つくばの心理学2023
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ではなく、悩み苦しみ後悔や挫折を経験します。そんな難しい課題を克服し意思決定を繰り返しながら成長し、自らの目指す姿を実現していく力をつけていくことが「キャリア発達」なのです。 なんとなく「キャリア発達」のことがわかりましたか?人は一生涯を通じてキャリア発達を遂げていきますが、その助走段階が青年期なのです。青年期にも色々な発達課題がありますが、将来自立した社会人・職業人として生きていくためには「人間関係形成能力」「情報活用能力」「意思決定能力」「将来設計能力」という4つの能力を、今から少しずつ身につけていくことが必要です。社会はもの凄いスピードで激しく変化しているし、あらゆることがより一層複雑化しています。そんな時代の中で、一人ひとりの人が直面するであろう課題に、柔軟にそして逞しく対応し、自分の力で生き抜いていくことができる「生きる力」を身につけることがとても大切です。その力を「キャリア適応力」と言います。そんな力を身につけて欲しいのです。 既に多くの大学で「キャリア教育」が積極的に実施されています。中学校や高等学校でも、そんな教育がはじまっていますが、そこで大切なことは、「学ぶこと」と「働くこと」を関係付けながら「生きること」の尊さに気づくことなのです。 研究アラカルト 39 もう一つ。人はキャリア発達の課題に直面したときに、時として自分一人だけでは支えきれない悩みを抱え精神的に不安定になることがあります。そのような心のありようを共感的(相手の気持ちになって)に理解し、適切に支援をすることが「キャリア・カウンセリング」です。自分一人だけでは解決できないことを、キャリア・カウンセラーと話をしていく中で、少しずつ解きほぐしながら、その人がもともと持っている精神的な力を引き出し、解決の道筋を考え、最終的には自分自身で意思決定していくのです。とても心強いですよ! 私の仕事は、これまでお話したような「キャリア発達」の心理的なメカニズムを明らかにすること(研究)と、キャリア・カウンセリングによって人の気持ちを軽くし元気になってもらうお手伝いをすること(実践)です。 私は電気工学科の出身で、エンジニアとして企業に入りました。入社6年目頃から人材育成の仕事をするようになり、20数年間企業で仕事をしながら、社会人大学院で心理学やカウンセリングを学んできました。学ぶことは学生の時に終わるのではなく、社会に出てから本当の勉強がはじまるのだと思います。 みなさんの人生は今はじまったばかりです。夢に向かって頑張ってください!

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