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回答:第1回 (中村彰氏分)

中村氏より回答をいただきましたので,お伝えします。昨年も同じようにやっていただいたのですが,それよりも気合が入っている感じで,タジタジです。
文中の佐藤さんについては既に許諾済みということですので,授業中に在所を明らかにしていただきましょう。(^-^)

■コミュニケーションの手段
○トーキングエイド
僕が先日の授業で使っていた機械を,「トーキングエイド」といいます。製造元はナムコンという会社で,値段は99,800円です。購入の際には「(コミュニケーションのための)タイプライター」(?)とかいう名目で,行政から補助が出て3〜4万で買えます。 発声ができてそこそこ気軽に携帯もできる機械は,現状ではこの機種しかないので,仕方なく普及しているといったところです。 発声のリピートはできるのですが,ある種の訂正作業にものすごく時間がかかったり,時々操作にいらいらしてしまいます。 発声も一文字ずつで,抑揚もありませんね。

○発声ソフト
漢字かな混じり文を抑揚をつけて,発声するソフトが販売されています。単語ごとの抑揚の指定もできて,発声の不具合もある程度修正できます。多少不具合は残っていますが。

○僕の研究の位置付け
日常会話においては,「はい」「うん」「いや」「まぁ」などの返事や,「ありがとう」「ごめんなさい」などの定型の文,はたまた「おいおいおい」などのつっこみの文句が多く登場します。 抑揚をある程度指定できる発声ソフトにそれらの言葉を,素早く渡して「会話」をスムーズにできるようにする,いわば「中継役」のインターフェイスを開発しています。 それらの言葉の選択を,キーボードを使わずにマウスやトラックボールの操作だけで可能にしています。 その目的に付随して,日本語の単語約5万語を同じように配置して,これもマウスやトラックボールの操作だけで選択していって,日本語の文章を入力してしまおうということもやっています。

○その他のコミュニケーションツール
筋ジストロフィやALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)が進行してしまった人,つまり,指先や舌先や目の周りの筋肉しか思うように動かせない人のために,動かせる部位に対応させた On/Off 式の入力スイッチと,そのスイッチ一つで主にひらがなの入力ができる機器・ソフトが多種多様に開発されています。
 (参考HP:国際福祉機器展'97 出展製品一覧 http://www.hcr.or.jp/)
 (筋ジストロフィの説明: http://www.saigata-nh.go.jp/nanbyo/pmd/)
 (ALSの説明: http://www.health-net.or.jp/nanbyo/disease/examine/dis008.html
英文: http://www.ALSA.org/WhatIs/)
 (福祉機器展@東京ビッグサイト 行きたい人います? 一緒にどうです?)

○一入力スイッチによるコミュニケーションツール
一つの On/Off 入力スイッチだけで,どのようにひらがなを入力するかを説明します。50音表が計算機の画面上に表示されており,行ごとにカーソル(ターゲットを示すもの)が横に一定の速さで走査していきます。目的の行に来た時にスイッチを押して(すぐ離して)行を選択します。次に,その選択された行の中でカーソルが縦に走査していき,目的の文字にカーソルが来た時にスイッチを押して,文字を選択します。 この行程の繰り返しなのですが,当然入力ミスもあり,時間が相当にかかりストレス・疲労も大きいです。 それでも,コミュニケーションがとれるというのは大事なことです。


○リハ工学カンファレンスに参加して
8月末に長崎県の佐世保で,リハ工学カンファレンスというのが開かれて,僕も先程の研究の報告を発表しに行ってきました。 道中も駅の対応など面白いことがあったのですが,ここでは割愛。 発表は,先程紹介した発声ソフトで読み上げたものを,テープに録音して持って行って,発表しました。質疑応答はトーキングエイドで行いました。 そこで聞いた発表から,ALSの患者向けの意志伝達システム「伝の心」というものを少し紹介します。日立製作所の製品としてこれから発売する予定だそうです。 50音表上でのカーソル走査によるひらがな入力に加えて,定型短文の呼び出し,漢字の変換が容易にできるようです。 加えて,テレビ・ビデオなどのスイッチの操作ができる「環境制御機能」,外出している介助者に対してポケベルを発信する機能などがあります。 今までほとんどのコミュニケーション支援システムは,DOS 上で動作しており将来性に乏しかったのですが,これはWindows95上で動作します。このシステムに投資しても,損はないかな…というのが,気に入っています。(Macintoshのことは…日本では目立ちませんねぇ。) 値段も,パソコン・ディスプレイ・プリンター・入力装置がセットで,50万を予定しているようで,結構適当な値段だと思います。

○障害者が計算機を持つこと
計算機という道具は,障害が重度になるほど有効活用されるべきだと思います。 文字入力機能を利用しての周りの人とのコミュニケーションはもちろん,文章を執筆したり絵を描いたりする創作活動をする道具として活用できます。 計算機をネットワークにつなぐと,遠くの同じ興味を持つ人と手紙をやり取りしたり,議論や雑談の場所に文章を投稿したりできるので,いろいろな人とのつながりができます。計算機のネットワークを通すと,障害のあるなしに関係なくやり取りすることになるので,障害という偏見が取り払われてコミュニケーションをすることができるので,また違った人間関係ができ上がります。 そのようにして計算機を使うことによって,人間関係を作っていく喜びを得ることができ,体をほとんど動かせない寝たきりの生活でも「生きがい」を見つけることができます。

○パソコンボランティア
カンファレンスでの議論の中で,障害者(でなくても言えることですが,)が計算機を使うにあたって必要なものは,計算機本体・入力装置・半径1100m以内に住んでいる計算機に詳しい友人,という話が出ました。 計算機の設置,ソフトウエアのセットアップ,使用中のトラブルの回避などは,計算機を知っている人でないとなかなかスムーズにできるものではありません。 そういう計算機周りの世話を親身になってしてくれる人も,必要だそうです。そういう人たちを,「パソコンボランティア」というそうです。
(参考HP パソボラ・ネットワーク他: http://www.vcom.or.jp/project/jd/Network/project-ja.html)
先程の日立の人も,システムの設置や細かい設定は,ボランティアに頼らざるを得ないということを言っていました。

■僕自身のこと
○普段の計算機の使用
僕は両足の指でキーボードを打っています。マウスカーソルの操作などはトラックボールを使っています。キーボードは,部屋に畳を敷いてその上で使っています。 トーキングエイドも普段は下に置いて使用しています。 先週の講義の時間,「あんなに長い時間話していて疲れないんですか?」と心配してくれた方がいましたが,全然平気なのです。僕はおしゃべりが好きなようです。 2〜3時間の電話とか,ざらですから,ねぇ? (って,誰に同意を求めている?(笑))

○外出時のコミュニケーション手段
僕は先程書いた通り,トーキングエイドをあまり気に入っていないので,通学時など電動車椅子を使って移動している時は,トーキングエイドを携帯していません。 代わりに,車椅子の後ろのポケットに「文字シート」と呼んでいる50音表が書いてあるシートを入れており,それを足の届く場所に持っていてもらうと,文字を足の指でさしてお話ができます。 「今度見かけたらあいさつしようと思います。」と書いてくれた人がいましたが,僕はあなたの顔を知りません。(^_^;) 学校などで出会った時は,お互いが急いでないなら,文字シートで立ち話でもしましょうか。
○僕の障害の種別
脳性マヒです。アテトーゼ型(って言うのか?)です。 身障者手帳には「1種1級」と書いてあります。
(「1−1」と書くとスーパーマリオを思い出す。(謎))

○僕が受けて来た教育
僕は,地域の小学校の普通学級に入り,中学校もすんなり普通校,高校も普通の都立高校に受かり,通学しました。そして工学システム学類に推薦入試で入学しました。 小学校は半ば強引に入り込んだ感じで,高校の通学も毎日車での送迎をしてもらったり,いろいろ大変でしたけど,普通教育を受けて来て本当に良かったと思っています。 リハビリテーションのために,早退をしていた時期もありましたが。

■介助のこと
○夕飯の献立

献立は僕が決めます。僕は食べることが大好きで,小さい頃はTVの料理番組をよく見ていましたっけ。僕の部屋にはレシピの本が3冊転がっており,その中から選んだり,「肉じゃが」とか「スパゲッティ・カルボナーラ」とか適当に指定することもあります。 買い物も好きなので,介助の人と一緒に売店で買い物をします。 介助の人が「無理」と言ったものは,作らせません。その辺はレベルに合わせて(笑)。 僕の部屋で料理を作って,「修業」している人も多々見受けられます。(笑)

○研究室内での介助
僕は今,研究は自分の部屋のパソコンで進められています。担当教官の先生とは,電子メールで連絡を取りあっています。 それでも授業やゼミがある時は,学校で昼食をとる必要があったりします。 研究室内で作業をする必要がある時は,なるべく介助者に研究室に来てもらっています。専門的な作業や機器のセッティングなどは研究室の人に手伝ってもらい,僕自身も計算機に向かって作業している時が多いので,介助者には「何か読むものを持ってくるように」と言います。 来てくれた介助者は,「これでいいんですか?」と物足りない顔をして帰りますが,僕の休憩の際の飲み物の補給などは,作業をしている研究室の人より介助者の方が頼みやすいんです。研究室の人も僕の用事で作業を中断する心配がないので,落ち着いて作業できるそうです。 これに関しても,研究室の人と喧嘩っぽくなったり,いろいろな経緯がありまして,こういうやり方に落ち着いたわけです。

○僕からの介助論議の導入
介助者をボランティアに頼っている日本の現状が,このままでいいわけはありません。介助の仕事を「(アルバイトとしてでも)ちゃんと稼げる仕事」として,確立させなくてはいけません。その辺の講釈は,先生にお任せしますが。 この夏休みはずっと筑波にいました。皆さん帰省してしまって,人手不足に拍車がかかり,少し辛い思いもしました(けど,その時はその時で自分だけで解決できるやり方を見つけて,それが「自信」につながります) 。こうやって介助者が足りないのは,僕自身が効率よく介助者を獲得しきれていなかったり,宣伝活動をなまけている時もある自分に,原因があるんだと自分に言い聞かせる事にしています(トイレがらみの汚物処理の問題とか,介助者不足の問題だけじゃないものもありますが)。 その考え方だと,介助者をうまく集められない人は一人で生活できないということになります。内気とか人格的なことでも決まってしまう事になるので,よくない考え方だと思います。 昨年の秋以来,障害学生懇談会(後述)の発足をきっかけに,僕と僕の介助者・介助グループの性質(笑)が客観的に見えてきました。 筑波大学生がからんでいる介助グループ,僕の知っている範囲で僕のを含めて3勢力…もとい3グループあります。それらはそれぞれ魅力があり味があり,それぞれ人を引き込んでいるようです。 この夏休みを終えて,僕は僕の方で「友達にしてしまう型」のやり方を徹底して,どこまでできるか・どこが限界なのかをやってみようという気持ちになり,勧誘活動に一層熱心になろうとしています。学園祭終了後が一つの転機のようですが。「いってみよー60人」の次は「いってみよー90人」でしょうか。




☆介助要員理想人数の計算式 (90人の根拠…単位などは即席で作りました。)

(朝介助一人+夜介助二人)×30回/一月=90(人回/月)

本当は朝も二人いた方が楽なのですが…。
全員が月1回のペースで介助に入る場合。1(回/月)で割ります。90(人)ですね。 単位換算も合ってますね。(^_^)
全員が月2回入る場合。2(回/月)で割ると。90(人回/月)/2(回/月)=45(人)。 単純化のため極めて平滑的な仮定ですが。
(月1回希望の要員が多いのが現状です。)
(友達として見るなら,月1回ペースで介助の時間だけ会う,ってのも結構…何て言うか物足りないものがありますけどね。)

ということで,ナンパまがいの介助勧誘も「ありあり」でやっています。(笑) ところで,先週の「逆ナンパ」発言の際,つい実名を出してしまいました。本人には謝っておきます。(名川先生と僕と両方で仲の良い人なので,つい…。)

■「すみません」という言葉について
僕の母親も「すみません」をよく使っているので,実際は普段使われてても,そう気になりません。「挨拶程度」のものなんでしょうね。佐世保に一緒に行ってくれた人も,「挨拶程度の事で言ってしまう」と言っていました。 ただ,焼き肉屋に一緒に行った時は,「すみません」の声が普段の元気な声とあまりにもかけ離れていたので,僕もその時は「どうしてそう卑屈になるかなぁ」と思ってしまったわけです。 その人とも話し合ったのですが,その人は「私は(自分の事は自分でやってしまう性格なので)人に助けられることが少ないから,助けられることに対して申し訳なく思ってしまう。」「その点,あきらさんは助けられることで生活しているから,気楽に助けを受けることができる。」というようなことを言っていました。これが「価値観の違い」というものでしょうか。

■見かけによる判断
僕はある回転寿司の「焼サーモン」にはまっており,その回転寿司にもよく行くんですが,そこでのお話(どこの寿司屋か,わかる人にはわかる(笑))。 隣に座っているおばさんが親しげに話しかけて来て,介助者を通してお喋りした事がありました。その時の介助者がこの講義の受講者の一人なのですが,その時のおばさんの言葉づかいが子供向けっぽくて気になったと書かれていました。 確かに,僕は体は小さくて細くて,顔も締まりがないので(自覚してます。はい(笑))幼く見られてしまっても仕方ないのでしょうが。(^_^;) ,また「障害者は幼稚だ」という偏見もあるかもしれませんね。 「(当時)23歳で,理系の大学院生なんですよ。」と年齢と身分を言ったら,態度ががらっと変わるのかもしれませんね。あれ? 言っても変わらなかったんだっけ? 「あれほど明確に会話するとは思わなかった」とか「頭の中は普通なのに,見た目に何を考えているのかわからないので不思議だ」とか書かれてましたが,「人は見かけによらず」って言うじゃないですか。それだけの問題じゃなくて,あなたたちの持っている障害者一般に対する偏見が関与していたのでしょうかね。

■僕にとって障害とは何?
一言で言うと,個性の一つにしか過ぎません。僕自身も障害につき合っていくわけですし,他の人も僕の障害もひっくるめてつき合ってくれるわけです。 「それじゃいけない」という意見もあります。 確かに,個性というものだけで,例えば交通機関が半額で利用できたり,映画が1,000円で見れたり,ディズニーランドのアトラクションでは並ばずに優先的に入れてもらえたりするのは,おかしいことなのですが (と,言い忘れた事をさりげなく主張してみる(笑)) 。
このことに関連して,僕は障害者・健常者という言葉の使用を,極力避けています。


○"仕方ない"
「"〜だから仕方ない"で済まされるのは辛くないだろうか? 仕方がないで済んでしまえば,その先は何も望めないのではないだろうか。」という質問があって,最初意味が取れなかったんですけど,例えば"肢体不自由で〜ができないから仕方ない"という意味に取っていいのでしょうか? 出来ない事があっても,また別に出来る事を探せばいいのではないでしょうか。 また,出来ないという事もそう悪い事とは限らないんですよ。例えば,一人でまともに食事が出来ないという事で,毎日「あ〜ん」な状況が存在してしまうわけで。(笑)

■筑波大学内の障害学生同士のつながり
日日4年に斉藤新吾君という男の学生がいて,彼も運動障害を持ってるんですけど。 同じ宿舎の斜め向かいの部屋に住んでいるにしては,介助者集めの同業者のライバルとしてお互い牽制してしまうところがあり,そんなに仲良しではありません(笑) 。それはさておき…。

○障害学生懇談会
昨年の秋,障害学生懇談会という会が発足しました。「学生の有志による障害学生をサポートする活動が苦しい状況にある。大学による公式の確実なサポート体制が必要ではないか。」というのが,発会の動機です。聴覚・視覚・運動障害を持った学生が集まって話し合って,何か一緒にできないかという事で…今何をしようか模索中の段階です。 会員数(名簿仮登録)は,聴覚6名・視覚・運動各5名・非障害学生2名です。 さらに詳しく知りたい方は,僕が代表になっていますのでお問い合わせ下さい。連絡先は,「僕との連絡」の項目に書きます。

○障害学生の数の把握
懇談会でも障害学生の数を把握しようとしたのですが,各学群の事務に問い合わせても「わからない」と回答がありました。 障害があっても何不自由なく生活できてしまうくらい軽度だったり,障害を隠している学生もいるので,正確な数を把握できないようです。

■学校とその周辺の設備
思えば僕の意見(存在?)をよく聞いてくれて,学校の設備もよくなりました。

○ペデ
以前は,一の矢から学校のペデにもかなりの数の凸凹があって,それでも電動車椅子はタフな奴で乗り越えていってくれました。 とある年度末に,心障学系の先生から「学内の道路の整備を行うので,直すべき箇所を指示してほしい。」と連絡がありました。ここぞとばかりに,不満を言いました。それで今のペデがあります。先週の講義の時間,ペデ自体に関しての不満は言わなかったでしょう(笑) 。

○学内バス
学内バスもリフト付きにも関わらず,当初は「乗る時は介助者も一緒に。」と言われていたのですが,移動のためだけに介助者を拘束するわけにもいきません。必要な時は無理を言って一人で乗っていました。 そのことを当時の工学システム学類長に相談したら,学類長は親身になって聞いて下さって,バスの運営側にかけあってくれました。 そのおかげで一人で気楽にバスに乗れるようになりました。バスのリフトも手動車椅子対応の窮屈なものから,電動車椅子対応の大きなリフトに付け替えられていました。 関東鉄道のバスにこういうリフト付きバスを要求するのは,会社の規模的に無茶なのでは? しかし,この前久々に東京に帰省して,リフト付きの私鉄バスが普通に走っているのを見て驚いたのですが…。いい時代になりつつありますねぇ。あ,僕東京の新宿の西隣の東中野の生まれです。

○工学システム学類棟
工学システム学類棟も,予算を注ぎ込み過ぎだと一部で不評ですが,エレベーターも身障者用トイレも設備は完璧と言えます。僕が工学システム学類に所属していたからではないでしょうか。今もよく使っています。 国際棟も最近やっと,バリアフリーな建物になったようですしね。
■僕との連絡
友達になりたい・話したいということが沢山書かれていて,僕は非常に嬉しいです。 僕は通信手段を3つ持ってます。トーキングエイドを使っての電話,FAX,e-mailです。TEL/FAX.0298−51−4923

e-mail:koumei@jks.is.tsukuba.ac.jp
(障害学生懇談会の問い合わせ先も,ここです。)

介助グループに入らない友達付き合いというのも,ありだと思っていますので,お気軽に。介助に関する問い合わせも受け付けます。 時間の都合がとれる方は,介助の方もよろしくお願いします。朝の介助要員と,月木の介助要員が不足しています。都合に合わせて月1〜3回入ってもらっています。男女ともに歓迎します。 火曜の3時限目の時間に,僕に昼食を食べさせてくれる人を急募しています。水曜3時限目も,昼食介助をできる人はいるのですが,もう一人くらいいるといいですね。 トーキングエイドでの電話の聞き取りの自信がない方は,代理連絡先になってくれている佐藤さんがちょうどこの講義を取っています。この時間が終わったら,彼女に連絡先を聞いて,後ほど連絡を取って下さい。

僕と話したい方,介助者とも友達になりたい方,いい具合に「介助コンパ」というのをやります。
9月13日 土曜日 19:00〜 灯禾軒 中村の名前でとっています。一次会の会費は無料にします。 参加される方は,佐藤さんに言ってくれると助かります。




では また。

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筑波大学修士課程 理工学研究科2年 工学システム分野 構造工学系 山海研究室所属
中村 彰 (e-mail:koumei@jks.is.tsukuba.ac.jp)

 



回答:第1回 (名川分)

今回は中村氏に回答をしてもらいましたので,私がやることはあまり無いと思います。補足や,彼の分担ではないところを書き入れます。
第1回と比べますと,今回は人間学類が少なく(カリキュラムの関係もあって),その分多彩な顔触れになっています。楽しそうです。それから質問・意見の半紙を読んで気づいたのですが,介助をやっているとかこんな関りがあるなどの「そのスジ」系の方がチラホラいらっしゃるのですねえ。出来ればいろいろと意見を交わしたいと思います。でも「なんの気無しにとっちゃった」人にも関心をもって聞いていただけるようにしていきたいものです。



●最初,慣れなくて少し聞きづらかったけど,すぐ慣れました。またお話聞きたいです。
どんな感じの授業で行くのか,まだ良く分からなくて不安だけど,頑張りたいです。

→今回幾らか内容についても話します。今後ともよろしく。

●私自身,障害についてとても重いテーマとしてとらえていたのですが,もっと身近で親しみを感じました。

●中村さんは,私が障害者の人にもっていたイメージとは違い,明るい方でした。

●今日まで,足の指と機械を使うことで,これほど明確に会話をなさる方だとは全く知りませんでした。
→つきあってみればどうってことなくわかることなんですけどね。これを機会にいろんなふうに出会いを広げて行ってください。

●時間が経つに連れて会話を聞き取ることに神経を使わなくなった。先生と中村さんとの対話が何とも言えないいい味が出ていて障害抜きにしても面白い内容だった。
→これは自分への褒め言葉として。そのうちにだんだんキツイ言葉も出てくるんだから。

●私は他学の履修ですが,身近に障害をもつ人がおり,そういったことからも興味があり受講しましたが,他学では履修不可なのでしょうか。
成績はシラバス通りでしょうか。
→申請さえしていれば問題ありません。昨年もいろんなところから来ていただきました。成績はシラバス通りです。


介助を得ながらの生活

●夏休みに市内で同じような障害をかかえた人が一人で生活している家に行き,ボランティアを行ったが,やはりそこでも40〜50人ほどのひとがローテーションで泊りも行っていた。

●私は月に1〜2回,脳性まひの女性の介助をしているので,今日の中村さんの話は参考になりました。もう少し聞きたかったです。

●多くのボランティア,理解者がいることに驚きました。まだこの世の中捨てたものではないですね。しかし,彼は恵まれている人であって,生活が自立できる人は少ないと思います。
→市内で介助を受けながらアパートや一軒家で生活している人はつくば市内ですと2人,いやあの方も含めると3人? 茨城県内ですと水戸や日立にわずかずつ。土浦市にもいらっしゃいます。そして筑波大学内に中村氏や先述の斉藤氏など。ただし,これは運動に障害のある人を数えただけです。
 このような人たちは全国におり,いろんな情報やノウハウを交換しながらより良い生活を求めて活動しています。でも少ないといえば少ないかもしれない。というのは,こういった生活をしたくても出来ない人がいろいろいるから。こういったふうな生活を自立生活(Independent Living; IL)ということがあります。2回目の今日はこれについて紹介していきます。

●介助という人手を全くのボランティアで補うのはおかしいと思うし,かといって全て有給の仕事にしてしまった時,今の私たちはうまく対応できるのだろうかという疑問もあります。う゛ーん,どうなる日本。
→おいおい,既にその話題に行っちゃうのか?(^^;;  中村氏も要請していることですので,みなさんの関心が高ければ(質問・意見に書いてくれれば),いずれ介助論やボランティア論にに進めていきたいと思います。例えば中村氏の提出した話題に乗ってみるとか?


「すいません」と「ありがとう」

●最近,肢体不自由の方々とのキャンプに参加しました。自分の担当になった人は,成人された方で,知的な遅れはありませんでした。自分は普段,子供の方を相手にしているので,最初,言葉のかけ方に戸惑いましたが,普通の友達のように接したつもりです。その方は,何か介助するたびに“すいませんね”とか“申し訳ないです”を連発するので,何かやりにくい感じがしていました。今日の話の中では,全く反対のことを言っていたので,関係づくりはその方がしやすいだろうな,と思って聞いていました。ボランティアとは何かと,非常に感じさせられました

●最後の,“すみません”と“ありがとう”の違いを気にしていることがなんとなくはわかるが,そんなに気にすることはないように思う。

●介助者の女性が“すみません”と言ったのは,自分のやるべき仕事を手伝ってもらったことに対する気持ちかもしれないと思う。日本人はこの二つの言葉を一緒くたにしているむきがあるが,私も好きではない。

●介助も,人対人のぶつかり合いの場面であるから,個人個人の価値観のずれも生じるのはやむを得ないと思う。”すみません”と”ありがとう”をほぼ同義に使う人もいるし,全く使い分けている人もいると思う。介助している場面だから,”すみません”が出てしまったとは,一概には言えないと思います。

●私も障害者の介助をしています。彼と行動しているとき,私もよく“すいません”という言葉を使います。自分は“ありがとう”という気持ちで言っているのですが,“謝ることないじゃないか”と彼に言われたことがありました。難しい所だと思います。

●介助する側が介助される側の人の気持ちをくみ取れないということはよくあるのですか?“ありがとう”と言う場面で“すみません”とつい言ってしまうことはよくあると思うけど,そういうことは,気まずくなったりするんでしょうか?

●supportする側とされる側の関係について,私はする側の観点からされる側がやはり気兼ねしてしまうのではないかと思った。しかし,中村さんの“ありがとう”と言う話で,関係が少しわかった。障害観についても聞きたかった。
→「すみません」と「ありがとう」の話は,複数から意見をいただきました。中村氏の方にもコメントがありますが,普段はあまり気にする必要もないことなのでしょうね。大抵の場合,気まずくなんてなりませんてば。
 しかしほんと,「すいません」って言いやすい言葉だ。その分,「ありがとう」って言いにくい言葉になっているのかもしれません。もっと「ありがとう」が多くなったほうが暮らしやすいかもしれない。
 ところで,この話題について事前に中村氏と話していたときには,実は彼が「ありがとう」を言った(メッセージを送った)ことの方に焦点を当てようと目論んでいました。彼は介助を受けるけど,でもありがとうを返すことで手伝ってくれた人たちに気持ち良い体験を提供した。「そんな気持ち良さを分けるってことが私に出来ることのひとつなのかもしれない」と。でも私の進行術の不手際で,その部分がうまく伝えられなかった。


中村氏のこと,補足

●中村さんは何の障害をもっているのですか?
コンピューターは足の指で操っているのですか?

→彼の言う通り,脳性まひです。大ざっぱに説明しますと,出生前あるいは出生前後(1年まで)に脳に何らかのダメージを受け,それによって運動機能にまひが生じた場合,これを脳性まひと言います。ダメージの受け方によってさまざまな状態となります。
 コンピュータはキーボードに突起をつけるなどの工夫をして足で操作していました。ポインタは市販のトラックボールでOKです。こういうデバイスのことについてはまた改めて話題にしましょう。


先ずは友達

●私も介助という形に参加したいと思っています。

●今日初めて,中村さんのお話を聞くことが出来て,“お友達にして欲しいです。”と言うのが,感想(?)です。車椅子,介助,もっともっと深刻に思っていました。

●それはそうと,おもしろい人だと思ったので,話をしてみたい。
→「介助者コンパ」へどうぞ! もしスケジュールがあわないなら遊びに行くのもいいですね。介助なしでも構わないそうですし。

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第2回分の参考文献 (第1回ではない,今回の分の参考書です)

安積純子・岡原正幸・尾中文哉・立岩真也:「生の技法 増補改訂版」藤原書店,1995.
三ツ木任一:「障害者の福祉」放送大学教育振興会,1993.
定藤丈弘・岡本栄一・北野誠一(編著):「自立生活の思想と展望」ミネルヴァ書房,1993.
定藤丈弘・佐藤久夫・北野誠一(編):「現代の障害者福祉」有斐閣,1996.


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