0.はじめにーレポートのテーマと目的ー

 

教育制度論演習では2学期から、受講生が各々でテーマを設定してそれについて文献等を調べ報告するという形で演習が進められた。
今年は“学校選択”に代表されるような“選択”というキーワードでまとめられるようなテーマが多かった。  私はその中でマグネット・スクールという学校に注目した。

マグネット・スクールとは、十分な資源を背景に、特色のあるカリキュラムを打ち出し、 マグネット(磁石)のように生徒をひきつけようとする学校である。ただし、マグネット・スクールは基本的には人種統合を目的とする学校である。
マグネット・スクールは連邦補助金の後押しを受けて1970年代後半から80年代にかけて全米に拡大していった。
マグネット・スクールは自発的人種統合政策として社会的評価が高く、成功例としてボストンその他の事例がある。
マグネットスクールでは単に人種の割合を強制的にコントロールするのではない。 魅力あるカリキュラムがあることで自然と白人層子どもと と非白人層の子どもが同じ学校に通うようになるのである。

 

具体的には、blackの人口が多い学校区(アメリカでは特に都市の中心部)にマグネット・スクールをつくり、 魅力ある教育カリキュラム(例えば、理数科に重点を置いたカリキュラムや体育や音楽に特化したカリキュラム等)を用意する。
そのカリキュラムの教育を受けたい生徒は学校区内に住んでいる生徒であれば通学区を越えてマグネット・スクールに通うことができる。
通学区を越えて通学するための交通手段はスクールバスや公共交通機関の利用慮金の提供などの形で地方教育当局から提供される。
通学区を越えて生徒が集まることによって(多くの場合は、都市郊外に住んでいる白人層の生徒がblackの人口が多い地域にある 通学するようになることを狙っている)、人種差別撤廃が促進されることを狙っているのである。

しかし、マグネット・スクールには課題も多い。マグネット・スクールがエリート校化したり、学校区の資源を多大に 使用するため他の学校で資源不足の事態を招いている。
また、マグネット・スクールの設置と運営を握っているのは行政であり、親や生徒や教師が関与することがほとんどない。

このような目的を持ってつくられ、様々な課題を抱えているマグネット・スクールは現在どのように評価されているのだろうか。

今回のレポートではアメリカ連邦教育省が2003年に出した “Evaluation of Magnet School Assistance Program ,1998 Grantees Final Report”という報告書の内容からマグネット・スクールに 対する評価について考察する。

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