つくばの心理学 2021
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つくばの心理学 2021 16 化問題行動に関して、McMahon & Frick(2005)は、反抗挑戦性障害、行為障害など行為問題(CP)に関する詳細なレビューを発表し、発症・重症化のパスウェイに関して考察しています。主要なリスク要因としては、生物学的要因、認知的関連要因、家族、仲間、社会生態学的要因が挙げられています(藤生,2006)。CPに関する特に重要な知見は、10歳以前に問題行動が存在した場合(児童期発症型)、反社会的人格障害にまで重症化する場合が多いことです。行為障害傾向に関連する攻撃性に関するリスク要因と保護要因は、Orpinas & Horne(2006)が、学業成績、親密な関係性(家族と仲間)、自信などをあげています。 この知見に着目して、平成17年度までの4年間にわたり研究費を獲得し小中高の児童・生徒および担当教員を対象に調査を実施しました。その結果、学業成績、話し合いで解決する親子関係、信頼できる大人が周りに一人でもいることが、日本サンプルでも保護要因として考えられることが確認できました。 <内在化問題行動への拡張> 内在化問題行動に関しては、Dozois & Dobson(2004)は、不安とうつについての予防の理論、研究および実践について詳細な検討を行い、不安とうつに関連するリスク要因と保護要因を指摘しています。内在化問題行動の保護要因には、高い知能や高い問題解決スキル、家族の外での強い関心あるいは家族の外での全面的な信頼の置ける大人の存在、少なくとも一人の親とのあたたかい養育的で支持的な関係性、効果的な養育スキルを持った調和的な婚姻関係にある良い精神的健康状態にある親を持つこと、安定した愛着(アタッチメント)の歴史、支持的な家族をもつこと、学業での自信などがあげられています。先の外在化問題行動の保護要因と一部重複する内容です。 これらの保護要因の研究も先の外在化問題行動に関する研究と並行的に実施してきました。その結果、保護要因はかなり重複していることが確認できました。 <現在の研究の方向> 特に、うつの研究領域では、認知的脆弱性(cognitive vulnerability)と呼ばれる、出来事に対する認知の仕方がリスク要因となることが指摘され研究が多く行われています(Alloy & Riskind, 2006)。保護者との関係の側面は、説明スタイルなどを通じて認知の仕方が伝達するという仮説もあります。 特に認知的要因に焦点を当て外在化問題行動と内在化問題行動に共通するようなリスク要因と保護要因を検討したいと考えています。このテーマで、平成20年度から研究費を獲得しています。

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