つくばの心理学 2021
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研究アラカルト 3なぜ、あいさつの言葉と動作は決まっているのか? あいさつのとき、どのような言葉を交わすか、どのような動きをするかは、国によって決まっていますし、同じ国の中でも地域によって決まっています。年代や職業で決まっていることもあります。国や地域や年代や職業などをひっくるめて「グループ」と呼べば、それぞれのグループの中で、そのグループのあいさつのルールが決まっています。 なぜ決まっているのでしょうか? あいさつは、本来は、お互いに相手が危害を加える者であるかどうかを確かめて、自分が危害を加える者ではないことを伝えるために実行するものでした。ですから、短時間でお互いが安全な者だと分かる方が、都合がよいわけです。あらかじめ言葉や動作を決めておいて、お互いがそれに従って実行すれば、余分なことを言ったり余分な動作をしたりしなくても、自分と同じグループの者であると確かめ合うことができます。 逆に、あらかじめ決まっている言葉や動作を実行しない者がいれば、自分たちのグループの者ではない怪しい者、警戒すべき者だとすぐに分かります。 いつ、どこで、誰に、どのような言葉を使い、どのような動作をするのか、ルールとしてきちんと決めておけば、グループの内側の人間と外側の人間を区別するのに便利です。 ところが、便利であったはずのあいさつは、一種の圧力として力を発揮することになります。 あいさつのルールが、グループ内で決まっているということは、「グループの内側にいる者は、あいさつのルールに従うべきだ」という圧力になることを意味します。「ルールに従うべきだ」という圧力は、「ルールに従わない者は、グループの内側の人間として認めない」、「グループの外側に出て行け」という、さらなる圧力になります。 たとえば、朝、初めて顔を合わせたときは「おはようございます」と言いながら、研究アラカルト 対人心理学であいさつについて考えてみると 相川 充 対人心理学 あい かわ あつし

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