つくばの心理学 2021
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つくばの心理学 2021 24 が重く少しですが遅刻ばかりしていました。最初の先生は遅刻に厳しい先生で、少しでも遅れると『居残り学習チケット』をふんだんにくれる先生でした。『居残り学習チケット』がたまってしまってどうしてよいかわからなくなり、スクールカウンセラーに相談に行くと、「わかったわ。あなたのクラスを変えてあげる」と言ってくれて、その授業を別の先生でとれるようにしてくれました。てっきり、「1年間我慢しなさい」「その授業をとるのをあきらめなさい」と言われるか、あるいは遅刻をしたことについて怒られると思っていた私ですが、「スクールカウンセラーってすごい」「ちょっとした環境調整で、気持ちよく一年間過ごすことができるんだ」と感じたエピソードでした。 もう1つは、高校2年生のときのいつもの履修相談の場面でした。アメリカでは日本人は理科と数学がよくできるというイメージを持たれています。実際、私がアメリカに行ったときも、日本で習っていたことの方が進んでいたので、数学のクラスは、上級クラスに入ることになりました。アメリカの学校は学校で勉強する時間が短い分(昼の2時には学校が終わる)、宿題が多く、数学の宿題をこなすことを大変に感じていました。自分は絶対「文系向き」だと思っていた私は、カウンセラーに、「数学のレベルを落としたい」と相談しました。このときに、カウンセラーから、「下げても良いけど、そうすると理系の大学に行けなくなるわよ!」と忠告されました。そしてそこで、自分が将来、何がやりたいのか、どういった大学に行きたいのかということを少し一緒に考えてくれました。授業を1つ選ぶことが、将来の自分の進路を決めていくと考えると、ずいぶん大きな選択だと感じました。「進学先」「就職先」を選ぶということは大きな選択であり、それができるようになるためには、その前の「1つの授業を選択する」「日々の生活でどのように過ごすかを選択する」という練習が必要だということをなんとなく感じた出来事でした。 このような経験から、私は「スクールカウンセラー」という仕事にとても魅力を感じました。その当時は、スクールカウンセラーという仕事が一部の私立学校を除いて、まだ日本には導入されていない時代でした。そんななかで、スクールカウンセラーになりたいという想いを持ちながら日本に戻ってきて、出会ったのが『学校心理学』でした。日本の学校で行われている担任の先生、教育相談担当の先生、特別支援教育の先生、養護教諭の先生がされている援助活動に、子どものことを一番よく知っている保護者、心理の専門家であるスクールカウンセラーが加わり、新しい援助サービスのモデルを作っていくという学問に今はとても魅力を感じています。

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