まとめ
アメリカ合衆国は、長年慢性的な教員不足という問題 を抱えおり、教員免許状に等級をつけ、下級の免許状を多く 発行することで対応してきた。そして教員の職能成長への取 組みは、そうした下級免許状から上級へと上進をはかるため の手段として発展していった。そのため、職能成長は教員の個 人的な問題として捉えられ、大学において個別に講座を受ける、 という方法が主流となっていた。
しかし、1980年ごろより、教員の質が学校教育に与える 影響が重視されるようになり、職能成長は重要な教育政策の課 題として捉えられるようになっていった。こうした流れをNCLB法 は受け継いでいるといえる。つまり、大学という、実際の教育の 場と切り離されたところではなく、より実践にもとづいた職能成 長計画の実施が推進されるようになってきたのである。さらに、 同法では職能成長の取組みに関するアカウンタビリティを果たす ことを重視しているが、この点も、教員の職能成長を教員個々人の 問題ではなく、政策として取組むべき全体的課題として捉えている ことを示している。
考察
日本では、アメリカ合衆国と異なり、教員の職能成長は国の教育政策の
重要な位置を占めてきた。しかし、行政主導の研修がその中心となるなど、教
員の実践を踏まえたものになっていない点に関しては共通している。
そして、日本においても近年、教員の職能成長計画の見直しが図られている。
例えば2001年度より導入された10年経験者研修においては、教員評価を行い、そ
の結果に基づいて職能成長計画を立てることが規定されている。
しかし、教員の職能成長に関するアカウンタビリティについての取組みは まだ十分とはいえない。アカウンタビリティについては近年議論が進められ、実践 が広まっている。教員の職能成長に関する取組みについても、学校経営の重要な要 素のひとつととらえ、アカウンタビリティを果たしていくことが今後必要になってく ると考える。
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