MSAP Achivement

4. マグネット・スクールにおける生徒の学力向上(Achivement)について
―2つの調査結果から―

今回の報告書では以下の2つの調査を基にマグネット・スクールに在籍する生徒の学力 向上について考察している。
学力向上が達成されたかどうかは国語(英語)と数学の統一テストの結果で判断する。

資料1:MSAPが独自に行った調査で中間報告にも載っているデータ。

→・初年度には生徒の学力向上に大きな成果が見られるが、それ以降長期にわたっ て成果を出すことは困難である。

・2年目以降、国語においは46%のマグネット・スクールが目標の 半分しか達成できていない。数学では36%。

・5〜6%の学校は補助金を受けている3年間の間にプロジェクトを継続することができなくなりAchivementに 関するデータがない

☆以上のように恒常的な学力向上が達成されなかったのは,MSAPが各年度ごとにそれぞれのマグネット・スクールが 目標をきちんと達成しているか審査することを怠ったことに原因がある。また、データ自体が取られていない州もあるので、 評価をすることもできない。
今後、どのようにAchivementのデータを集めていくかがMSAPの課題である。

また、報告書の中では生徒の学力向上達成の目標が数学と国語の二科目に集中しており、 実際の結果も数学と国語に大きな成果が見られる。
この点は評価できる反面、教科別の達成に偏りが生じていることを表している。

各学校段階ごとに結果を見ると、小学校では大きな成果がみられている。
これは小学校段階では教科の内容も初歩的なもので、生徒につまづきがみられてもすぐに克服することができるからである。

資料2:全米学力テストのデータ(the National School-Level State Assessment Score Database)。 各学校のSchool-Levelを示すデータと各学校における生徒の人種ごとの割合を示すデータがある。
MSAPから補助金を受けているマグネット・スクールとそうでないマグネット・スクールを 比較するために使われたデータ。以下の条件がそろうようにサンプルが抽出されている。

・都市部にある
・生徒数が同じくらいである
・ black /Hispanic /Asian-Pacific Islander /American Indian -Alaska Native などの割合が同じである
・貧困層の生徒の数が同じくらいである
・基準年(1998年)における生徒の国語と数学の成績の平均が同じくらいである

→・MSAPから補助金を受けている小学校段階のマグネット・スクールでは補助金を受けている期間において、 一見驚異的な成果をあげているように見える。

 

しかし、人口における人種の割合を統制すると、MSAPから補助金を受けているマグネット・スクールとそうでないマグネット・スクールとの間に大差は見ら れない。両者ともそれなりに成果をあげている。

上記のような結果が出たのは、州ごとにテストの基準が異なるので、そのため有意な 比較ができなかったと考えられた。
そこで、できるだけ条件を一致させていく努力をして比較していった。 最終的に同じ州の同じ学校区にあるマグネット・スクールどうしを比較したが、やはり大きな差異は見られなかった。

☆ マグネット・スクールにおいて学力向上が達成されているか否かということと、マグネット・スクールがMSAPから補助金 を受けているか否かということの間には関係性が見られない。

MSAPから補助を受けていなくても学校区や学校の運営組織が外のところから資金を集めてくるので、 様々な学校改革はMSAPからの補助金の有無にかかわらず行われている。

組織的な改革は組織的に行われている。
すべての学校が州や地方教育当局の指示で、州の機銃に沿ったカリキュラムの改善や教師や学校組織の専門性を挙げることに力 を注いでいる。

 マグネット・スクールにおいて学力向上が達成されるためには、学校が専門的な共同体としての性格を強めることが必要である 。

・教師どうしが協働意識を持って働くような環境をつくる

・学校に対する共通の目標(ビジョン)を持つ ・互いに助け合い、尊敬しあう ・学校の組織をコーディネートしたり、校則を強める ・新しい教育方法を学んだり、技術を磨いたり、生徒に対するケアを続ける

国語の読解で大きな成果をあげるためには特に基準に沿った改革が必要だった。
生徒の学力レベルを調べて、生徒が持つ文化的バックグラウンドに沿った形で指導してたり、生徒の障害の度合いに応じて指導して いかなくてはならない。
数学では州のカリキュラムの強化が大きな影響を与えた。

また次のようなことと学力達成には有意な関係性はなかった

・素行の悪い生徒の増加(教師のいうことを聞かない、生徒どうしの喧嘩、学校のものを壊す等) ・特色あるカリキュラムで生徒に勉強にかかわる活動(読書)をたくさんさせること ・学校行事に保護者を参加させる ・学校運営に保護者を参加させる ・校長が数学や読解について枠組みや評価を熟知しているか

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