米国における学校中退問題への対策



1.はじめに

  アメリカの現代教育が抱える大きな問題のひとつが、ハイスクールの中退である。 ハイスクール中退者の多くは不安定な就労状況と貧困状態に置かれているが、 高度な能力が要求される現在の労働市場では、その雇用機会はますます減少し、 ますます状況打開が困難になる危険にさらされている。 ときに低学歴の失業者は生計を立てるために不法な生業に加担してしまう場合もあり、 その存在は治安の悪化にも直結する。 この問題は教育制度という国家システムの欠陥を示しており、その社会的影響は決して看過できない。

  義務教育年限などアメリカ特有の教育制度や経済格差がこの問題にどのように影響しているか、 現状を検証するとともに、 中退を減らすため、あるいは中退者支援のための実際の施策のうち代表的なものをとり上げて概観する。 貧困と犯罪の再生産を止めるためにも学校中退問題の解決はアメリカの国家的関心事であり、 この状況を改善する可能性を探ってみたい。


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