三章 考察



 最後に本章では、チャータースクールにおけるアカウンタビリティの作用について考察する。

 前章で、アカウンタビリティの主要な目的は良い学校を維持すること、そして悪い学校を排除し改善することと述べたが、従来の公立学校ではアカウンタビリティは「公立学校制度」の内部で上からなされる官僚的統制に基づいて作動していると言える。しかしながらチャータースクールの場合には、対照的に、アカウンタビリティは大部分が公共的な(公共性が高い)市場により推進されている。公共的な(公共性が高い)市場では、学校の顧客と利害関係者が成功には報い、失敗には罰を与えて、何を改善すべきなのか合図を送っているのだ。ここでのアカウンタビリティ制度の主要な機能は、親、政治家、納税者、その他の人々に学校の活動とその効果に関する情報を提供することである。この市場においては、これらの情報を豊富に提供すれば、良い学校を繁栄させ、悪い学校を無くしたり改善させたりする方向に人々は行動する、と仮定されている。その結果として、伝統的な官僚的規制によるトップダウン方式を取り除くことができるだろう。

しかしながら、アカウンタビリティ制度が規制として働く―規則とその遵守に頼るようなアカウンタビリティ制度では、チャータースクールもその理念を十分に発揮することはできないだろう。学校の活動や資源の使い方を細かく管理し、不適切なことをするものが現われないよう監督にあたる職員を大勢配置して、官僚的統制を行う。このような規制によるアカウンタビリティでは、せっかくの新しい理念を持って生まれたチャータースクールをますます従来の公立学校に近づけるだけであり、新しいものが生まれる可能性は大きく損なわれてしまうだろう。

 AYPの規制によってアカウンタビリティが、「学業達成」の方向へと行き過ぎてしまうことの危険性は否めないが、それが「市場」の求めるものであるならば、それもまたチャータースクールの可能性の一つともいえるだろう。だが、チャータースクールがチャータースクールであるために、アカウンタビリティ制度がどのようなものとなるのかは、チャータースクールの今後に対して大きな問題となってくることが考えられる。



参考文献、サイト

鵜浦裕『チャータースクール アメリカ公教育における独立運動』2001、頸草書房

チェスター・E・フィン・Jr他著、高野良一他訳『チャータースクールの胎動―新しい公教育をめざして』2001、青木書店

 The Center For Education Reform (http://www.edreform.com/_upload/charter_school_laws.pdf 2005年2月27日)

U.S. Department of Education Home Page(http://www.ed.gov/index.jhtml 2005年3月15日)

US Charter Schools Home(http://www.uscharterschools.org/pub/uscs_docs/index.htm 2005年3月15日) 

 
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