二章 チャータースクールとアカウンタビリティ



 本章では、アメリカ連邦教育省が2004年7月に出した、「The Impact of the New Title I Requirements on Charter Schools (Non-Regulatory Guidance)」、そして2004年8月に出した「Evaluation of the Public Charter Schools Program FINAL REPORT」をもとに、NCLB法がどのようにチャータースクールを規定しているのかを明らかにする。そしてNCLB法のアカウンタビリティの考え方がチャータースクールにどのように影響を与えたのか考察する。


第一節 アカウンタビリティについて

 アカウンタビリティの主要な目的は、良い学校を維持する一方で、悪い学校を排除し改善することである。各種の規制の大部分から自由になることが許されているチャータースクールと言えども、この原則は守られなければならない。チャータースクールがNCLB法の下において、各州のチャータースクール法に添ってアカウンタビリティを果たさなければならないことは規定されている(1)

「FINAL REPORT」では、チャータースクールがアカウンタビリティを果たすための過程として、@認可の過程、A監視の過程、が示されている。

 多くの場合チャーターの認可者は、特に@の過程でじっくりと審査する。なぜなら、一度開校された学校を閉校にすることの方が難しいからである。この段階で認可者は、特に低所得の児童が入校しやすいような取り組みが行えるよう、運営者に財政的援助を追加的に行うこともある。

 認可過程でアカウンタビリティを果たすために、認可者は透明性の高い情報公開が求められる。基準、審査過程などが公開される。またチャーターの更新時にも、申請時と同じように適切な手続きを行う必要がある。

 Aの監視の過程は非常に入り組んでいてどうすればアカウンタビリティが果たされているのか明らかにすることは難しい。この過程で重要なのは、どのような機関がどのような役割を果たすのかである。監視を行う団体も、公的機関であるのか、あるいは学校が独自に行うのか。また、テストを行うのかあるいは生徒に直接インタビューを行ったりするのか方法も様々である。アカウンタビリティを誰から求められていて、誰に対して果たすものなのかという、その入り組んだ中で、学校はアカウンタビリティを果たす必要性を認識し、実行に取り掛かることが大切である。

 その中でもチャータースクールを大きく規定するのが、NCLB法における「adequate yearly progress」(AYP)である。


 第二節 AYPとチャータースクールーアカウンタビリティの概念から

 AYP とは、州の標準学力テストによって査定される年毎の適切な進歩を定めた指標である。タイトル I によると、各州はすべての学校において、同様に高度な学力レベルを達成するため、それぞれ、AYP を定めなければならないとされている(2)。二年間その基準に満たなければ、学校改善計画が行われ、生徒には学校選択の自由が許される。更に3年目でも満たなければ、supplemental education serviceが行われる。そしてその次の4年目には実質的な改善措置、次の5年目に満たされなければ閉校計画の検討、6年目も駄目であれば、最終的に廃校となる。

大部分の州では、各学校が生徒の達成度合い、その州の指標をどれくらい満たしているのかなどに基づきながらAYPを作成することを、決定している。チャーターの認定機関は、各学校がAYPを満たすためあるいは、改善を必要としているか判定するための情報を、州の教育省から得ることができる。

 FINAL REPORTではチャータースクールと言えどもAYPを達成できない場合は、廃校になる可能性があることを示している。AYPにおいて、ひいてはNCLB法においては、アカウンタビリティの中心概念として、「学業達成」に重点が置かれているともいえることから、チャータースクールがそのアカウンタビリティを果たすために、「学業達成」という考え方から逃れることはできないだろう。

 次章では、チャータースクールにおけるアカウンタビリティの在り方について考察する。



(1)NCLB法 Title I, section IIII (b)(2)(K)
「The accountability provisions under this Act shall be overseen for charter schools in accordance with State charter school law.」

(2)NCLB法 Title I, section IIII (b)(2)(B)
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