つくばの心理学 2021
44/66

研究アラカルト 43 皆さんは、リラックスできますか。たぶん、リラックスできないことはないでしょう。でも、いつでも、どこでも、自分の思ったとおりにリラックスはなかなかできないのではないでしょうか。人前であがってしまったり、大切な試合に臨んで必要以上に緊張してしまったりと、リラックスできなくて困った経験も多いのではと思います。では、どうやったら必要なときに必要なだけリラックスできるようになるのでしょうか。心理学の中では、これまで、いくつかリラックスのための技法が開発されてきています。今回紹介させていただく自律訓練法も代表的なリラクセーション技法といえます。 自律訓練法とは 自律訓練法は1920年代の科学的な催眠研究の中から生まれてきた心理生理的な治療法で、中性的催眠状態(ある意味深くリラックスした状態)にみられる治療的な作用を得るために体系化された一種のセルフコントロール法ともいえます。自律訓練法には緊張の緩和や抗ストレス効果などがあり、これまで心身症の基本的な治療技法として広く適用されてきています。また、現在では医学領域だけではなく心理相談の領域や教育・スポーツ・産業界においても広く用いられるようになってきています。さらに、最近では、一般の方々を対象とした市民講座としても広がりをみせています。 自律訓練法の成り立ち 自律訓練法の練習の具体的な手順は、概略すると、比較的落ち着ける環境で、安定した姿勢を作り、閉眼した上で、訓練公式(たとえば、「気持ちが落ち着いている」、「両腕両脚が重たい」、「両腕両脚が温かい」など)を心の中で暗誦します。さらに、その際、公式に対応した身体部位に受動的な注意集中を行うというものです。 訓練で用いられる「両腕両脚が重たい」、「両腕両脚が温かい」という公式は、催眠研究の中で、催眠にうまく導入された被験者に共通した体験として報告されたものです。自律訓練法は、これらの共通に体験さ研究アラカルト 自律訓練法入門 -リラクセーションの基礎研究- 杉江 征 臨床心理学 すぎ え まさし

元のページ  ../index.html#44

このブックを見る