つくばの心理学2023
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安 婷婷 臨床心理学 あん てぃんてぃん 2 つくばの心理学 2023 研究アラカルト 留学生と援助要請 専門家・非専門家などの他者に助けを求める行動は心理学において「援助要請」と呼ばれます。自分ひとりで解決できない問題に際しては、他者に助けを求めることが望ましいのですが、困っていても助けを求められない人がいます。特に、メンタルヘルスの問題の場合は、症状への認識が不足していたり、メンタルヘルスの問題に対するスティグマを持っていたりするなど様々な原因で援助要請行動をさらに起こしにくくなります。 なぜ援助要請しない、できない人がいるのか、どのように支援したら援助要請できるようになるのか、どれくらい援助要請をしたら適切と言えるのか、これらの問題意識のもと、援助要請の理解、支援について研究や実践が展開されています。援助要請にまつわる概念も続々と登場しています。Fischer & Turner(1970)は援助要請に対する全般的な態度を測定しようとして、専門家への援助要請態度尺度(Attitudes Toward Seeking Professional Psychological Help Scale)を作成しました。しかし、態度が肯定的であっても、実際に援助要請するかどうかは別問題であり、必ずしても援助要請を行うとは限りません。その後、実際にニーズが発生した場合、どの程度援助要請をしようと思うのかという援助要請意図(help-seeking intention)が扱われるようになり、Ajzen(1991)の行動理論では、この行動意図が実際の行動に繋がるとされています。また、水野・石隈(1999)は「被援助志向性」(help-seeking preference)の概念を提案しており、この概念は「個人が、情緒的、行動的問題及現実生活における中心的問題で、カウンセリングやメンタルヘルスサービスの専門家、教師などの職業的な援助者及び友人・家族などのインフォーマルな援助者に援助を求めるかどうかについての認知的枠組み」と定義されています。これらの概念を利用して、援助要請に関連する要因を明らかにしようとする研究や、援助要請行動を起こすに至るまでのプロセスを明らかにしようとする研究、またプロセスの各段階に関連する要因を明らかにしようとする研究が多く行われてきており、

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