研究アラカルト 7 冒頭の写真は、1歳だった娘が、茶筒を開けて、こぼれた茶葉をすくっているところです。これを見て、みなさんはどう思われるでしょうか。 「あーあ、やっちゃった」「お茶がもったいない」「しつけがなっていない」というところでしょうか。 私は「筒があけられるようになった!」「一生懸命茶葉を集めている。おもしろい!」と笑い声をおさえながら写真を撮りました。「もう1回掃除機をかけないと・・」とも思いましたが。 その後、茶葉ではなく、色つきパスタや大きな鈴を入れた瓶や筒を用意しておくと、それでひとしきり遊んでいました。運動の機能が発達して、筒をつかんでひっぱることができるようになった子どもにとって、ひっぱったら持っていたものが2つに分かれて、何か出てくるというのは、ひっぱったかいのある、おもしろいことだったのでしょう。 子どもの力 赤ちゃんが声を出したら誰かが笑いかける、押したら音が鳴る、たたいたら色が変わるといったような、まわりの人やものに働きかけると応答を得るという経験は、生まれた直後から無数に繰り返されます。その経験を通して、“働きかければ周りがそれに応える”という、自分に対する信頼感と周りに対する安心感が育まれていくようです。特に困った時、怖いとき、驚いたときに助けてもらえるかどうかは重要なポイントで、泣いて助けを呼び、抱きついて落ち着くという経験は子どもの心身の発達に影響を与えるようです。 子どもの力に影響する親の抑うつ 一方、子どもの養育を担うことになる母親には、子どもを生んだ後に、気分が落ち込みやすい時期があることが知られています。落ち込んでいると、赤ちゃんと顔を合わせたり、声をかけたり、ほほえんだり、抱いたりする回数が減る傾向があります。また、子どもの泣きが、自分を責めている研究アラカルト 子育ての心理学 安藤智子 発達臨床心理学 あん どう さと こ
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