VI まとめ

 以上で論じたようにリーディングファーストはヘッドスタートを補完するプログラムとしての役割も期待されつつ導入された。リーディングファーストが、不利益を被った貧困層やマイノリティーの子供たちの将来にどのような影響を与えるのかは今後の研究を待つ必要があろう。
 しかしヘッドスタートとリーディングファーストを整理することで、不利益を被った子供たちの介入として重要な点を確認できたと考える。 それは
1.健康や地域とのかかわりを含めた総合的なアプローチ、
2.同時に学校での授業に付いていくために不可欠な識字能力の指導、
3.前述の二つの協力によるアプローチ
である。
 またアメリカにおいて最大のマイノリティーであり、現在も急速に増加し続けているヒスパニック系の子供たちを考慮すると、識字能力の習得プログラムの重要性は格段に増すと考えられる。冒頭でも紹介したようにヒスパニック系の住民のうち21.9%は貧困レベルの生活をしており、高卒以上の学歴を持つものは56%に過ぎないのである。これは黒人の高卒者以上が86%白人同91%であることからも明らかである。さらにBpnilla,Carlosは高校中退者の3分の1はヒスパニック系であると指摘している。
 またヘッドスタートへの参加も黒人38%に比べて、ヒスパニック系は14%である。英語ではない言語を母語とするヒスパニック系の子供たちに取って、識字能力は必要不可欠であり、学校での成功の鍵となる力であると筆者は考える。
 したがって不利益を被った子供たちの教育を考えるとき、言語的マイノリティーにも注目して、英語の識字プログラムを行うことは大いに意義深いことであると筆者は考えるのである。2001年に始まったリーディングファーストの挑戦がヘッドスタートとプログラムと連携しつつ不利益を被った子供たちの未来を切り開くことを筆者は祈るものである。

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