質問・意見に対する答え(第4回分)




前回からその兆候はありましたが,そろそろ皆さんからの意見が爆発してきました。意見のバラエティが出てきた。また率直な,あるいはズケズケとした書き方が出てきた。初回は似たような感想が多かったのに。
これは嬉しいと同時に冷汗モノでもあります。時間節約のつもりで始めたコメント付けが時間を食うようになってきている(^^;;;  当然,他の仕事が疎かになりつつあります。楽しんでるんですけどね。
コメントしたくても割愛することも出てきました。ごめん。
#凡例;文中の不等号(<,>)はメッセージを特定対象者に発しているとき,あるいはメッセージに方向性がある場合に用いています。ご留意ください。




●どうして手当てなどに地域差があるのか

→このような制度には,国がやると決めて地方に委託し,お金も出す事業と,地方自治体が独自に設置している事業があります。後者は国から助成を受けられればいいですが,そうでなければ自分の自治体の財政状況に依存して実施されることになります。そして,もちろんその自治体の政治的状況も絡むし,住民意識にも左右される。さて,茨城やつくばは?



●国民年金に加入することへの疑問・ためらい

1)障害者年金をもらうことはないだろうから→そうでもないと思いますが?
2)将来的にもらえる額の少なさが予想される→詳しくは知らないのですが,そのような予測もありますね。厚生省の担当者はやんわり否定してるみたいだが。私もこれが民間の保険であれば加入しないでしょう。でも,わが国の所得補償制度をどのように存続していくのかを考えると,何とかして欲しいと思ってしまう。

#ちなみに,国民年金制度に老齢基礎年金・障害基礎年金の受給が含まれているので,「国民年金と障害基礎年金の両方に加入」という言い方はありません。先週の資料を確認してみてください。>書いた方



●生活保護における他人介護加算について

1)他人介護加算は申請か?→そうです。しかも細かい書類の添付とかなりの催促,粘り強い交渉が必要なことも少なくないようです。ちなみに,1990年4月の資料では,特別基準にまで上げた人が全国で50人とのこと。
2)一般基準と上位の基準(知事承認特別基準・厚生大臣承認特別基準)は併給可能か?それとも基準自体が上がるということか?→併給ではなく,もらえる基準額が増えるということです。

◆参考
全国公的介護保障要求者組合:生活保護他人介護料特別基準受給の手引書.1990.


●生活保護を受給する障害者の例を見たが,あの額は高いのでは?

→考えようです。介護者を当然の権利として認め,これを保障するために,必要な個人に対して金銭的に給付していると考えれば,逆に不当に少ないということも出来るかも知れない。ただ,一般の人に妥当だと認めてもらうことはまだ出来ないかもね。
じゃあ,障害者じゃない人の生活保護受給額が少なくないかというと,これも「生活ギリギリ」の額というわけではない。それよりもう少し高額かも知れない。これは口頭でも言いますが,憲法25条に根拠を置くもので,あそこで言う「健康で文化的な最低限度の生活」の具現化された金額ということも出来ます。
「自分で稼ぐわけではないのだからギリギリの金額以上もらうのは不公平だ」という意見もないことはないでしょう。事実,保護されずに生活している世帯でもっと月収が少ない人もいる。じゃあ,彼らより少なく受給額を設定するべきか? この考えは古くより「劣等処遇の原則(principles of less-eligibility)」と呼ばれており,過去の救貧対策はこの原則に則って行なわれていたこともありました。しかし,当該世帯の貧困の原因が個人的なものではなく社会的な問題であると認識されるに至ってきたこと,また,ギリギリの金額だけ給付したのでは,本来の目的であるとこっろの「当該世帯の経済的自立を援助する」ことは出来ないこと,などの理由から,劣等処遇原則による対策は姿を消すのでした。
#げ,長くなっちまった...(^^;;;



●生活保護全般についてもう少し詳しく知りたい,またいろいろトラブルもあると聞くが?

→いい加減長くなったので口頭でお伝えします。



●制度などについて実際には障害のある当事者には情報が行き渡っているのか?

→あたりまえのことですが,当事者でない人よりは知っていると思います。また,知らない人もいるでしょう。しかしこのような制度のほとんどが申請主義(自分から言いださないと何もやってくれない)なので,自助組織などによる公報活動などが行なわれることになります。



●カリフォルニア大学バークレー校について

→名にし負う,IL(Independent Living)運動発祥の地としてシンボライズされているところではあります。だからこそというのでしょうか,先週の資料で示したような学生学習・生活支援システムについても高い水準を保っているようですね。



●プリント資料類配付方法に関する要望

1)3つのブロックに分けて配付するほうが早い
2)全員に配付されたことを確認してから話し始める
3)すべての資料を始めに配付しておく
4)枚数を伝える
5)資料に通し番号を付ける

→一気に要望,というよりこれは抗議か?
前回はやると言いながらできないことがあったねえ。やってみます。



●TTYとTDD

→第3回でTTYという言葉を紹介しましたが,TDDの方も併せて示さなければ不十分です。
【TTY】 a traditional term for telecommunication device for the deaf (TeleTYpe).
【TDD】 a modern term for Telephone Device for the Deaf; a telephone device for the deaf.

TTYは従来用いられていたテレタイプを指しますが,これにコンピュータを利用するようになったものがTDDのようです。すなわちTDDの方が広い概念ですが,アメリカのろう者の中には発音・聴き取りの難しさからTTYという用語を好んで用いるという文化もあるらしい。
このTDDが注目されるのは,前回触れたADA (Americans with Disability Act) において,TDD利用者と一般の電話利用者との間のメッセージ交換がすべての電話会社に義務づけられたことにあります。この交換サービスは「電話リレーサービス (telecommunications relay srvices) 」と言われます。電話会社のオペレータがそのサービスを行うということです。当初はAT&T社その他のボランティアサービスだったそうです。
ちなみに,このサービス利用によって,一般の電話利用よりも電話料金が割高になるかどうかという質問がありましたが,これは確認できませんでした。恐らく料金は変わらないのではないでしょうか(単なる推量ですが)。

◆参考ホームページURL
<< http://deafworldweb.org/pub/english/glossary.html >>
◆参考文献
八代英太・冨安芳和編:ADAの衝撃.学苑社,1991.



●日本ではADAに対応するような法律制定の動きはないのか。

→そのような運動がないことはないです。日本障害者協議会(JD)などに見ることが出来ます。



●まだある,共用品(聴取者のみなさんが寄せたもの)

電話,FAX,AT車だって立派な共用品なのではないか。
自動販売機で車イスの高さで操作・取りだし可能なものが出てきた。
缶ビールなどのプルタブ横の「ビールです」などの浮き出た文字,あるいは点字



●竹園などのアクセシビリティーについて調査したことがあるが,不備なところが目立った(バス停に点字ブロックがない,交番の前に大きな段差があるなど)。

→マップは出来ました? 出来ているのでしたら教えてください。



●先週のホテルの重いドアの話は?

→米国です。ワシントンDC。




●障害者対象の設備を設置するにあたって,改造などは金銭的にたいへんか?

→例えば「障害者住宅整備資金の貸付」制度が国にあります。各自治体での事業なども場合によっては加わるかもしれません。
また就労にあたって,事業主は雇用する障害者の労働環境を整備するための各種助成制度,あるいは融資制度があります。
公共施設,あるいは不特定多数が利用する施設(デパートなど)の建設時に対する整備指針の設定あるいは優遇措置などがあったと思いましたが,資料による確認ができませんでした。



●大学構内の環境も必ずしも良いとは言えない。改善のための動きはあるのか。

→細かい点での改善はあるかと思います。しかし今のところは一般の設備改善要求の枠組みでの対応なのかもしれません(つまり優先順位の高いほうから対処される)。運動などによる動きはありません。ただし今月末に障害学生・関係教官などによる懇談会は開催されるようです。先日,案内が来た。自発的なのかな。
個々に気付いた点は,事務区などを通して要求していく必要があります。みなさんが気付いた,不備な点は? 具体的な場所と,状況と,改善方法は? ところで,2学A棟入口に自転車をいい加減に停めないように。あれで迷惑する人は数知れないんだから。



●大学内の急勾配の坂を,車椅子使用者はどうしているのだろう?

→うーーむ。
・押してもらう。可能な人は自力で。
・降りるときはグローブなどして命懸けでブレーキング(冗談になるか?)
・使わない。



●学内バスに車椅子使用者乗降用のリフト付きバスが走っていた

→あれは私が学類生のとき(だから最近ですね),同じクラスの奴が使う必要があるというので,担任教官が掛けあって設置してくれたものです。利用に当たってクラスのメンバーが交代で介助者としてローテーションを組んでやっていました。懐かしいなあ。



●障害者関係(法規を含む)をまとめた適当な本はないか

→あったら私も欲しい。社会福祉士や介護福祉士対象の双書の中にある「障害者福祉論」のテキストはそれなりに過不足なくまとまっていると思います。ただし編者・著者の志向によってそれぞれある程度の特色は持っていますが。
そのほか,資料を配布するときに適当に参照するのが以下の本などです。
◆テクノエイド協会編:体の不自由な人びとの福祉.中央法規.(毎年改訂)
◆社会資源研究会編著:福祉制度一覧.川島書店.(現在5訂版)



●「友達から始めませんか」なんて簡単にできますか?

→前回の回答において中村氏介助ボランティアの勧誘文を書いたのは,聴取者の学生さんです。私は転載しただけです>意見をくださった方    なお,私の考えは次のコメントと関連させて書きます。



●「介助は自分のことは自分で責任を持てる人が...というコメントがあったが,私はそうは思いません。(中略)介助をする人が完全である必要はなく,give & take の関係なのではないか」という意見に対して...

→まずはご意見ありがとう。口頭で話せないのは残念ですが,このような形であれ,率直に意見交換できることは嬉しい。お礼として私も少し burst しちゃいましょう(^-^)
私も介助者が完全な人で,介助される人が一方的に「助けてもらう人」である必要はないと思います。私の言う自己責任とは,何であれ介助契約を結んだ人はその契約に対して社会人としての責任くらいは持て,という程度の意味です。背景として,約束の時間をすっぽかしたりドタキャンを「平気で」やったりする事例を認識するからです。介助者−被介助者関係には「契約」「ボランティア」「ともだち」などいろんな関係があり,併存することも多い(むしろ普通?)ので混乱するかもしれません。しかし併存はしますが,例えば「ともだち」であることで「契約関係」をないがしろにするような「取り違えと甘え」はありえない。ですから「ふつうのひとづきあい程度のジョーシキは持てよな」ということです。これはひとづきあいなんだから。

#それと「自分の責任」発言には,「自分を大切にしろよな,自分をきちんといつも見つめていようよ」という意味もあります。他人に与えることの多い(多すぎる)人の中には,もっとも大切にすべき自分をないがしろにしている人も見かける気がするので...。ね?

#ちなみに「障害者(と共)に学ぶ」という言葉が書いてありましたが,特に相手が障害者だから学ぶということじゃないですよね?



●障害者と健常者がわかりあえるかどうか。わかりあえないとしても,それは障害があるからとかではなく,人間として,人間なら誰だって完全にはわかりあえないからではないのか。

→コンテンツ(初回配布)で示したように,この辺は関心があるので,改めて話したい。



●健常者がどこまで障害者の視点,立場を理解できるか,ということが大切ではないかと思います。特に重度の障害のある人とか。

→そうですね。そしてそれと同時に,障害者自身の主張と行動を私たち majority がどれだけ正当に受け止められるかという,態度形成・確立も忘れてはならないと思います。



●共用品などの商品開発では,誰がアイディアを出すのか?

→花王のシャンプーは「パーソナルケア商品開発部」だそうです。またトミーの「ハンディキャップ・トイ研究室」,キヤノンの「福祉機器貢献室(名称不正確)のような部署を設けているところもあります。さらにアップルやIBMのように,assistive techonology ニーズに応えるためのセンターを各地に開設している会社もあります。興味のある人はネタ本を読んでください。

◆E&Cプロジェクト編:「バリアフリー」の商品開発.日本経済新聞社,1994.



●ハンディキャップの違いによって「住みよい街」って違うのでは(車いす利用者には段差はバリアでも視覚障害者には道路と歩道を識別する手掛かりになる,など)

→この件についてニフティサーブというパソコン通信で過去に議論されたことがあったんだが,検索できなかった。個人的には,だからと言ってそこで話が終わったんでは困る,と言う気がする。立場が違えば利益も事情も違うのは当然だけれども。必要なのは何とかしようという意識と態度と行動だから。



●民間企業の福祉に対する貢献がまだ少ないような気がする。海外ではやっているらしい。

→企業などの社会貢献活動を「フィランソロピー」,文化的な貢献を「メセナ」と言うそうです。欧米では個人単位でのボランティアが日本よりも地についていますし,企業も存在理由のひとつとして社会貢献が認識されている。もちろんPRもあるが。
関連して,企業自身が活動せずとも,市民活動団体や福祉法人などの非営利組織(NPO)に資金援助・助成・寄付することで間接的に貢献することも盛んです。ところが日本では税制上の優遇措置がそう簡単には適用されないことから(合衆国などではとても簡単),あまり行なわれていないのが現状です。先の国会での関連法案提出は見送られてしまったし。
→このまえに障害児者家族支援サービスに関するカンファレンスに出席したとき,サービス運営の困難さが話題になりました。すると他の参加者から「おまえの国にはトヨタとかマツシタとかいっぱいあるじゃないか。なぜそこから資金援助(寄付)してもらわないんだ?」と怪訝そうにされたのが印象的です。これについてはまた改めて話ができると思います。

◆出口正之:フィランソロピー.丸善(丸善ライブラリー,新書),1993.
◆金子郁容:ボランティア もうひとつの情報社会.岩波書店(新書),1992.
◆NPO関連は改めて。



●障害者の雇用について。等級別雇用者数などの調査はあるのか。

→重度障害者が2人分にカウントされちゃったりするような制度のある国ですから,そういう調査はあるかもしれません。妻がずっとそっちの業界だったので私の手元にもあるかと思ったのですが,見当たりませんでした。ちょっと捜してみます。ただ,手帳の等級と雇用のされ易さは必ずしも関連しないのです。



●全介助の知人が今度アパートで独り暮らしを始めるとのこと。手伝ってはもらえないか

→ごめん,連絡が遅くなっています。また改めて連絡しますので,私どもでよろしければお話しさせてください。




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