つくばの心理学 2021
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つくばの心理学 2021 30 か?というようなことです。 そのころ、色々論文を漁っていて、アメリカ東海岸のコネチカット州のStorrsという町にある州立大学のBiobehavioral Scienceという大学院専攻科のことを知りました。ここでは、心理学だけでなく、生物学や解剖学、薬理学などの先生が集まって、行動の遺伝的、内分泌的、脳科学的基盤について学際的な研究を進めていました。またもや、これだ!と思った私は、早速、筑波の大学院を休学してこの大学に留学しました。そこで、私が学んだのは、行動を司る脳の働きとそこに関わるホルモンや遺伝子の働きについてでした。今から思えば、そのころは、アメリカで神経科学(脳科学)が盛んになりつつあり、また分子生物学の発展に伴って遺伝子を操作する技術などが急速に広まりつつある時期でした。筑波大学では、心理学しか学んでいなかった私には、簡単には理解できないことも多かったのですが、同時になんだかすごくわくわくするようなことが色々ありそうだという予感はありました。また大学の先生になるよりも、研究者・科学者になりたい!と思うようになったのもこの頃です。 さて、Ph.D.(博士号)を取得した私が、桜村-Storrs町の次に目指したのは、なんと大都市ニューヨークのManhattanにあるロックフェラー大学でした。2004年秋に(いつの間にか桜村はつくば市になっていました)筑波大学の「先生」になって日本に戻って来るまでの16年間を、私は研究者としてここで過ごすことになりました。この大学は、1901年にロックフェラー医学研究所として創立され、その後大学院大学となったのですが、創立間もない頃には、野口英世も研究者として活躍していました。小さな大学でカフェテリアに行けば、何人ものノーベル賞受賞者に毎日でも会えるような、とってもexcitingなところです。ここで私は、ホルモンが脳の中の神経細胞に存在するホルモン受容体に結合し、色々な遺伝子の働きをオンにしたりオフにしたりすることによって、マウスの行動がどのように変化するのかについての研究を始め、現在に至っています。マウスの行動といっても多種多様ですが、私は特に、2匹のマウスが出会った時にみられる愛着や攻撃といった社会行動に興味を持って研究を進めています。2匹のマウスが鼻をつきあわせているロゴマークは、このことを象徴しています。 ロゴマークにまつわる私の話はこれで完結です。この文章を読んで、ホルモンと脳と行動について興味が湧いてきたら是非一度、Ogawa LabのHP(https://www.kansei. tsukuba.ac.jp/~ogawalab/)を覗いてみてください。お気に入りのロゴマークもきれいなえんじ色で見ることができます。

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