6.まとめと考察

報告書にはMSAPの事業とMSAPから補助金を受けた学校がどのような成果をあげてきたかが書かれていた。
特に目立った成果は、多くのマグネット・スクールで、同じ地域の同じようにマイノリティーを多く抱えている学校より、 ある程度のより前向きな学校の雰囲気と専門的な共同体を作っている、ということである。
加えて、MSAPから補助金を受けた学校は自分たちのプログラムを全米や週の基準や評価に近づける努力をしている、 ということもあげられる。
 同時に、MSAPから補助金を受けた学校はMGIの解消や学力達成という目標に対して小規模な成果をあげることしかできていない、 という現状もある。
 今回報告書を読んで感じたことは、マグネット・スクールもNCLBの枠の中に組み込まれているということがわかった。
特にTitleTの枠組み(マグネット・スクールもTitleTスクールの対象となっている)や評価の強化が新しい動きであるように思われる。 マグネット・スクールも変革を求められるようになったことが伺える。
 チャーター・スクールなど新しい学校教育の在り方に注目が集まる中、マグネット・スクールはどのような変化をしていくのだろうか。 今後も動きに注目したい。

教育制度論演習では、学生が発表した後その内容について質疑応答やディスカッションが行なわれる。そして最後に先生から補足や指導をした頂く、という スタイルで演習が進んでいく。
以下に、本テーマの発表のときに行われたディスカッションの内容を紹介する。

マグネット・スクールの特徴として、今回のレポートで取り上げたものは2つあった。一つは人種差別撤廃・人種統合、もう一つは生徒の学力向上であった。 また、マグネット・スクールの特徴として、特色あるカリキュラムが挙げられる。
今回のレポートでも紹介したとおり、人種統合と学力向上の点でマグネット・スクールは大きな成果を出していない。
2002年に出されたNCLBの中ではTitleTスクールを定めて学力向上に力を入れている。マグネット・スクールの70%はTitleTスクールである。 マグネット・スクールに課されていた学力向上という点はTitleTスクールに取って代わられるのではないだろうか。
また、1990年代に入るとチャーター・スクールが注目を集めるようになり、その数もここ数年で大幅に増加した。 チャーター・スクールでは今までの公立学校の形にとらわれない特色あるカリキュラムで教育を行なうことができる。その自由度は非常に高い。 今後、特色あるカリキュラムという点はチャーター・スクールがになっていくのではないだろうか。

そして残されたのが、人種統合に関することである。上述のように今後アメリカ政府は人種統合の問題を学力向上や特色あるカリキュラム といったことから切り離して議論していくと思われる。人種統合のためにマイノリティーに対する優遇措置をとると、「逆差別である」 という批判が白人再度から出された。逆差別の問題等を考えると特定の人種のための政策を行なうことは困難になってくる。
アメリカでは人種差別と貧困との間に強い相関がみられる。その点に着目して、貧困問題の解決という形で人種問題(特に人種間格差)を 解決していこうとしているのであろう。

参考文献

・J.E.クーンズ S.D.シュガーマン 白石裕監訳『学校の選択』1998玉川大学出版

“Evaluation of the Magnet School Assistance Program ,1998 Grantees Final Report”American Insutitutes for Research 2003

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