第5章 考察と今後の課題


 第二次大戦後にアメリカの連邦奨学金制度は成立した。その後、高等教育の機会均等が国家としての目標となり、 そしてカーネギー報告で今後目指すべき奨学金制度のあり方が示された。それを元に現在の制度の根幹がつくられた。 本論で特に指摘したいことは「教育の機会均等」を目指すために個人援助を充実させた点である。 個人援助は機関援助に比べ、国家介入の度合いが少なく、かつ必要とする学生個人に援助を行うことで限られた予算の中で効率的に 機会均等という目標を達成できると判断されたためである。
 この個人補助は日本の高等教育における教育援助を考える上で非常に重要である。現在の限られた予算の中で、 日本国憲法・教育基本法に謳われている教育の機会均等を守るためには機関援助より個人補助の方がより効率的だと考えられる。
 今後の課題としては他のカーネギー報告書の検討を行い、なぜ現在のアメリカの奨学金制度が成立したかについて、 より綿密な検討を行いたい。また、今回1980年代以降の「教育の機会均等」から「受益者負担」へのシフトの詳細を述べられなかった。 よってこのシフトの理由、そして現在の動向について検討することも重要な課題である。

【引用・参考文献】
・Carnegie Commission on Higher Education, “Quality and Equality : New Level of Federal Responsibility for Higher Education” 1968
・College Board, “Trends in Student Aid” 2004
・社団法人日本私立大学連盟学生部会『新・奨学制度論 日本の高等教育発展のために』1991
・塙武郎「アメリカ奨学金政策の動向分析」『公益事業研究』第56巻 第1号 13頁〜23頁 2004
・塙武郎「米国における奨学金制度―その支給構造の総体―」筑波大学大学研究センター『大学研究』23号  209頁〜233頁 2002
・金子元久「アメリカの奨学金政策―その思想・構造・機能―」『高等教育研究紀要』8号 84頁〜94頁 1988
・岡田勇「アメリカ合衆国の奨学事業」『大学と学生』308号 1991
・文部科学省『平成14年度学生生活調査結果』 2002年 2006年2月2日取得 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/04/04040702.htm

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