4.争議権に関する類型

アメリカでは団体交渉に関する法律の有無や争議権の可否などが各州によってさまざまであるが、教員による団体交渉は現在ほとんどすべての州で認められている。*1
しかし、関連する法律(州法)の有無や規定内容は州によって異なる。現在public employee(教員を含む)の団体交渉権に関して州法において規定がある州は35州であり、そのうち22の州が争議権を認めず、ストライキを禁止している一方、13の州ではこれを認めている。
また、ストライキを禁止している州のうち13州では罰則規定が設けられている。罰則に関しても罰金、免職・解雇から、禁固刑まで州によってさまざまな規定がなされている。*2


*1 文部科学省 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教職員給与のあり方に関するワーキンググループ(第10,11回)配布資料[資料1-1]U調査対象国の教員給与に関する概況(1)アメリカAa)労使交渉の状況 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/031/07012219/001/002.htm(最終アクセス2008.2.18)
*2 E-notes(Encyclopedia of Everyday Law)掲載2008年1月update by Michael Colasanti, associate researcher, ECS Information Clearinghouse http://www.enotes.com/everyday-law-encyclopedia/teacher-s-unions-collective-bargaining#state-local-provisions-governing-collective (最終アクセス2008.2.17)


先行研究では団体交渉権や争議権に関する州法の有無や、罰則規定の有無についてまとめた類型が見られなかったが、教員給与決定と団体交渉の関係を考察する上ではこれらの類型が必要ではないかと考え、Education Commission of the States statenote*3から得られる各州の団体交渉に関するデータを基に類型化を試みた。
@州法における団体交渉に関する規定(collective bargaining law)が無く、”right to work” law *4 も無い州  
例:コロラド州、ケンタッキー州、ミゾーリ州、ウエストバージニア州
Acollective bargaining lawが無く、”right to work” lawがある州 
例:アーカンソー州、ジョージア州など11州
B州法にストライキ禁止条項があり、罰則規定もある州 
例:インディアナ州、フロリダ州など14州
C州法にストライキ禁止条項があるが、罰則規定はない州 
例:ニュージャージー州、ワシントン州など8州
D州法でストライキが認められている州 
例:ユタ州、ウィスコンシン州など13州


*3 Carl Krueger,"State Collective Bargaining Policies for Teachers",Education Commission of the States statenote
*4 “right to work” laws prevent collective bargaining agreements from containing union security clauses that require workers to support and share the costs of union representation. Twenty-two states, mostly located in the southern United States, have a “right to work” law.

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