4)アメリカの教員免許更新制

 アメリカにおける教員免許状は州ごとに定められており、更新・上進制の有無やその基準に関してもさまざまである。正規の教員免許状は、大きく分けて以下の2通りが考えられるが、その大多数が①を占めており、終身有効な免許状を発行する州は少なくなりつつある。

①一定期間ごとの更新(あるいは上進)義務が課される場合
②上級免許状として終身免許状の場合

 ①は終身免許状を発行することなく、更新・上進させようとするものであり、カリフォルニア州が事例として取り上げられる。カリフォルニア州では、大学卒業後に発行される仮免許状の有効期限が5年となっており、仮免許状を正規教員免許状へ上進する場合には、次ぎの二つの要件を満たす必要がある。

(1) 学士号取得過程以上の1年間の課程終了あるいは初任教員を対象とする州の支援評価事業の受講
(2) 薬物教育、コンピューター教育などに関する科目の履修

 正規教員免許取得後は、5年ごとに更新義務が課されており、更新の際には、150時間以上の現職研修参加および半年間の教職経験などといった更新要件を満たす必要がある。カリフォルニア州の事例では、大学卒業後に仮免許状が発行されることによって、上進・更新ともに要件とされているが、大学卒業後仮免許状の発行無しに、普通免許状を発行して更新を課している州も存在する。またこれまで終身免許状を発行していた州が、更新制を採用するような傾向にあり、アメリカの8割以上の州が更新・上進制を用いている。

 
 少数になりつつある②の事例としては、ニュージャージー州を取り上げることとする。ニュージャージー州が終身有効免許を取得するためには以下の条件を満たす必要がある。

1.地域的に公認された大学の学士号取得
2.学士号、学士号後のプログラム、あるいは上級学位の取得
3.プラクシスⅡ(専門科目評価)/全米教員試験(National Teacher Examination= NTE)の合格
4.初等教育のための主な一般教養科目、あるいは自然科学を修了すること。また職業に関する産業の資格を除いて、教職領域の主な教科を修了すること。さらに主な教職領域の中で、少なくとも30単位(Semester hours)を修了すること。
5.以下のうちどちらか一つを修了すること。
•一時的な教員プログラム(入門研修、代替ルートの新人教育、あるいは初任者研修)
•州公認の教師準備プログラムと、1年間の州発行の資格の下でフルタイムの教職経験

 終身免許状を発行する州は少数になりつつあるが、終身免許状を取得するには上記のような条件をすべて満たす必要があり、学士号を取得するだけではない要件が定められている。日本の教育職員免許法で定められている普通免許状は一般に、教育学部のある大学で設けられている教職課程や、文部科学大臣が指定する教員養成機関などで必要な教育を受けることで授与されることになっている。また日本の普通免許状は、日本国内のすべてで有効であり、有効期限は設けられていない状況である。こうした状況をニュージャージー州の事例と比べると、同じ終身有効の免許状であってもニュージャージー州は、相応の要件を課すことによって終身免許状を発行しているように見て取れる。
 次にアメリカで更新制が導入され、全州的に浸透していった歴史的変遷を追うことで、更新制と教員の質との関係性について検討していくこととする。

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