質問・意見に対する答え(第2回,中村氏分)
・トーキングエイドの発声機能・コミュニケーションツールの現状
私が足で操作していた声を出す機械は、トーキングエイドという商品です。声に抑揚がなく聞き取りにくいという意見が多かったのですが、全くその通りだと思います。
そこそこコンパクトで携帯もできて、声の出せるコミュニケーションツールは今のところトーキングエイドしか発売されていません。ちなみに電源は、電池と充電式と両方どちらかで供給できます。
トーキングエイドの定価は、99800円です。実際購入する際には、行政から援助が出て、2〜3万で購入できます。
福祉機器の製品は、需要が少なくて市場が限られており、行政の援助を頼って売っていくのが現状で、独占市場になりがちで価格競争も性能競争も起こりにくいようです。
実はこのトーキングエイド、私が電動車椅子で移動する時は携帯していません。携帯するにはまだ大きく重く、またその声の出し方や使い勝手が気にいらないからです。代わりに50音表が書かれた紙を持っており、その文字を足の指でさして一文字ずつ読んでもらってコミュニケーションをとっています。
計算機を使っての話だと、さまざまな発声機器・コミュニケーションツールが研究・開発・製品化されているようです。(私の電動車椅子にも携帯用のパソコンを搭載する計画があります。)それらの発声は、文章の抑揚がある程度つけられており、多少聞きやすくなっています。柔軟性には乏しく、かな漢字混じり文を謝って読んでしまったり、抑揚がおかしくなることがあります。
このへんの話は自分の専門なのでわりとよくチェックしているのでわかるのですが、計算機市場の動きの早さに追いつけないで、製造中止になったりしています。
計算機を個人で持つというのは、予算的にそれなりの覚悟がいります。それでせっかく購入した計算機が時代遅れになり、その計算機を使ったコミュニケーションツールや発声機器に対しての改良や故障の際のメーカー側のサポートが止まったりしています。
(例えば、2〜3年前に日本で一世を風靡していた、98という計算機があります。最近までその98を使っての、コミュニケーションツールの研究がほとんどだったのですが、現在は98で動くソフトの開発はほとんと見なくなってしまいました。メーカーの名前は出せませんが、研究室にある98用の発声機器のトラブルでメーカーに問い合わせてみましたが、対応する部署がなくなっていました。)
それでも、障害者が計算機を持つということは、有効だと思います。文書作成機能や描画する機能は、創作活動の糸口になるでしょうし、ネットワークを通して外の人との交流ができるのです。ネットワークを通してショッピングも十分にできるような時代になりましたし。
運動機能障害を持っている人たちは一般的に外出する機会が少ないので、そういうやりとりが生きる潤いになったりします。(日夜研究に励んでいる大学院生にもですね。→ネットワークでの交流 (笑))
・コミュニケーションツールの選択・実装
コミュニケーションツールを知り合いに紹介して、使ってもらいたい。具体的に教えてくれというような質問がありました。
使わせたい人の持つ障害の状況によって、入力装置を選択する必要があります。
キーボードが使えない人のために、一つのタッチスイッチの操作だけで文字を入力・発声できる装置があります。どんな入力装置が適切かは、個人によりますので一概には言えません。
日本アビリティーズ協会(?) のビルが東京の飯田橋にあり、そこにはコミュニケーションツールを含むさまざまな福祉機器が展示されています。
そのへんの情報は、心障学系の藤田研究室所属の人が持っていると思われます。
今私の研究に使っている計算機のシステムは、かなりお値段の方がはるので、残念ながらあまりお薦めできません。
・(聞き取りにくかった人のために、)私のやっている研究をもう一度紹介
(私は研究生ではありません。大学院生です。理工学研究科の一年です。)
最近の計算機の操作は主に、キーボードとマウスによって行われます。文字を入力するにはキーボードを使用します。
一方、運動機能障害を持っている人の中には、きーボードの使用が困難な人がいます。そのような人たちにも計算機が利用できるようにするために、色々な機構・機器が研究開発されています。
私たちのとる方法は、画面上にキーボードを作りそれをマウスで操作して文字入力をする方法です。これにより、マウスだけで計算機の操作ができるようになるというわけです。(本当?)
そのキーボードのキーの配置や大きさは、使う人の好みによりあらかじめ変えることができます。
その上使っているうちに徐々にキーボード自体が自分で変化していく機構を作り、それが使い易い方向に変化させる方法を見つけるというのが私の研究です。
ちなみに、マウスも使えない人のためには、手の粗大動作や舌の動きなどでの操作で計算機へのマウスでの操作の代わりができる機器が、多数研究・開発されています。
・工学系と心障系のつながり
日本の学会でも、日本リハビリテーション工学協会という会ができて、もう10年近く建ちます。その他関連する学会のシンポジウムや学術講演会でも、盛んに交流が行われています。両方のアイデアを出しあうことは大切ですよね。
私も心障学系の藤田研究室の人と連絡をとりあっていて、度々お世話になって下ります。
・足でしゃべる機械を操作している間の対話者の心がけ
普通、人が話そうとしているところをさえぎって話を進めたりしませんよね。そんな程度のことだと思いますよ。時間の長さは違いますけど。
これも慣れてしまえば、そんなに気を使うことではないと思っていますが、どうなんでしょうね。
・周りの学生の笑い方にいらだちをおぼえた方へ
周りの学生の笑い方が子供の可愛らしいしぐさを見てる時の笑い方と同じように思え、いらだちをおぼえたというようなことが書かれていました。そういうセンスも大事だと思いますが。
私個人をどう見るかは、その人の勝手なわけで。
私の方も、「つかみはOK」という感じで、楽しく話をさせてもらいましたよ。
学類の一年生の女の人に「おちゃめな人」と書かれたのを見た時は、自分でも笑っててしまいましたが。まぁ、人の魅力にも色々あるわけで。
それからもう一つ。そんなこと気にしてたら外出できませんよ。大学周辺には子供は少ないですけど、子供の一言は結構きびしいものがありますね。
子供には罪はないわけですが、側にいる親・自宅に帰ってその話を聞く親が、どのくらい本当のことを話せるのか、いつも気にかかっています。
・介助の人数について
介助者の延べ人数、30人という数字を聞いて「多い」という印象を持たれた人がいましたが、単純に一週間の日数で割ってみて下さい。私は土日は班を特に定めずに適当に介助に入ってもらっているので、月曜〜金曜の5日間で班分けをします。一つの曜日につき、6〜7人ですよ。これで一月分の朝夜の介助のシフトを決めるのは、「きつい」ですよね。
その他の介助のことに関しては、別途資料(ビラ)をご覧下さい。
・手助けの種類
「障害者のためのいろいろなサービス(料金半額 etc.)や、手助けを頼むことに対し、『利用できるだけ利用してやろうと思っている』という考え方が、とても気持ちいいと思いました。」などの意見を見て。
駅員による階段の上り下りの手助けやコンビニでの買い物の店員の手助けと、見知らぬ人の街中での手助けとは、決して一緒のものとは思っていません。
前者はサービス業の延長であるべきの話であり、後者は個人的に感謝すべき好意なのです、
普段受けている介助は全てボランティアですけど、ほとんどが同世代の学生ですから、まぁ友達みたいなものです。けど、感謝の気持ちは忘れてはいけないと思っています。
・介助に関する犠牲・偽善
私も介助を受けている身でありまだまだ経験が浅いと思うので、話半分で読んで下さい。
「ボランティア」という言葉の意味を思い出してみて下さい。つまり、「ボランティア」として頼んでいる限りは、犠牲を強いてまで頼むことはできないと思います。
実際のところは、そこに友情などがからんできて、難しいんですよね。そこにからんでくる「同情」については、私は言及できませんが。
介助募集のビラを配っていると無視して素通りしていく人がいます。配っている側としては、気分の良いものではありません。しかし冷静に考えると、忙しくてできそうにない人や興味が全くない人も射て当然ではないかとも思います。興味が全くない人にこそ読んでほしいという気持ちもあって、複雑なんですけど。
介助に参加できないのにビラを受け取るだけで偽善を感じてしまうのなら、それを「善」にしてしまうというのはいかがでしょうか? 方法をたった今思い付きました。友達との会話の中でもしそういう話になった時にでも、介助募集のことを教えてあげて下さい。それが難しいのなら、ビラを他の人の郵便受けにでも入れてくれると、ありがたいです。
介助などボランティアをやっている人も、その行為に対して偽善を感じる時は、こう思って下されば楽になれると思います。介助などを受ける人にとっては、間違いなく「善」なのですから。
・きまり? サービス?
美術館の入館料、介助者の分を払わなくてよかったというエピソードが書かれていましたが、それがその美術館のサービスなのか、それともそういうきまりがあるのかはよくわかりません。何なんでしょうね?
こういうあまり「わざとらしいサービス」は、気にいらないのですが、払わなくていいならまぁいいでしょう。
・電動車椅子
実は不満がいっぱいです。重すぎるし、スピードも出ないし。
アメリカとかには、軽くてかつ安定してて、スピードも時速8キロとか出る電動車椅子があるそうです。
日本では道路交通法により、時速6キロ以上の電動車椅子は製造できないようです。
・地震など災害への対応
この前も比較的近い震源で地震がありました。あの時は研究室にいて、不安定に積み上げられているものが落ちて来やしないかと心配しました。
自分の部屋では、本棚を壁の横木にひもで縛りつけたり、対策はしています。
大きな地震になると道路もペデもぐちゃぐちゃになり、避難するのは困難でしょう。他の人も自分のことで精一杯で、手助けどころではないでしょう。(と、言い切ってしまうのも寂しいですね。わかりません。)
結局そういう時に一番先に死ぬのは、自分のような人なのかなと半ばあきらめています。まぁどうにかなるでしょ。どうにもならなかったら、それまでですよ。
普段の通行だけでなく非常時の避難の時にも、通り道の自転車の駐輪は困りますね。私は「これ困るんだよね」といいたそうな顔をして、車椅子で自転車を蹴倒していくようにしているので、皆さんは倒されないようにして下さい。
「つくばでは『自転車=車椅子』で外出しやすい」と書いた人がいましたが、学内の道路が支障なく通れるようになったのは、つい最近のことです。それと「車椅子=歩行+自転車ー階段昇降」だと思います。
・(感情表現など)機械に頼りすぎないか
質問をそのまま書きます。「自分の感情等を機器で代返するようになったとき、機器に頼りすぎていると感じることはないですか。」
トーキングエイドはあくまで、感情表現の補助でしかないと思っています。イントネーションのないこの声で、感情を表現しきれるとはとても思えません。
顔やしぐさ等が見えない電話での会話、特にそれを楽しみたい時にきびしいものがありますね。まぁ、手紙にしても電子メールにしても、感情を伝えるのは難しいですね。
声のイントネーションがしっかり出る発声システムを使って電話をしたら、そのへんがどう変わるかわかりませんが。(近々試せる見込みです。)
機械を利用するだけ利用して、ただ私の個性を失わないように気をつけていけばいいのでは。
ただし、機械に頼ると体は衰えます。電動車椅子を使うようになって歩く能力が落ちたり、トーキングエイドに頼るようになって声を出すコツを忘れていたりします。歩く方は時間を見つけて練習するようにしていますが。
・どのような環境でnewsを投稿しているか
学情のニュースグループ ipe.questionでしばしば見る名前を見つけてしまい、思わず「うっわー」と叫んでしまいました。言って下さればよかったのに…。
比較文化学類2年生との合コンのきっかけの記事は、ipe.question.hikaku-2の記事番号50番の記事です。機会があったらご覧になって、ほくそ笑んで下さいな。(^_^)
(最後の一言を捉えての少し強引な展開…、我ながらよくやったわと思っています。)
ipeへの投稿は、主に研究室からです。(^_^;) 家にあるパソコンからでも投稿できるのですが、そちらは設定の不備があって色々面倒くさいのです。
自宅で使ってるパソコンの機種は…へ? そっちの環境じゃないって?
研究室には、ワークステーションあ(パソコンの化け物)を1台私の専用機として置いてくれていて、車椅子の椅子の高さくらいのローボードを買って来て、その上にワークステーションとディスプレイとキーボードとトラックボール(マウスの中の玉が上についてる物)を置いています。車椅子に乗ったままで、両足をローボードの上に置いてキーボードやトラックボールを操作しています。
キーボードのキーの上には、ネックレスなどのビーズが貼りつけてあり、足でのタッチタイプがしやすいようになっています。ビーズを貼りつけるのは私のアイデアで、ビーズを貼りつける位置も自分なりに工夫しています。
自分の部屋では、畳を敷いてその上にパソコン一式を置いてその前にクッションを置いてそこに座って、両足でパソコンを操作しています。
いろいろとご声援の声も頂戴しまして、ありがとうございました。、
その他、私の過去の経験やら現在の暮らしぶりやら(笑)、もっと話を聞きたいということも書かれていましたが、そういう人たちは私とお友達になった方が早道かと思われます。
よろしかったら遊びに来て下さい。できましたら介助の方もよろしく。
また、名川先生に言っていただければ、電子メールを通して随時できるかぎりお答えしていきたいと思います。
もちろん直接電子メールを送って下さっても構いません。メールアドレスは、
koumei@jks.is.tsukuba.ac.jp です。
(WWWの私のホームページについてですが、研究室でサーバーが立ち上がっているのですが、自分のホームページを作成する時間が取れず、とてもお見せできる状態ではありません。)
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