つくばの心理学2023
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岡田昌毅 キャリア発達 キャリア・カウンセリング おか だ まさ き 38 つくばの心理学 2023 研究アラカルト キャリア発達とキャリア・カウンセリング 「キャリア発達」という言葉を聞いたことありますか?キャリア発達とは、少し堅苦しいですが「個々の人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の中で、自己と働くことを関係付け、意味付けながら、自分の知的・身体的能力や情緒的な特徴、価値観などを一人一人の生き方として統合していくプロセス」と定義することができます。もう少し簡単に表現すると、私たちは青年期以降、大人になって年老いていくまで、人として色々な役割を果たしながら生きていきます。青年期の役割の中心は‘学ぶこと’ですし、大人になって就職すると役割の中心は‘働くこと’になります。恋人ができ結婚すると、大切な役割として‘人生のパートナー’、子供が生まれると‘親’としての役割が加わります。人が生きていく中においては、その時期に応じた複数の役割を果たすことが必要です。その役割は、人の人生を、とても楽しく豊かなものにもしますが、人には限られた時間とエネルギーしか与えられていないので、それぞれの役割を果たしたいと思うとき、何かを優先するためには何かを我慢しなければならないことが常にあります。人はそんな葛藤を感じながらもバランスを保ちながら、それを一つひとつ克服し成長していくのです。 また、人は、社会との関係の中で自分らしく生きようとしますが、生涯のそれぞれの時期には、その時期にふさわしい様々なキャリア発達に関わる課題があります。例えば、大学受験です。一生懸命勉強することもその一つですが、もっと大切なことは、どんな大学・学科に進学したいのか、そもそも何を学びたいのか、それは将来どんな仕事を志し、その仕事を通じて自分は何をしたいのかを考え、自分でその意思決定をすることです。そんな意思決定を一生涯に渡って何度も繰り返しながら、こうありたいと思う姿をだんだんと明らかにし、それを実現していくのです。成人してからは、大学受験よりも、はるかに困難で複雑な意思決定を何度もしなければなりません。その意思決定をすることは決して簡単なこと

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