5.給与との関係


本章では、2004〜2005年の州別平均的教員給与を前章で示した類型に基づいて分類し、類型別の平均給与を算出した上で、それらの数値から団体交渉権や争議権と教員給与の関わりを分析することを試みる。

@州法における団体交渉に関する規定(collective bargaining law)が無く、“right to work”law も無い州
$40,627(平均)
Acollective bargaining lawが無く、”right to work” lawがある州
$41,248(平均)
B州法にストライキ禁止条項があり、罰則規定もある州
$38,972(平均)
C州法にストライキ禁止条項があるが、罰則規定はない州
$47,851(平均)
D州法でストライキが認められている州
$47,235(平均)

もちろん、上に挙げた類型別平均値だけでは一概にこうであるとは言えない。各州の地理的要因、民族比率や経済状況、教員養成機関の充実度などさまざまな要因が教員の平均給与を左右していると考えられるが、このデータだけではそれらに関して何も情報が得られず、因子分析を行うことは不可能であろう。

しかし、平均給与の順位表の上位15州に州法に教員の団体交渉に関する規定がない州(@+A)がひとつも含まれていない一方、下位10州のうち過半数をこれらの州が占めていることは注目に値する。 州法に教員の団体交渉に関する規定がない州(@+A)の平均給与は全体的に見て低いといえるだろう。
この要因が何であるかは断言できない。このデータだけでは団体交渉権が立法されているかどうかということやそれらの実施が教員給与の高低に関係しているかを明らかにすることはできない。
しかしながら、州法でストライキ(争議)が禁止されている州(B+C)の平均給与が$43,421で、ストライキを容認している州(D)の平均$47,235を大幅に下回っていることも、先ほど述べた、州法に教員の団体交渉に関する規定がない州(@+A)は平均給与の順位表の上位15州にひとつも含まれていない一方、下位10州のうち過半数を占めていること同様、意味のある結果なのではないだろうか。

残念ながら、手法の不適切さや情報の収集および分析不足などからこの結果が有意かどうかを理論的に説明することはできなかったが、このように団体交渉権あるいは争議権と給与に何らかの相関性があるのではないかという視点から実際のデータを分類的に処理することは無意味ではないと考える。
この相関性を明らかにするためには、さまざまな要因に基づいて細かく類型化する必要があるのだろうが、それが可能かどうかは疑問である。

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