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回答第8回
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【評価について】
出席及びレポートによって行うものとします。レポート課題は以下の通り。2つとも書いてください。
★課題 :@授業で話されたテーマについて。
扱うテーマはひとつでも複数でも構わないが,ひとつのテーマにつき1枚以上は使うこと。
A本授業を評価せよ。100点満点で何点か。その理由を明確にし,改善策を提案せよ。
注:使用文献は明記すること。
★枚数 :A4版レポート用紙3枚以上
★〆切 :12月2日(火)
★提出先:第二事務区レポートボックス
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【移送サービス】
●「しろたく」って何のことですか。あんまりそういう言葉を知らないので教えてください。
→タクシーやバスなどは正規に免許を受けて緑色のナンバープレートを交付してもらったうえで対人運送業務を行っているのですよね。正確なところは知らないけど。ところが白いナンバープレートのままで不特定の人を運び,しかも報酬としてお金をもらうことがあります。先程の免許の話からすれば,これは正規ではないですよね。このような自動車のことを略して「白タク」と言っているということだと思います。
●お金の問題は,何をするのにも出てくることである。ビデオの高橋さんがあれだけのお金をもらえてびっくりした,というように先生はおっしゃられたが,私は良いと思う。利用者がいて,その人達がその条件でよいというのだからいいのではないだろうか(といったら白タクはどうなってしまうのか)。年会費を払っても,利用したい時に利用できないような場合よりか良いと思う。
●高橋さんが行っているようなことがもっとみなの意識に広まればいいなあと思う。私は「福祉は金になる」と思っている。サービスということを考えると,ニーズは非常に多い。で,もう少し企業などが参入してくれば,競争原理もはたらいて質も高まるんじゃないかなあ。
ただ,ホントにお金のためだけ,となると問題だと思うけど,ある程度こういう考え方で入ってきてもいいのでは,と思う。
●今日見たVTRは,以前TVで見ました。needsが多いと思われる移送サービス,ありそうで今までなかったのか…というのが私の感想です。それに介助の資格をもってる人なら安心だと思いますし。お金を払ってまでたのみたくない!という人は少ないと思います。この移送サービスをもっと増やし,充実させていけばいいなあ…と感じました。
●今日のビデオで見た高橋さんのように,良心的に移送サービスを行ってくれる人はとても歓迎されるべきことですが,いわゆる「ぼったくり」のようなことがおこる可能性もあるわけで,早いところなんらかの規準なり法律なりができた方がよいと思いました。
●介護を仕事にするのはいいことかもしれないけど,どこまでお金をとるかは難しい。介護してもらう側はしてもらわなきゃいけないから多少高額でも払ってしまうだろうから。そこにつけこんで利益重視のサービスが増えてほしくはないですね。
●自分も,民間のサービスにおける問題は,それを利用した悪質なものがあると思う。行政がそれをコントロールできればいいのだと思うが,それを恐れて,行政はそのような民間サービスに対する取り組みを積極的に行わないのではないだろうか?
→「移送サービスについては原則賛成だが民間サービスであるところの不安,行政などによるコントロールの課題などが指摘される」というところにまとめられますでしょうか。この業界も環境整備に向けて全国組織を形成中とのことですので期待したいと思います。
ところで利用者に付け込んで悪質業者が出るのではないかとの懸念,理解できます。地域から必要に応じて発生した比較的小規模な事業が活動しているうちは心配もないのですが,地域から遊離して展開した事業経営と,末端までの経路が遠く複雑な提供システムの中でサービス提供が行われるようになったら要注意でしょうね。
【やれなかったNPO】
●今日,プリントで配布されNPO,行政,企業についての文献の出典はどこですか?また,こうした企業とその他団体等(施設も含む)のパートナーシップということについてのおすすめの本はありますか? 今回,次回の講義では,もうこのことについてとりあげないとおっしゃったので教えて下さい。
→希望としてはNPOの関りと日本での動きなどにも触れたかったのですが,時間が足りませんでした。
プリント右側の図1・図2は秋山(1995)からでした。左のNPO法案比較表は明治学院大学立法研究会(1996)でした。NPO関連の出版物は本当にたくさん出回っていますので,東京へ出たときなど大きい本屋さんへ立ち寄っていただければ必要な情報を入手することができるでしょう。また法案成立に向けて(あるいはそれを見越して)様々なイベントなども開催されています。インターネット上での活動も盛んです。とりあえず2〜3挙げておきます。ご参考までに。
◆秋山愛子:アメリカのNPOシステム−市民の考える公益性実現のサポートシステム.福祉労働,67,49-57,1995.
◆明治学院大学立法研究会:市民活動支援法.信山社,1996.
◆電通総研:NPOとは何か−社会サービスの新しいあり方.日本経済新聞社,1996.
◆千葉大学文学部行動科学科社会学研究室:NPOが変える!?−非営利組織の社会学−.1994年度社会実習調査報告書.
◆C's [シーズ]市民活動を支える制度をつくる会 web
pages (http://www.vcom.or.jp/project/c-s/)
【小規模民間サービス事業】
●現在,移送システムをおこなっている高橋さんは,それで生活していけるだけのお金をかせげているのだろうか。
実際一人でやっていれば,高橋さんが体をこわせばこのシステムは破綻する。今は利用者も増え,順調にいっているようにみえたが,あやういシステムだと思う。
→ビデオによれば,なんとかやっていらっしゃるみたいですね。開始当初は生活に不安があったほどだったけど。我孫子にある移送サービスの方は,当初顧客を増やしていけたけど,最近は伸び悩んでいると伺いました。それで違う事業も行わざるを得ないとか。
ご指摘の「その人限り」「あやういシステム」というのは,小規模民間サービス事業の場合にはよくある話です。複数の人でやっている団体だと「その人限り」ではなくなりますが,「あやうい」ことには変わりはない。しかし安定度では絶品の(むやみやたらという話もある)行政サービスでは対応してもらえない「狭間」をカバーしようと始まったことですので,やむを得ないところではある。そのために,様々な安定化のための方策を探る。マクロに見るならば,とても活気のある業界だと思いますけどね。
ところで,やはり高橋さんのように妻子がありながら,入所施設職員だったのを退職してこの夏に自分で一時預かり等のサービス事業を始めた人がいます。これまでこの種の事業を始める方々はいろんな理由から「(事業として)だめならだめでまた考えればいい」のように開き直れる方々が行っていることが多かったのですが(稼ぎ手が他にいるとか,あんまり生活を心配しなくていいとか,若くて独身だとか,相互扶助組織として始めるので負担が軽いとか),彼の場合はそうでもありません。しかし彼が成功すれば,新しいモデルと成り得ます。実際,少しずつ周辺に利用者が増え始めてきているところです。私たちも是非とも成功して欲しいと思って応援しています。
●行政サービスの利用が十分でない為に制度がすすまないという悪循環の話をきいて,笑ってしまった。
なぜ行政は,利用者が困っている実態が把握できず,スムーズに制度化がすすまないのだろうか。私にわからない困難があるのだろうか。民間で進むサービスの許可等に時間がかかることが不思議だ。必要とされているから民間で色々なことが進むのに…
→利用件数が少ないことを称して「ニーズが無いから事業としてもこれ以上の展開は考えていない」とは,時に耳にする言葉です。このような悪循環は確かに笑っちゃいますけど見過ごすことも出来ない。そういうこともあるので,利用者側としては「制度は使いまくって使い倒さないと良くならない。意見・要求・注文も言えない。」と言うことがあります。心に留めておいてください。ただですね,障害児者の短期入所制度のように使おうにもデメリットが大きくて使えなかった(現在は幾らか改善されているにせよ),のようなこともあるけど。そんなときはさっさと自分たちでつくっちゃおう,なんてね。簡単にできればいいんだけどね。
【福祉ミックスの考え方】
●公的サービスは必要最低限ですべての人々に,そしてインフォーマルサービスで高水準のサービスを,という話だったと理解していますが,範囲の狭いインフォーマルサービスでは地域によって質に偏りができてしまうのでは? また,インフォーマルだと自分でできる範囲以上のことをムリしてでもやってしまおう,というところもあると思うのですが,これは補助金だけではカバーできないのでは?
やはり公的サービスが中心を担うべきだと思うのですが,「お役所的態度」で弾力性がない,という現状をまずは変えるべきだと思います。
●民間のサービスが出てくるのは良いことだと思うが,公的サービスにもっと頑張ってほしいと思う。
→先ず,インフォーマルは家族や近所のおばちゃんなどが頭に浮かぶサービスですので,そこに補助金を提供して公的サービスを補完させようと言ったつもりはありませんでした。インフォーマルにそこまで求めるのは無理がありますしするべきでもない。
で,民間サービスと公的サービスとの比較は前回話した通りです。ご指摘のようなメリット・デメリットも含まれます。ですから公的サービスが中心となって欲しいし,行政が民間を当てにして自己努力を放棄することがあってはならないと考えます。しかし行政に要求しても十分にやってくれないところからアンチテーゼとして発生してきたのが昨今の民間サービスだと思います(営利企業のサービスはその後)。
その意味では「先ずは行政の現状を変えるべき」というのは順番としては理解できても,それだけでは終われないと思うのです。
●民間のシステムを導入し,補助金を出す場合には,管理,監督面での大きな足かせができるのではないでしょうか。金銭以外の援助の充実が大事な気がします。
→補助金の導入は,ご指摘のように管理・監督面での制約がいろいろと入ります。そのために,ちょっとしたことで自由な活動を行えないような場面が出てくる恐れもあります。例えばサービス供給範囲の限定とか,提供時間の制約とか,なんとかかんとか。以前話しましたflexibility
の点からすれば,後退ともとれる方法ですね。でも長期的なサービス提供を考えると安定性も必要であり,こうしたことで事業者・経営者は悩むことがあります。そのために敢えて補助金を取らないところもあれば,制限の緩和(自分たちの事業をそのまま認めて欲しい)を行政に交渉するところもあります。また逆に(逆でもないんだが),補助金を得ることは行政側がサービスニーズを公的に認めるということですから,その意味を重視して補助金を得られるよう運動しているところもあります。
●市場システムの欠陥,「クリーム・スキミング」とは何ですか?
→宿題。m(_._;;m
→これ,わかりました。自分の都合の良いようにおいしいところだけを選んで構成してしまうことのようです。民間サービスでは特にそのようにサービス構成がなってしまいがちである,という指摘のようですね。
●今日は確かに難しい話でした。今までこの種の話はさけておりました。自分ができる範囲のことをしてれば,難しいことは考えなくてもいーやと思っていたためです。
しかし,個人のできることは限界があります。だれにでも,いつでもというわけにはいきません。行政の力も必要だし,民間団体の力も必要でしょう。そのためには,難しい話も避けては通れません。
けどやっぱり,難しいですねー。周囲を見ると,居眠りの人がいつになく多かったような…。
→仕方がないなぁ(苦笑)。授業演出やパフォーマンスが悪かったことでもあるでしょう。具体性に欠けるときも興味を引けない。でも丁寧・具体的にやると時間が足りない。難しいです。
さて,今回は話題を変えまして「障害(者)文化(disability
culture)」及び古くて新しい「障害学(disability
studies)」の紹介です。今までよりさらに抽象性をパワーアップしてお届けしますので,ご期待ください!(って,困るなあ)
【その他】
●先生はいつも忙しいようです(プリントがなかったり,遅れてくる等がある)。ところで,そんなに忙しいのは学会とか出張のためですか。それとも学生に対応するために準備しているからですか?
先生は特に今週そうですが,千葉県での例を挙げることが多いように感じます(我孫子,柏,市川,君津等が挙がっていたように思う)。これは特に研究を進めているのがこの地域だからですか? あるいは筑波が近付くという便宜上?
→遅れることについてはごめんなさい。あまり詳しいことは言いませんけど,通常準備に充てている時間を突然の会議や相談対応,来客対応,〆切などに取られると,そのしわ寄せが授業に来ます。これで学会や出張があったらもっとひどいことになる。今は多くの時間をこの返信を書くために使っています。そしてこれに目処がつくと(つかなくとも)本時の構成を考え,資料を用意します。正直なところこの返信を書く時間は取り過ぎであると思っています(授業補完だとかインタラクションとかほざいてるけど,結局書くのが好きなのね)。…ということで,この授業に限って言えば,ぼーっとしていて「さて行くか」とおもむろに部屋を出るから遅れるのではありません。授業直前まで焦りながら準備してます。自分の時間管理が悪いことを遅刻の理由には出来ませんけど,わざと遅れているのではないことは理解していただければと思います(と書くと違う反応が出ることが予想されるなあ)。
ところで私の話が柏・松戸などになりやすいのは,私の調査領域(フィールドとか言ったりしますが)がその辺りだからです(東葛地域という)。自分の住んでいるところでもあるし,前回話したようなユニークな制度も持っている。また比較的条件が整っているところから新規事業の立ち上がる瞬間に立ち会うことも出来る。
つくば市・土浦市周辺も関心はありますが,まだみなさんにお話しできるほどには知らない。でも興味深い萌芽は見つけることが出来るみたい。ガイドヘルプのようなことを自発的に行うボランティアがあったり。
●私の出身である東京,品川区でもいろいろなサービスが行われており,ガイドブック(のようなものに)に目を通したことがあるが,金銭的な面について考えたり,調べたりすることは,その時にはしなかった(気にしなかった)。今日の授業を機につくば市や出身地の,その点のことをよく調べてみたいと思う。また,老人福祉的な話になってしまうが,叔母が,寝たきりの祖父のためにホームヘルパーを区にお願いしたところ,あまりのずさんなやり方や態度にあきれ,追い出したことがあった。そうした人員の養成も,行政側が責任をもって,制度などで管理すべきだと思う。
→ヘルパーについては幾つかの「級」を設け,ヘルパー業務を行う場合には一定時間の研修を受けるようになっているのではないかと思います。そのためのテキストもあるし,研修講師をやっている人も知っている。しかし,そうは言っても上述のような人が見受けられるという話は,これまでにも聞いたことがあります。最近もそれで裁判を起こした人の話を聞いたことがある。最低限,トラブルの生じないような程度のやりかたは身に付けておいて欲しいと思うし,行政の管理監督責任を明確にするべきかもしれない。
先日知ったある民間介護業務請負団体(先回から話していたような,金は取るけど小規模な団体)は,その辺のプロ根性がしっかりしていて感心しました。無論,民間のすべてが良質なわけではないのですけど。
●ビデオでみた高橋さんが印象的でした。自分が直接障害者の人と関わっていなくても,現状に疑問を持って,しかもただ考えるだけでなく,自ら行動するというのはなかなかできることではないと思います。もし一人一人がそういう目をもつなら,現状は変わってゆくような気がします。
私は,そういった問題を自ら感じたこともないまま,たくさんの知識,問題を頭につめこんでいます。ただの頭でっかちになりそうで,こわいのです。
→そんなことを言ったら,たいして業務に携わっているわけでもないのに偉そうな顔をして面前で話さなければならない私はどうなっちゃうのよ(^^;;;;;
私の妻は社会福祉士の資格を取るために準備中です。それで聞いた話ですが,自分の不得意な分野を勉強しているときなどテキストを読んでもピンと来ないことがあっても,現場に出て関連業務に携わる機会があるとスーッとわかってくることがあると言います。じゃあだからといって理解できない分野の仕事を何でもやってみなければならないかというとそれは無理な話です。とりあえず頭で学んだ(ように思える)ことがらをひとまず整理しておいて,将来必要になったときに慌てて参考書を読み直すくらいがせいぜいでしょう。それで良いのだと思います。現在,社会福祉士・介護福祉士の資格をとって働き始める人たちも同じようなものだという話を聞いたことがあります。必要な場面に遭遇して改めて身に付けていく。
話を戻しますが,将来機会がありましたら,ちょっとだけでも関連する領域に関っていただければ,そこを通して身に染みてくる知識もあると思います。「講義形式」でしかみなさんと付き合えない私が言えるのはせいぜいそんなものでしょう。
【期待の星】
●今後,高齢者たちを受け入れる施設自体の考えが変わってくることは間違いない。それは自宅介護が増えてくるということである。そうなれば,移送というのが大変重要になってくる。私たちはそのことを深く考えていかなければならない。それは移送が大変困難なことである。私は将来,工業デザイナーを目指しており,今後こうした問題を解決できる機器をデザインしなければならないと思う。もちろん,その機器を使用する人の立場を考えて。
→assistive technology や universal design
の思想と実践は近年たいへん注目を集めているところですね。時間があれば紹介したかったのですが,もう終盤戦。期待してますのでみんなの役に立つデザインをしてください。