つくばの心理学2023
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慶野遥香 臨床心理学 けい の はる か 26 つくばの心理学 2023 研究アラカルト 挙げるのをやめた人もいるかもしれません。 私たちの頭は、普段からものすごくたくさんのことを考えています。常に目や耳に入ってくる情報から自分に必要なものを素早く選別し、目的に沿った行動を取るよう指令を出し、そのプロセスや結果を過去の経験や他の人とも比較しながら評価し、次の機会に備えています(これをACTでは“マインド”と呼びます)。勉強のような積極的に頭を使う活動だけでなく、「朝起きてから家を出るまでにどんな順で行動するか」や、「教室に入ったら仲のいい友達がちょっと苦手な子と話しているけど、声をかけるかどうか」など、あらゆる場面で、特に意識しなくても、マインドは様々なことを判断し、私たちに指令を出してきます。 マインドからの指令は、私たちがスムーズに生活を送る上でとても役に立っています。一方で、その指令が自分の考えや気持ち、希望、価値といったことに向かうと、時に自己否定や回避的な考え、「失敗したくない」「傷つきたくない」という恐れが湧いてきて、強いストレスを感じたり、望む行 人生のコンパスの方向 突然ですが、あなたが人生において大切にしたい“価値”って何ですか?「目標に向けて努力し、成長する」「大切な人と信頼し合える関係を築く」「ワクワクするような新しい経験をする」「人の役に立つ」など、自分の中で大事だと思う“価値”に沿って行動しているとき、私たちは充実して生き生きした感じを持つことができます。 これは、心理療法の中の“ACT:アクセプタンス&コミットメントセラピー”という手法において重要な概念の一つです。ACTでは、自分に起こるさまざまな思考や感情を受け入れながら(アクセプタンス)、大切にしたい価値に沿った行動を取り続ける(コミットメント)ことを目指します。そのために必要とされる“心理的柔軟性”を、さまざまな方法や考え方で高めようとします。 先ほど価値について尋ねたとき、もしかしたら、何か思いつきかけたことがあったけれど、咄嗟に「いや、自分は普段それに見合ったことをしてないしな…」「こんなこと人に言ったら引かれそう」なんて考えて、

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