つくばの心理学 2021
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研究アラカルト 47 この原稿を読んで下さっている全ての方々が必ず経験したことがあるだろうテスト。私はこのテストに興味を持って研究を行っています。以下では、新しいテストのかたちについてお話し、私がテストの何について研究しているのか、少しだけ説明したいと思います。 従来のテスト 皆さんが今までに受けてきたテストの大部分は紙に問題が印刷されているもので、受験者は与えられた解答時間の中で問題に好きな順番で取り組むという形式のものだったと思います。そして、大体の場合には、このようなテストが同じクラスや学年といった実施対象の受験者集団に対して一斉に行われます。その(同じテストを同じ日時に受験する)ため、そのテスト得点にはその時点での各受験者の能力(テストで測りたかったもの)が反映されることとなり(テストがきちんと測りたいものを測れていればの話ですが)、テスト得点の高低による受験者間の比較も可能となるわけです。 このように、従来のテストにおいては全ての受験者が同じ問題に解答することになるわけですが、受験者の中には能力の高い受験者もいれば低い受験者もいます。その一方で、1つのテストの中には、一般的に易しい問題から難しい問題まで様々な難易度の問題が含まれています。とすると、能力の高い受験者の間では易しい問題に対する解答はほとんど同じ(全て正答)になってしまい、受験者の能力を高い精度で測定する(能力のわずかな差異を検出する)という観点からは、能力の高い受験者にとって易しい問題は適当ではない(もっと難しい問題を出したほうが良い)ということになります。その逆もまた然りで、能力の低い受験者にとって難しい問題は適当ではないと考えることができます。 適応型テスト 上記の議論からは、テストによる能力測定の精度を向上させるための方策の1つとして、受験者の能力に合わせて出題する問題の難易度を変更するというものが考えられます。しかしながら、そもそもテストは、その能力を測定するために実施されるもの研究アラカルト テストと研究のはなし 登藤直弥 教育測定学・心理統計学・統計学 とう どう なお や

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