佐越祥子 神経科学・神経内分泌学 さ ごし しょう こ 44 つくばの心理学 2023 研究アラカルト 味を持ち、気がつけば神経内分泌にどっぷり浸かっていました。 そんな放浪歴があったので、神経内分泌に足を踏み入れた最初は社会的記憶がきっかけでした。愛情ホルモンとして知られるオキシトシンと社会的記憶の研究から入りました。オキシトシンは古くから知られているホルモンで、浸透圧調節や体液分泌にかかわり、分娩や乳汁分泌など細胞や器官を「ぎゅっ」とさせる機能を持っています。それに加えて、他者・他個体と関わる時の行動調節にも関与していまます。マウスを使っているので、社会行動を観察する時は攻撃行動、性行動、養育行動など生得的な行動を観察することが多いです。これらの行動はホルモンによって調節をされており、脳の中のどこでどのような調節がされているのか、単一のホルモンだけではなく、ホルモン同士の相互作用はどのようなものかに興味を持っています。少し時代には逆行しますが、雄がなぜ雄になって雄として振る舞うのか、どうして雌を好きなるのか、その「こころ」はホルモンのせいかもしれない 中学生くらいに考えているのは脳だけど「こころ」はどうして考えられるのだろうかと、漠然と思った記憶があります。その後、心理学という学問を知り、「大学 心理」で検索をしたら、心理学部が独立してあったのが筑波大学だったので、ここならしっかり心理学を勉強できそうだと選びました。というのは良い方の理由で、当時、国語の成績が壊滅的だったので、二次試験で国語を解かなくてもいい=文学部ではないところ、という悪い理由で選びました。 「こころ」を知りたかったはずなのに、大学の見学に行ってマウスが動いているのを見たら、心をぎゅっと鷲掴みにされ「かわいい! 動物で実験したい!」と、実験心理学、動物心理学に傾き、そこから実験心理学関連の授業や生物学などを勉強し始めました。その時は神経新生が巷に知られ始めた頃で、脳の細胞は一度作られたら死ぬだけじゃないんだ! と興奮しました。記憶を作るメカニズムが神経新生なのではないかと言われていて、そこから神経科学に興
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