第3章 考察

No Child Left Behind法の中で規定されている 英才教育制度では、従来の英才教育制度では十分に 扱われていなかった、社会経済的に不利な状況にあ る子どもたちのことが意識的に取り上げられていた。 この点はNo Child Left Behind法の基本方針と一致 している。

一方で、今回調べた結果、各州における英才教育 制度は予算が削減され、規模が縮小されつつあること がわかった。もともと英才教育制度は、連邦の指示で はなく、州や学校区が主体的に取り組んでいたもので ある。ところが今、州や学校区ではNo Child Left Behind 法の目標を達成するために、社会経済的に不利な状況にあ る子どもたちへの対応が優先されている。今まで英才教 育制度に充てられていた予算が、No Child Left Behind 法で重点的に取り扱われている、社会経済的に不利な状 況にある子どもたちへの教育予算に再分配されている。

 しかし、はたして両者は両立できないものなのだろ うか。私は、英才教育制度を確保しながら、同時に、 社会経済的に不利な状況にある子どもたちを援助す ることができるのではないかと思う。

今回は取り扱っていないが、マサチューセッツ州では AP試験に関して低収入の生徒には授業料の減額をしている という。ここでは、制度として存在する英才教育制度を、 運用面で低収入の生徒を援助している。私は制度として 存在するものと、それをどう運用するかは別の問題では ないかと思う。もし英才教育制度そのものがなければ、 どの子どももその制度を利用することができなくなる。 英才教育制度が削減されることは、子どもたちが受けら れる教育の選択肢が減ることを意味するのではないだろ うか。今の教育に望まれていることは、そうした選択肢 を減らすことではないだろうと私は思う。そうではなく、 選択肢は確保しながら、授業料減額など運用面で工夫をし、 子どもたちの教育ニーズに応えていくべきではないだ ろうか。

終章 今後の課題と参考文献

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