研究アラカルト 49 皆さんは『鶏口(けいこう)となるも、牛後(ぎゅうご)となるなかれ』という格言をご存知ですか。これは、一般的には、牛は鶏よりも秀でているという観念から、“優れた集団の後ろになるよりは、弱小集団でもトップになったほうがよい”というたとえになります。 私が研究しているテーマの1つに、これと似た現象があります。それは“井の中の蛙効果(big-fish-little-pond effect ; Marsh, 1994)”と呼ばれているのですが、個人の学業水準をコントロール(統制)した場合、学校の学業水準は個人のコンピテンス(自信のようなものとお考え下さい)にネガティブな影響を与えるという現象のことです。少しわかりにくいと思いますので、具体的な例を交えながら説明します。 ここにAさんとBさんがいるとします。AさんとBさんは、高校入学直前まではほとんど同じ学業成績でした。ところが、Aさんは学業レベルの高い進学校に入学したのに対して、Bさんはたまたま高校受験で失敗してしまい、Aさんとは違った、学業レベルがそれほど高くはない高校に入学することになりました。この時点では、Aさんの方が良かったように思えますね。その後、この2人がどうなったのかと言いますと、Aさんは、良くできる生徒ばかりの高校の中で、優秀な友だちとの比較のために、日に日にコンピテンス(自信)が低下して研究アラカルト 鶏口となるも、牛後となるなかれ 外山美樹 教育心理学 と やま み き
元のページ ../index.html#50