はじめに


 現在、日本の教員免許制度においては、教職には高度な専門性が必要とされるという観点から,相当免許状主義 (教員は,教育職員免許法により授与される免許状を有する者でなければならない。免許法第3条第1項)が採られており,教員養成は大学での養成を原則としている。しかし、中央教育審議会は、平成14年度答申「今後の教員免許のあり方について」のV「特別免許状の活用促進」において、学校教育における社会人の活用の必要性について以下のように述べている。


「今日,学校教育において,情報化,国際化等の社会の変化に対応し,児童・生徒の多様な興味・関心に積極的にこたえつつ,児童・生徒に生きた社会に触れる機会を与え,社会とのかかわり方を身に付けさせていくことは極めて重要な課題となっている。このような課題に的確に対応していくためには,優れた知識・技術を持つ学校外の社会人を学校教育に積極的に活用していくことが必要である。とりわけ総合的な学習の時間の導入など「生きる力」の育成を目指す新しい学習指導要領の実施に向け,その必要性は増しており,教職に関する専門性を有する教員に加え,学校外の優れた社会人の力を借りることが不可欠となってきている。また,このことは学校組織について,我が国の社会システムに共通の弱点を抱えるいわゆる同質社会を揺り動かし,その活性化に資するものと考える。」


 上記をふまえ、本レポートでは、まず日本の学校教育における社会人活用の現状を概観する。そしてその上で、アメリカにおける、通常の4年制大学で行われる典型的な教員養成プログラムとは一線を画した、モンタナ州立大学提供の教員養成オンラインプログラムNorthern Plains Transition to Teaching(NPTT)プログラムについて検討し、日本の社会人に対して教員への門戸を広げる制度の在り方と可能性に関する知見を得る事を最終的な目的とする。また、そのための前提として、モンタナ州における学校、教員を取りまく実態について先に概観する。

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