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質問・意見に対する回答(第7回分)


評価は出席及びレポートによって行うものとします。レポートテーマはこれまでと同様,授業で話されたものから選び,これを展開してください。また文献を用い,明記すること。自分の考察部分と文献引用部分が混在しないようにすること。ときどき,どっちの意見なのかわからないことがあります。
★枚数 :A4版レポート用紙3枚以上(表紙は別)
★〆切 :12月1日(水)
★提出先:第二事務区レポートボックス



<施設について>

● 施設福祉はいろいろと批判されているが、施設は施設で必要なのだと思う。ただ批判があるように改善すべき点は多々あるので、そこを直していく努力はすべきだろう。
● 地域福祉と施設福祉はそう対立するものではないように思います。施設といっても、短期入所や相談機関としての役割をもつことができるので、それなりに地域福祉というものと折り合いをつけていけるのではないだろうか。
● 実家の近くには、幾つか小規模の施設があります。しかしそれらはとてもひっそりと地域の中に存在しているように思われます。私の実家は東京で、地域社会の結びつき自体も弱くなっている一方であるため、その中で福祉施設が地域に受容され、入所者が堂々と生活していくのは難しくなってきているようです。

⇒先週触れましたように,議論はいろいろ行われています。今回は資料としてその例を提供します。また,続きとして追加の話も致します。

<公的介護保険>

● 前回ちらっと介護保険が障害者にも適用されるというお話があったと思うのですが、サービス受給資格や保険料の支払いなどはどうなるのでしょうか。

⇒確認しますと,保険料の支払は65歳以上の人と40〜64歳の医療保険加入者。このうちサービスを受けられるのは,1)65歳以上の人及び2)40〜64歳でかつ老化が原因とされる15種の病気で介護・支援が必要な人です。従って,加齢に伴い当然障害が生じることがありますので,この人たちは障害者であるとも言えます。また,2)の中には障害者としてこれまでサービスを受けてきた人も含まれているでしょう。
 このような話をしたと思います。

<ノーマライゼーション,など>

● 「ノーマライゼーションとは、障害があっても、彼らにノーマルな生活条件を提供することである。他の市民に与えられているのと同じ条件を彼らに提供することを意味している。」と書かれていましたが、いまいちよく分かりません。それは、生活面、仕事面を含める全ての事においてですか?できれば、例を教えていただけませんか?
 この前、障害者の方がダイビングのライセンスをとっているのをテレビで見ましたが、そういう資格が提供されるという事もノーマライゼーションなのでしょうか?

⇒生活面・仕事面を含める全ての事においてです。例と言われると難しいのですが,私たちが普通だと思っていることで障害のある人が享受できていないとするならば,それは変えなければならないということだと思います。見たいときにTVを見るのがもしも普通であるならば,誰であれそれが保障されるべきであるというのも,例になるでしょうか。でも私たちだってまったく制限なしに見たいときに見ているわけではないですけど,ただ見ようと思えばいつでも見ることは出来ると思います。
 またこれは,歩けない人に歩きなさいと言うことではありませんし,歩いたほうが良いと押し付けることでもありません。しかし障害のない人が行けたり使えたりする(アクセスできる)ものについては,同様の可能性が開かれていなければならないでしょう。
 現在はそれが,障害が有るということだけで開かれていない(提供されていない)ことがいろいろあるということなのだと思います。ダイビングなどがもしも障害や医療的な理由などで危険であると判断されるならば,それはその人の安全を配慮してライセンスを与えないほうが良いことになります。しかし実際には良く調べてみたり,あるいは方法や手段を工夫すれば問題の無いことも多いのではないかと思います。さまざまな資格についても言えることですが,現在はそれらがあまり検討されもせずに可能性をはく奪されているということが,指摘され問題として取り上げられるようになってきました。資格取得について障害を理由とする制限条項が有る場合(欠格条項という言い方をしています),これがあまりにも制限が強かったり理由が不当であることが多いということで,行政でも検討を進めています。

● 地域福祉の考え方は、そのままノーマライゼーションの考え方でもあるのですね。地域福祉を重視していこうという動きの中に、人間として当然の権利を、当たり前に生きる権利を守っていきたいという気持ちがあるのだと思います。
 障害者が障害者だけの枠で生きて、健常者が健常者の枠の中だけで生きるという社会は、貧しいと思うし、社会の制度・あり方だけに限らず、意識上でもいろいろな人の中を生きる、そういうことが大切だと考えます。


<その他>

●「ろう者」ということについて。
 能力的に見れば、あきらかに障害があるのに、ろう者と呼ばれる人は、自分を障害者と思っていないという話でしたが、こういう発想が、他の障害者(EX.盲、運動障害の人)の中でも、あるものなのでしょうか? 私が知るかぎりでは、聴覚障害者独特のものであるように思えます。もし聴覚障害者独特のものであるとしたら、なぜ、聴覚障害者の内だけに、こういう考えが、発展(?)してきたのでしょうか?

⇒もう少しまとめてお話する時間があった方がいいですね。現在のテーマが終わったら移ろうかと思っているのですが。
 先ずこういう議論の場合のお約束?として,予めこだわっておきましょう。能力的に明らかに障害が有るというのは,どの程度から言うのでしょうか。例えば100m走など能力的に差があるものについては運動会ではあまり順位を強調しないようにしようとする向きがあるようですが,例えばその場合,とても遅い子どもは能力的な障害なのでしょうか。ずっと遅くなっていった場合,どこから障害といわれるのでしょうか。その際,能力にこだわると“明らかに”というのが基準なのでしょうけど,誰がどうやって決めたものが基準となっているのでしょう。また私たちが“明らかに”という場合,誰かの基準を援用しているのでしょうか。それとも自分の尺度にしたがっているのでしょうか。そもそもそのことを意識して使っているのでしょうか。実はあいまいなまま“明らか”であると言っているのではないでしょうか? 極端なことを話すとキリがありませんのでこれくらいにしますが(ボロも出るので),“明らか”などの基準定義は注意して使う必要があるようです。通常は,誰かの都合によって基準が作られており,それを私たちも使っていることが多いのですが。
 で,盲の人でも運動障害の人でも,自分の障害あるいは自己認識はさまざまでしょう。障害者手帳を持っているかいないかということで分かれるのでしたらわかりやすいのでしょうが,持っていたとしてもどう考えているかはわからないですよね。いろんな方がいらっしゃるという言い方に留めます。
 うーん、まだ言えてないなあ。“(周りの人から見た)障害者が(自分のことを)障害者じゃないと思っている”ということがとても理解できないということなのかもしれませんね。変な考え方というのではないと思うのですけど。誤解されそうな気もするのですけど,誰かが新潟県人だったとして,その人が新潟県人だと思っているか日本人だと思っているか,あるいはアジア人,地球人だと思っているのかはさまざまだということなのかもしれません(やっぱり不適切かなあ)。アイデンティティや帰属意識というのは,その人の生き方でもあると思います。
 ところで、このアイデンティティや帰属意識を規定するのに,文化が大きな役割を果たしていると思われます。文化というまとまりを定める際に,言語は大きな役割を果たします(ただし言語だけが規定要素ではない)。ろう者社会は手話という独自の言語を持つ人々であるとするならば,そのような人々が他のアイデンティティではなくろう者というアイデンティティを強く自分のものだと思い,また帰属意識を持つということは考えやすいのではないでしょうか? では翻って他の障害領域の方々が同様のアイデンティティを持てるような文化を持っているかというと,これは難しいところです。個人的には,ある集団が特有の行動様式・思考様式・生活様式などを持っている場合にはこれを文化だと考えたいと思っています。そうしますと,それぞれの領域において固有の行動様式・思考様式・生活様式が存在し,文化が有ると考えることは出来るでしょう。しかし,ろう者と同じような凝集性?は無いのかもしれません。このへんはもっといろいろ考えてみなければならないし,また議論が行われている分野なのです。私は勉強不足。

● イトーヨーカドーetcの企業も障害者を雇ってくれているという話でした。が、そういう大企業や、小さなお店などが障害者を雇うことで何かメリット(雇用する側にとって)はあるのでしょうか?もしくは「雇いなさい」と言われているとか?(国とかから)
  不景気の折、会社も人を雇うのは大変だと思います。特に障害を持つ人とかは一旦、リストラされてしまうと再就職は難しいのでは?と思いました。

⇒「障害者の雇用の促進等に関する法律」というのがあり,これに基づいてさまざまな雇用促進のための施策が行われています。また各地に障害者雇用促進協会や障害者職業センターが有り,公共職業安定所(最近はハローワークという)など関係諸機関と協力して雇用の促進と労働環境の安定・改善などに努めています。「雇いなさい」と国から言われているかといえば,そうです。この辺りについては詳しく話すべきなのですが,時間と相談させてください。
 ご指摘の通り,不景気の折,企業など事業所への就職はたいへん難しいようです。


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