被災地の自治体本部の方へ
筑波大学人間総合科学研究科 松井 豊
日本ファーストエイドソサェティ 岡野谷 純
このたびの震災に際し、まずはお見舞いを申し上げます。また皆様におかれましては、県民市民のために、大変なご尽力をいただき、本当にありがとうございます。
今回の震災では津波を伴ったことからも、悲惨な現場での作業も多かったため、職員の方の中には、活動後に強いストレス反応を示す方もいらっしゃることでしょう。これは悲惨な現場で活動された皆様における普通の症状です。職員の皆様のストレスを少しでも緩和するために、各本部の皆様に心がけていただきたい点をご説明させていただきます。
①まず休養をとらせてください
職員の方にはいくら休憩をとられても、その先に延々と続く業務が待っているかと思います。それでも、休養をとることが大事です。職員ご自身も興奮状態になっていることが多く、自身の疲れを自覚できにくくなっています。そのため、休みをとらずに働き続けようとすることがしばしば見られます。しかし、この行動こそがストレス反応の一部であることがわかっています。
まずは休養を与えてください。どうしても眠れないときは、医師の処方に従って睡眠導入剤なども使うようにお伝え下さい。身体を休ませることが大切です。
②マスコミ対応は、組織のルールに従って
個々の職員がマスコミに個別に対応していると、徐々に疲労が蓄積し、フラッシュバックなどの症状が出ることがあります。職員が個別にマスメディアに出ることは避け、原則、組織としての対応を図り、マスコミが「職員個人の意見を・・」と望む場合には、職員本人の意向を確認した上で、記者会見の形式をとることをおすすめします。
③職員の中に生まれる「怒り」にご注意を
ストレスが高まると、イライラしたり、怒りを人にぶつける職員が出てくることがあります。ふだんより不満が強くなったり、人を恨んだり、逆に自分を不必要に責める職員も現われます。これはすべてストレス反応の一部です。職場に怒りが生じ始めたら、少しでもストレスを和らげる方策をお取り下さい。
④1ヶ月後にストレスチェックを
今回の震災に関する報道はかなり長く続くことが予想されます。発災当初は平常な気持ちで見聞きしている職員の方々であっても、繰り返される報道に接するうちに、徐々にストレス反応や症状が出てくるケースもあります。ある程度の時期になったら、職員の皆さんに別添のストレスチェックリスト(IESR)等によってストレスチェックをするようにご助言ください。1~3ヶ月後ぐらいに回答して頂き、この得点が高いとストレス反応が残っていると判断されます。ただ、この尺度は、回答中につらい体験を思い出させてしまうこともありますので、ご本人が望まなければ無理に実施はしないでください。
⑤職員のご家族には、厳しい現場に出られた職員の状況の説明を
職員のご家族も相当のストレスの中で生活をされていることと思います。まずは労っていただいた上で、職員の皆さんが県民市民のために厳しい状況の中で業務をされていたことをご説明ください。また、ご家族からも無理のない休養とストレス解消をおすすめいただくようお伝え下さい。
職員の皆さんは、ご家族のもとに帰った当初には強いストレス反応が見られることがありますが、その症状も時間がたつと徐々に消えていきます。もし、時間がたつにつれてストレス反応が重くなっているとご家族が感じられたら、カウンセラーや産業医の先生にご相談されるようにおすすめ下さい。「県や市は、職員とともに職員のご家族も守っていますよ」というメッセージは大切です。
末尾になりますが、本部の皆様、県や市の職員の皆様が、充分にストレスを和らげ、このたびの甚大なご経験を今後のよりよい県づくり市づくりに活かしていただけることを祈っております。
被災地の自治体職員の皆様へ
筑波大学人間総合科学研究科 松井 豊
日本ファーストエイドソサェティ 岡野谷 純
このたびの震災に際し、まずはお見舞いを申し上げます。また、皆様におかれましては、まことに大変な現場で活躍されていらっしゃいますこと、本当にありがとうございます。
悲惨な現場で活動をされる職員の方々に、活動中や活動後に現れる心理反応について、少しご説明をさせていただきます。悲惨な現場で活動された職員の方は、誰でも活動中や活動後に以下のような心身の変化を経験されることがあります。
a)興奮状態が続く:
興奮状態が続き、寝付けず気持ちが落ち着かなかったという症状はよく見られます。特に「もっとこうすれば良かったのではないか」などの自分を責める気持ち、「今自分が職場にいないと仕事が滞ってしまうのではないか」という焦燥感などが起こりやすくなります。
b)体験を思い出す:
折に触れ、現場のことを思い出し、フラッシュバックが起こることがあります。
c)思い出すことを避けようとする:
現場で起こったことについて、人に聞かれることも、思い出すことも煩わしくなることがあります。記憶が曖昧になったり、現場に関する報道も見たくなくなることもあります。出勤が苦痛に感じる人もいます。
d)周囲との摩擦:
周囲の人に対して、普段なら感じないような不満や怒りが急に出てきたり、人間に対する信頼感が急にわいてきたり、逆に極度の人間不信に陥る人もいます。
e)話せなくなる:
現場のことを話せる人が周囲にいないし、話しても分かってもらえないと思って、無理に胸にしまい込んでしまい、孤立感に囚われる方もいます。
これらはいずれも「惨事ストレス」と呼ばれるストレス反応の一部です。厳しい現場で活動した方には誰にでも普通に起こる状態です。ただ、こうした反応、特に上記のa~cの反応が長引いたり、重くて苦しさがとれない場合には、専門家に相談する必要があります。
こうした惨事ストレスを軽減するために、効果があるのは以下のようなことです。
1)まずは休養と休息をとってください。
災害に関わる仕事は際限なく生じますし、興奮状態が続いている(上記a)ので、休めない状態になりがちです。しかし、心身には自覚しないうちに疲労が蓄積しています。ともかく休養をとってください。今回の災害対応は長期戦になります。長期戦に耐えるためには、まず休息が必要です。もし、あまりに寝られないようであれば、医師に相談して睡眠導入剤を処方していただくことも有効です。
2)親しい方とともにすごして下さい。
家族がいらっしゃる方はご家族と、恋人やご友人がいらっしゃる方は恋人やご友人と、ともに過ごす時間をとってください。ご家族やご友人は、皆さんのことを気遣い、心配しています。その方たちと一緒に過ごし、少しでも愚痴をこぼせれば、気が休まります。また、不安を感じているご家族や恋人やご友人にとっても、安心できる場になります。
3)少し活動が落ち着いたら、一緒に活動してきた同僚や仲間と話し合う機会を作って下さい。
具体的な行動に関する報告だけでなく、そのときに感じたことなどを、仲間と話し合ってください。そうして話した後も、折に触れ、一緒に出動した仲間と話をし、励ましたり、支え合ったりすることが大切です。
4)ストレスのチェックをしてください。
今回の災害では関連報道が長く続くと予想されます。当初は何のストレスも感じていなかった方でも、報道に接するにつれて、ストレス反応を示すことがあります。1~3ヶ月ぐらいたったら、自分のストレス状態をチェックしてみてください(ストレスチェックリストとしてはIESRなどがあります)。ストレスが高いと感じたら、上司や同僚に説明して、各種専門機関への照会を依頼して下さい。ただし、ストレスチェックリストは回答中に辛い経験を思い出してしまう可能性がありますので、回答がつらいと感じたら、回答をしないでください。
5)事務や総務など内勤職の方や管理職は、現場の職員への対応に追われ、自身のストレスを自覚できない傾向があります。
事務や総務など内勤職の方や管理職は、現場の職員への対応に追われ、自身のストレスを自覚できない傾向があります。周囲の人に自分の苦労をわかってもらうことが難しい場合もあります。このように内勤職や管理職の方は、孤立感を味わいやすい面があります。そのため災害後しばらく経ってからストレスが現れる、「遅発性ストレス」が多く見られます。遅発性ストレスを予防するために、内勤職や管理職の方には、災害対応が落ち着いてから、それぞれ語り合う会をお持ちください。
マニュアルのダウンロード
以上の内容を各組織にあわせて修正してお使い頂けるように、ダウンロード用のリンクを記載しております。惨事ストレスケアの1つのやり方を示していますが、配布にあたっては、元の作成者名をどこかに記載していただければ、各組織の現状にあわせて適宜修正してお使いください
自治体本部向けリッチテキストファイル
自治体職員向けリッチテキストファイル