第1章:NCLB法TITLETにおける学校改善とSES

 NCLB法の4つの柱となっているのが、「生徒の成績に対する説明責任を増加させる」 「効果的なものに集中的に資金を与える」「官僚制度を減少させ、柔軟性を増加させる」 「保護者に権限を与える」である。また、この法律のTITLEI(第1章)では、社会的に不利な 立場に置かれた生徒(低所得家庭)の学力成績を向上させるための多くの施策が定められている。 そのうちのひとつである学校改善プログラムとは、この4原則をもとに、生徒の学力向上に貢献 できない学校を公示し、学校改善のための資金を提供し、保護者の権利として学校選択やSESを 保障し、SESのプロバイダー(provider,以下提供者)には柔軟性を持たせるというものである。


1)学校改善

 説明責任を果たす方法のひとつとして、Adequate Yearly progress(以下AYP)の達成がある。 AYPとは、学校の年次目標として定める教育改善指標で、州統一テストでの成績目標が中心となって いる。AYPは州によって認定される。このAYPに失敗することが、学校が生徒の学力向上を果たせなか ったことを表し、そういった学校には以下のような対策がなされていく。

 まず、2年連続でAYPを達成できなかった学校は、改善活動が必要と判断される。 1年目の改善活動に入る際に、児童は同じ学校区内の別の学校へ転校することができる。 また、1年間の改善活動の後でもAYPを達成できなかった場合には、翌年からSESを受けることができる。 2年間の改善活動にも関わらず、4年連続してAYPを達成できなかった学校には、コレクティブアク ション(Corrective action,以下矯正活動)がなされ、学校職員を変えたり、新たなカリキュラムを 実行したりといった大きな変革が行われる。 それでもAYP達成にいたらなかった場合、学校改善は期待できないとされ、リストラクチャリング (Restructuring,以下再構築)が行われることになる。6年目は再構築準備期間となり、翌年に 再構築が行われる。この場合、学校はチャータースクールとして再開するか、学校職員を全て代 えるなどといった措置がとられる。学校改善とは、このように様々な取り組みを行い、 6年連続でAYPを達成できなかった学校は最終的には再構築されると言うシステムなのである。

以下は学校改善システムの流れである。

1yr)Miss AYP

2yr)Miss AYP

3yr)Miss AYP / School Improvement Yr 1 (choice)

4yr)Miss AYP / School Improvement Yr 2 (supplemental educational services)

5yr)Miss AYP / Corrective Action

6yr)Miss AYP / Restructure (planning year)

7yr)      / Restructure (implement plan)


2)両親の選択肢

 上記の様に、子どもの通う学校がAYPを達成できなかった場合には、両親は学校選択かSESを 選択できる。学校選択では、同じ学校区内の他の成績のよい公立学校(チャータースクールも含め る)へ子どもを転校させることができる。学校区はその通学にかかる交通運賃をTitleI資金から出 さなくてはいけない。 SESでは、子どもにチューター、放課後サービス、サマースクールなど様々な形態での学力向上策を 受けさせることができる。

 SESは連邦教育省ホームページで以下のような説明がされている。

・SESとは、生徒の学力をあげるために作られた追加的な教育機会である。

・その学校の2年間の改善、矯正活動、またその再構築においてTitleIスクールとなって いる学校に通っている低所得家庭の子どもは全員SESを受ける資格がある。もし資金が不十分な場 合は成績の低い子どもから優先的にサービスを提供する。

・両親がSESの提供者を選ぶ事ができる。必ずしも学校や地方教育委員会 (Local Education Authority,以下LEA)の推薦を受け入れないといけないわけではない。

・SESの提供者は非営利団体、営利団体、LEA、公立学校、公立チャータースクール、 私立学校、公立・私立の高等教育機関、宗教団体を含んでいるが、全て同等の証明基準を満たした 上で、同じ選択過程を経なくてはいけない。

・改善・矯正活動・再構築が必要とされている公立学校と、改善が必要とされている LEAはSESの提供者にはなれない。


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