つくばの心理学 2021
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研究アラカルト 33<はじめに> 東北大学の川島隆太先生によって、「音読・計算」をすると脳の前頭前野の部分(おでこの付近)の血流量が増大するという発見が、脳科学の分野でなされました。 それ以来の「脳を鍛える」ブーム。任天堂のDSを始めとして、音読・計算のワークブック。音読・計算だけでなく、「塗り絵」「料理」などなど。巷では、「脳を鍛える」の名の下に、さまざまな「脳」関連グッズがあふれかえっています。 さて、ここで、ブームに流されることなく、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。「音読・計算」が、脳の血流量や代謝量を増大させるということは、これまでの様々な研究から確かな事実のようです。しかし、そのことが、認知機能や記憶能力を高めるということに、直接、つながっていくのでしょうか?「音読・計算の実施→脳の血流量の増大→認知機能の高まり」という、この流れはあくまでも仮説であって、 本当にそうなのかは、様々な研究によって確かめられる必要があります。 <研究をしてみる> 「音読・計算の実施が、認知機能や日常生活上の活動にどのような効果をもたらすのか」というテーマの下、ここ5年ぐらい、プロジェクトを組んで研究を進めています。 例えば、こんな研究を行いました。音読・計算を実施する場合には、サポーターと呼ばれる援助者がついて、一緒に音読・計算を行っていきます。このサポーターと高齢者(対象者)のコミュニケーションを量的に操作して、対象者1人にサポーター1人で対する「1対1群」、対象者2人にサポーター1人で対する「1対2群」、対象者5人にサポーター1人で対する「1対多群」の3群を設定し、週3日、1回に20分程度の音読・計算を半年間実施したのです。また、音読・計算等、何も実施せずに、心理テストだけを行う群も設けました。 結果としては、心理テストだけを行った対照群と比較して、6ヶ月間に渡る継続的な音読・計算の実施は、認知機能を測定す研究アラカルト 「音読・計算」の効果を研究する 大川一郎 老年心理学・老年臨床心理学 おお かわ いち ろう

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