終わりに


 社会人に対して教員への門戸を広げる方向性に対する批判として、総じて想定されるのは、安易な社会人採用は教員の質的低下を招き教職の専門性を低下させる、というものである。だが、情報化・市場化・グローバル化とあいまって、価値観が多様化する中で、多様な意味での役割が学校教育のみに集中し、学校は包括的な性格をますます強めているという現状において、教職に必要な概念は「専門性」ではなく、むしろ「分業」という視点の中にあるのではないか、というのが私の考えである。社会人の活用は、学校教育に「分業」という新たな方向性を生み出すという点で、大きな役割を果たしうるものと思われる。その根拠として、今回は扱えなかったが、特別免許状や特別非常勤講師の活用状況に関する事例の検討も今後行えればと思う。

 NPTTプログラムに関しては、日本の教員超過とモンタナ州の教員不足という社会状況の違い、また同プログラム自体が教員不足の打開策として作成されたものであるという2点は十分に考慮に入れる必要があるが、それをふまえても、社会人に教員へ門戸を広げる制度を構築していく上で、大いに参考になるものであると言えるのではないだろうか。


参考

Dori Burns Nielson,Ed.D.「WHO WILL TEACH MONTANA’S CHILDREN」(Montana Board of Public Education, ,2001) :http://www.opi.mt.gov/pdf/cert/teachchildren.pdf#search

モンタナ州公立教育当局ホームページ

・NPTTプログラムの項:http://www.opi.state.mt.us/

・STUDENT HANDBOOK:http://www.montana.edu/nptt/pdf/Student%20Handbook.pdf

モンタナ州立大学(MSU)ホームページ :http://www.montana.edu/wwwed/fpcert/

文部科学省ホームページ中央教育審議会平成14年度2月21日答申「今後の教員免許のあり方について」 :http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/020202/020202e.htm

柳,治男「地域社会と学校の論理的媒介としての教育の分業化-[地域社会と教育」論の方向性をめぐって-]」(教育社会学研究,日本教育社会学会,1981)

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