばれるもので、欲求阻止や知覚された脅威などの先行嫌悪事象によって引き起こされます。この攻撃行動は、自己を守ることや、嫌悪刺激に危害を加えること自体を目標として行われるもので、ふつう怒りの喚起・表出を伴います。能動的攻撃や反応的攻撃の分類は、生じるメカニズムや行動の働きからのもので、具体的には身体的攻撃(叩く・蹴るなどの身体的暴力)、言語的攻撃(言葉で人を侮辱するなどして傷つける)、関係性攻撃(仲間関係からの排除、対人関係の操作、良くない評判を流布させるなど)などの形をとって現れます。 能動的攻撃性と反応的攻撃性 子どもと違って青年や大人の場合、暴力

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