研究アラカルト 35 私は臨床心理学の中でも特に職場で働く人たちのメンタルヘルスに関する分野を専門にしています。心理学類を受験しようとする皆さんにはあまり興味のない分野かもしれません。しかし、実は皆さんの日常生活にも大きく関わっているとても大切な分野なのです。 皆さんが勉強や部活など、さまざまな活動に打ち込むことができるのはなぜでしょうか? 不自由なく食事を摂ることができ、あたたかいベッドで眠ることができるのはなぜでしょうか? それは、誰かが家庭の経済的基盤をしっかりと確保してくれているからに他なりません。 多くの家庭において、収入をもたらしてくれる一番大きな要素は、労働です。家族の誰かが会社などで働いてくれていることによって、家庭には安定した収入がもたらされています。 ちょっとイメージしにくいかもしれませんが、もし、あなたの家の大黒柱の人が、病気やけがで仕事が続けられなくなってしまったとしたら、どんなことが起きると思いますか? それまで毎月定期的に得られていた収入がなくなり、家族の誰かがパートに出たりしなければならなくなるかもしれません。家賃やローンが支払えなくなり、不自由な場所への引っ越しを余儀なくされるかもしれません。食費や光熱費などの必要最低限の生活費もまかなうことができなくなってしまう可能性もあります。このように考えれば、健康に働くということは、その人だけでなく、その周囲にいる人たちにとっても、とても大切なことだということがお分かりいただけると思います。 私は、働く人たちが病気になることなく、元気に仕事をし続けられるように支援するための研究を行っています。特に、うつや自殺などの心の健康問題の予防や改善に興味を持っています。 内閣府の統計によれば、平成26年中における自殺者の総数は25,427人で、そのうち働いている人は9,004人(35.4%)でした。仕事をするということは、好きなことだけができるわけではありません。ときには、やりたくない仕事をしたり、上司やお客さ研究アラカルト 働く人たちをもっと元気に!! 大塚泰正 臨床心理学 おお つか やす まさ
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