はじめに:本レポートの目的と構成

 学力低下が声高に叫ばれる今、ゆとり教育の見直しが始まっている。学校現場では習熟度別 クラスの導入などで、子どもに確実に学力をつけさせようという動きが見られる。 ゆとり教育や習熟度別クラスに対する賛否はあるものの、子どもの学力向上を図ることが日本の 重要な教育課題のひとつであることは間違いない。

 しかし、低学力生徒への学力向上支援システムは日本ではいまだ不十分であると言わざるを 得ない。それは、学力向上施策を学校のカリキュラム編成や教育内容の変更などで行っている段階であり、 低学力生徒への対応は現場の教師にゆだねられているからである。学校の授業についていけない ことが学習へのあきらめを生んでしまう可能性がある。また、学力を学習塾や家庭教師に求める 傾向があるが、そういったものに頼れる生徒ばかりではない。大前などの教育社会学者は、 親の経済力・社会的威信と子どもの学力における相関関係、「学力の再生産」を指摘している。 すべての生徒に学力を保障するという点で、低学力生徒への支援は日本でも今後重要になっていくだろう。

 アメリカの貧困層への教育についての研究は日本でも多く行われている。しかし、サプリメンタルエデュケー ョナルサービス(Supplemental Educational Services,以下SES)は、学校改善施策の中で述べられる こと(五島2004)はあるものの、具体的内容にまで踏み込んだ先行研究は少ない。 本研究はNo Child Left Behind法(以下NCLB法)で定められたSESについてその位置づ けと実施されている指導内容について調べ、SESの意義・可能性について考察することで、 日本の教育制度への示唆を得ることを目的としている。


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