1.日本の学校における社会人活用の現状



(1)特別非常勤講師制度について

 社会的経験を有する人材を学校現場に招致することを目的として,英会話等の教科の領域の一部又は小学校のクラブ活動等を担任する非常勤講師について,都道府県教育委員会にあらかじめ届け出て,免許状を有しない者を充てることができる制度(免許法第3条の2)

・ 身分が非常勤講師であり採用が容易であること,講師をする側としても本職を持ちながら教壇に立つことができることなどから、社会人を学校現場に活用するのに圧倒的な割合で用いられ、その数は年々増加している。(平成13年:11607件→平成17年度:21948件)

・ 担任できるのは、全教科の領域の一部に係る事項、クラブ活動、道徳の一部及び総合的な学習の時間の一部において特に必要があると認められたもの(家庭科の調理、英語の英会話、社会の郷土史等)のみである。

・ 原則として、各小・中学校1名の任用。担当できるのは年間10〜35時間。



(2)特別免許状制度について

 昭和63年の教育職員免許法の改正により制度化された,大学での養成教育を受けていない者に,教育委員会,学校法人等の推薦に基づき、学識経験者からの意見聴取を経て、都道府県教育委員会の行う教育職員検定により免許状を授与する制度 

・ 制度創設以来,平成12年度までの12年間で延べ44件しか授与されていなかったが、平成14年度中教審答申で、@授与要件の緩和(学士の学位を求めない)A授与手続の簡素化 B有効期限(5〜10年)の撤廃などが定められたため、平成15年度以降、授与件数は47,49,35,39と毎年40件前後となり、平成19年度に至っては、4月時点ですでに237件に達している。

・ 現在,活用できる教科の限定はなされていないが,社会人として培った知識・技能を活用するというその性格から,活用のニーズが大きい分野(工業,商業,看護などのいわゆる専門教科,英語,理科,社会などの社会での実務経験が強く生かされる分野、新たに創設された情報,福祉の分野など)に限定した活用の促進が推奨されている。



(3)特別選考について

 特別免許状は雇用されることが内定してから授与されるものであるが,公立学校の教員採用では,教員免許状を有さない社会人を採用するためのいわゆる特別選考を実施しているのは,現在,奈良県及び香川県しかない。つまり、各都道府県・指定都市の教員採用選考試験において,現在,ほとんどの県市では、教員免許状の所有を前提とした選考がなされており,教員免許状を持たない社会人に教員採用の門戸はほとんど開かれていないのが現状である。また,教員免許状を所有する社会人向けに,大学卒業後すぐに教職に就かず民間企業等に就職した者を対象とした社会人特別選考を実施している都県が存在するが,この場合,通常,教職の専門性を見るための学力試験が実施されている。仮に教員免許状を有する新卒者と同じ試験を社会人に対して実施した場合,社会人がたとえ教職に対する意欲,適性を有していたとしても,採用試験に合格することは非常に困難とされている。そのため、新卒者とは別の,例えばその者の民間企業等での勤務経験を適切に評価するような,社会人特別選考の実施が推奨されている。

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