つくばの心理学2023
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一方で、ボディイメージのポジティブな側面というのは、近年までほとんど焦点があてられてきませんでした。 ネガティブとポジティブというと、一般的には対概念だと考えられているので、ネガティブが低ければポジティブが高くなるんじゃないの?と思われるかもしれませんが、近年のボディイメージ研究で、そうではないことがわかってきました。 たとえば、ネガティブボディイメージは低いから、自分の身体に対する不満は特にないけれど、そもそも自分の身体に関心がないから、ポジティブボディイメージも低いという人もいるでしょう。そういう人は、自分の身体に関心がないから、身体を大切にする行動(健康的な食事、適度な運動、十分な睡眠など)をとらず、毎日カップラーメンばかり食べて、時にはストレス発散のために暴飲暴食して・・・という生活をしているかもしれません。このような生活は望ましくないですよね。また、ストレス発散のための暴飲暴食から、摂食障害に発展する可能性もあるので、予防的観点からも望ましくありません。 しかし、これまでの体型認識のゆがみややせ願望などのネガティブボディイメージに関する研究では、このような人々にアプローチすることができないのです。 私の研究テーマ そこで、私はポジティブボディイメージに着目して、どうすればポジティブボディ 研究アラカルト 35イメージを高めることができるのか、という視点で研究をしています。最近は、子どもたちを対象に早期予防的介入をして、効果を検証したりしています。 この研究を始めたのは、摂食障害は青年期に発症することが多いので、予防するためには、青年期より前の児童期の時点で介入する必要があると考えたからです。 また、この研究の着想に至った当時(博士前期課程の頃)、国立精神・神経医療研究センターに所属し、児童を対象とした認知行動療法の効果研究に関わっていたことも、研究を始めるきっかけになりました。国立精神・神経医療研究センターでは、不安障害やうつ病の子どもたちを対象にした集団認知行動療法をサポートする役割をしていました。子どもたちと関わるなかで、子どもたちの柔軟さや、新しい知識をスポンジのように吸収してしまうところを間近で見て、驚くことばかりでした。こんな経験もあり、子どもたちを対象とした早期予防に関心をもつようになり、現在の研究を始めました。 今後も、子どもたちを対象とした摂食障害の早期予防に関する研究を継続しつつ、ゆくゆくは、幸福感の向上にもつながるような研究ができればいいなと思っています。このような研究に関心のある方は、ぜひ一度、私の研究室に遊びに来てください。

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