第2章 No Child Left Behind 法における教員の職能成長のための政策

 2002年に裁定されたNCLB法においては、教員の職能成長も重要な項目のひとつとされて いた。教員の職能成長については、タイトルIIパートAに記されている。本章ではその内容につ いて整理する(1)

目的

 教員の質を高める州への補助金プログラムによって、採用、雇用、離職防止のための方法を通じ て、教師や学校長の質を高め、生徒の学力成績を向上させる。このプログラムにおいては、科学的調 査に基づく専門性の開発が用いられ、学校区や学校に対して、生徒の成績向上について説明責任を 課す。このプログラムは教員の質が生徒の成績に強く関連するという研究による。各コミュニティーが 教院の質に関する様々な課題に直面しており、このプログラムにおいては、そうした課題に応えるた めの広範な使用目的に対して、資金を用いることを認めるものである。

NCLB法が定める新たな施策

1.生徒の学力についての説明責任を求める
・すべての教室に適切な教員を配置する
 各州教育局は、2005年度までに、すべての教員が高い資質能力を持つことを確実にするための方 法をとる。これらの方法については、各学校区・学校が「高い資質能力を有した」教員を採用するた めに達成すべき1年単位の目的が設定されなくてはならない。
 「高い資質能力」のある教員とは、正規の教員資格をもっていること、学士号を有していること、 教科内容の知識と教授技能が備わっていること、である。
・学校区改善計画をたてる
 ある学校区において2年連続で教員の採用に関する計画の改善がみられないと州教育局が判断した 場合は、学校区は目的を達成するための計画を立てなくてはならない。州は学校区に対して指導を行 う。学校区が目的を達成できず、3年連続で改善が見られない場合は、州教育局は学校区とタイトルU で示された資金の使用方法について検討しなくてはならない。
2.組織の官僚的性格を緩和し、柔軟性を高める
 新しいプログラムでは、従来までのアイゼンハワーの専門性開発プログラムと学級規模縮小プログ ラムを統合し、州・地域レベルでの取組みを積極的に広めていく。そのため、州・学校区において教 員の適格性についての困難を克服するために適切な介入を計画することができる。
3.本プログラムにおける焦点
・科学的調査に基づく、政策を採用する。
 タイトルUに示された資金援助をうけるすべての取組みは、どのような取組みが児童・生徒の成績 向上につながるかを科学的調査に基づいて検討したものでなくてはならない。
4.保護者の権限強化
・毎年、高い資質能力を有した教員を採用するために各学校が努力しているかどうか、学校長は証明 しなくてはならない。そしてこれについての情報は、学校区・学校の事務において、一般市民が見ら れるようにしなくてはならない。さらに、各学校区は、2005年までに、すべての教員が高い資質能力 を有するための計画の進行状況を毎年州に報告しなくてはならない。

まとめ

 以上みてきたように、NCLB法では、各州独自の教員の資質能力向上のための方策の実施に対して援助をおこなうことを 規定したものであるが、アカウンタビリティを達成することを義務付けていることが特徴的である。


(1)・U.S.Depertment of Education, No Child Left Behind: ”A Desk Top Reference”,   http://www.ed.gov/admins/lead/account/nclbreference/reference.pdf  2005/11/18アクセス
目次へ 第1章へ 第3章へ